丸山眞男 音楽の対話 (文春新書 24)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600243

作品紹介・あらすじ

戦後日本の知的リーダーの一人・丸山真男には知られざる第二の専門-「音楽」があった。交流四十余年、思想史・音楽の両分野で丸山に師事した、おそらくは唯一の人物である著者が、いま初めて明かす刮目すべき「丸山真男論」。作曲家ワーグナー、指揮者フルトヴェングラーを切り口に、丸山は歴史と文化、そして「生きることの意味」について、飽くことなく語り続けた。もしかしたら丸山は、人生を二度生きた人かもしれない。

感想・レビュー・書評

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  • 丸山眞男の弟子であるが、特異な分野を歩いたヒト 
    中野雄が、みた丸山眞男。

    思想家として有名であったが、あまりふれなかったヒト。
    今回の本で、丸山眞男をソウフツとさせるモノがある。

    こうやって、違った分野でもすごい能力
    を持っていたことがよくわかる。
    人間は、多能であることは、このことを通じても理解できる。

    再現芸術家としての演奏家。追創造。
    「思想史家の仕事は、音楽における演奏家の仕事と
    にているのではないでしょうか。
    音楽は通常、再現芸術であります。
    その点で美術や文学と非常に異なっている特色がある。」
    1961 丸山眞男

    「思想史家のえがく思想というものはどこまでも
    過去の思想の再創造の所産であります。・・
    そこには、一方歴史による被拘束性とともに、
    他方、歴史に対して自分が働きかける・・という
    両方向性があります。
    こうして歴史によって自分が拘束されることと、
    歴史的対象を自分が再構成することとの、
    いわば弁証法的な緊張を通じて過去の思想を再現する。
    このことが思想史の本来の課題であり、
    またおもしろさの源泉である、
    というふうに私は理解しております。」

    ○ワグナーを嫌いだったが、
    ワグナーを聴いて好きになった過程

    ○フルトヴェングラーに対して、
    限りなく傾倒し彼の時代的制約を読みとったこと。

    ○時代背景から、
    ハイドン、モーツアルト、ベートーベンをみている。
    ベートーベンの音楽は、「理想と意志」をもっている。
    それは、時代背景にあると指摘する。

    ○教育の在り方について、

    「音楽は『生き物』です。それ自身が生命力を持っている。
    生成ー発展の法則に従って生きていると言っていいでしょう。
    フルトヴェングラーが『有機体』という言葉で
    表現していますね。
    生まれて、育って、最盛期を謳歌して、
    やがて衰亡期を迎え、消え去っていく。
    彼は自分が命を懸けてやっている音楽にも
    『いつか死滅の時が訪れる』といっているんです。
    予言じゃない。断言です。
    『だからすべての音楽は哀しい』とも」

  • 2-2-1 クラシック音楽論

  • 整理はされていないのですが、とても師弟の絆を感じさせる仕上がりだと思います。

  • [ 内容 ]
    戦後日本の知的リーダーの一人・丸山真男には知られざる第二の専門―「音楽」があった。
    交流四十余年、思想史・音楽の両分野で丸山に師事した、おそらくは唯一の人物である著者が、いま初めて明かす刮目すべき「丸山真男論」。
    作曲家ワーグナー、指揮者フルトヴェングラーを切り口に、丸山は歴史と文化、そして「生きることの意味」について、飽くことなく語り続けた。
    もしかしたら丸山は、人生を二度生きた人かもしれない。

    [ 目次 ]
    プロローグ 思想史家=演奏家
    第1部 ワーグナーの呪縛
    第2部 芸術と政治の狭間で―指揮者フルトヴェングラーの悲劇
    エピローグ 〔執拗低音〕と『シャコンヌ』

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 教養とか思想というテーマで書かれた書物を読むと、丸山眞男の名前はよく目にする。日本の現代思想源流ともいえる評論家の一人である。
    本書によれば、音楽と思想という2つの世界で生き、知的・文化的作業を稀有の頭脳で繰り返したという。

    ベートーベンはボンで生まれたということは誰もが知っているが、祖先はオランダ人ということはあまり知られていない。ドイツの中でも国籍不明な男が、がちがちの旧体制のウィーンという社会で、自己表現の手段としてソナタ形式の枠組みで作曲活動を行った。音楽に意志を織り込んで、新しい時代を感じて聴衆と共有していたのだろう。

    本文のうち、ワーグナーとフルトベングラーの記述が半分くらいを占める。近現代のドイツを作曲家と指揮者に全身全霊をかけているように思えた。スコアからの音楽の理解や、レコードを聴く作業を通じた、音楽解読作業の一端を垣間見ることができる。

    日本思想史の特色をバッソ・オスティナートといったところには共感できる。通奏低音でなく、低音部に主題という意味があるという構造にうなずける。
    主旋律は時代によって違う。儒教・仏教・西洋思想等により変化する。
    個人的には、日本でオルゲルプンクトの役割を果たしているのは神道の行動様式だと思う。

  • 丸山眞男を「音楽」がときほぐす《赤松正雄の読書録ブログ》

     安仁さんこと、故安東仁兵衛さんが随所に登場するからということで、中野雄『丸山眞男 人生の対話』を市川雄一党常任顧問から薦められた。安仁さんはかつて公明党機関紙局編『日本共産党批判』を絶賛してやまず、市川さんとは親交があったと聞く。「時代と周りに人を得ていたら『昭和の坂本竜馬』の役割を果たしたかもしれない一代の快人物」だとの中野評は衆目の一致するところ。

     あまたいる丸山眞男の門下生のなかで、安仁さんと中野さんは共に異色。「東大学生運動の輝ける元闘士」と日本開発銀行の幹部を経ての音楽プロデューサー。中野さんは前作『丸山眞男 音楽の対話』を通じて、丸山と音楽の関係を世に知らしめた。恥ずかしながら、殆どそれを知らなかった私としては、この二作は、難解な丸山眞男の思想と人物を身近に感じるこよなき手引き書となった。

     丸山眞男が常日頃どんなことを話していたかが興味深く語られる。「これからは個人が自分の存在理由を自分の力で発見して、自分の力で身に着けなければ生きていけない時代になると思う。組織も大切だけれど組織を離れても他人から頼られ必要とされる“個人”を目指すことである」「教師の最も重要な仕事のひとつは『学校を出てからも、独学でいろんなことを学ぶ習慣を、教え子に身に付けさせることだ』」など彼の考え方が次々と披露される。

     また、半世紀にわたって師事した人らしく、知的生産の技術の盗み方も克明に書かれていて参考になる。情報過多のため、自分を失ってどうしていいか分からなくなったある若者のケースには、身につまされる思いなきにしもあらずだった。

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