日米開戦外交と「雪」作戦 ハル・ノートを書いた男 (文春新書 28)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600281

作品紹介・あらすじ

日米両国は、なぜあのような苛烈な戦争を戦わねばならなかったのか。「真珠湾」に至る日米交渉劇の幕間には、不可解な謎がいまだに数多く潜んでいる。「ソ連が独ソ戦を有利に戦うため日米開戦を策した」とするソ連謀略説も、そんな真偽定かならぬ風説の一つであった。ところが、ここに、その風説を意外な史実に変える新たな証言者が現れた!-日米交渉の経緯を縦糸に、若きKGB工作員の野望を横糸に、独自の視点で編まれた開戦外交史のドラマ。

感想・レビュー・書評

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  • 開戦前夜の日米の雰囲気を著した良書だと思います。歴史にifは禁物でしょうが、この本を読むと、どうしても、「もし。。。」ということを考えてしまう様に思います。

  • ◆アジア太平洋戦争前夜、戦争を回避すべく、ぎりぎりの日米間交渉の中で提示されたハルノートに隠された一面を開陳する本書。ここから外交でのパーセプション・ギャップの意味を感得できれば、現代の外交を見る眼も変わるに違いない◆


    1999年刊。
    著者は京都産業大学外国語学部教授。


     太平洋戦争直前の日米交渉において画期をもたらしたハル・ノート。これについて、その作成経緯、前史、日米交渉過程での関係者の意図、文言解釈、ソ連諜報員の影響等を論じる書である。

     オビは煽り過ぎで、日米交渉の中にソ連が干渉しようとしていた事実は伺えるものの、結論的には大して影響はなかったというものだろう。


     むしろ、本書の愁眉は、ハル・ノートの文理解釈(中国に満州は含まれない点)と、未交付に終わった暫定協定案の経緯だろう。

     また、著者の言うパーセプションギャップ。これを訳すると、外交当事者間での認識の相違という意なのだろうが、なるほど、この相違は、外交や交渉の実施面での土台と言えるだろう。
     仮に日米交渉の失敗例を他山の石と為すならば、この認識の相違に無知であった事実を虚心坦懐に受け止めてからのことになるはずだし、また、およそ交渉事(外交はその典型)では、かかる認識の相違を自覚せねばならないはずだ(でも、果たして今の外交担当や、首脳外交を展開するA首相にこの自覚はある?)。


     ところで、ハルやルーズベルトの対日外交に影響を与えたホーンベック元国務省極東部長。彼は、油のない日本海軍など物の数ではないし、弱者は強者に立ち向かわず、経済封鎖をしておけば戦争にはならないという思考の持ち主であったようだ。
     これこそ、当時の米国の対日観の一端、その雰囲気を覗かせるエピソードと言えそうである。

  • 1941年11月26日米国国務長官コーデル・ハルが日本政府に最後通告としてつきつけたのがハル・ノート。その内容は中国・仏印からの全面撤退など、当時の日本政府にとっては受け入れられないものでした。やがて日本は真珠湾攻撃をしかけ、日米開戦に突入します。
    このハル・ノートの内容をめぐって、背景にはソ連の陰謀があったとする風説が以前からありました。確かに、日本が受け入れて大陸から撤退しようと、否認して日米開戦を開始しようとどちらもソ連にとって大いに利益となるものでした。
    このハル・ノートの骨子は、実は当時財務次官であり、後にはブレトン・ウッズ会議のアメリカ代表として戦後の国際経済秩序構築に大きな影響を与え、やがてスパイ容疑をかけられ自殺に追い込まれた人物:ハリー・D・.ホワイトの手によるものでした。
    本書はこのハル・ノートをハリー・ホワイトとソ連の秘密工作「雪」作戦に焦点を当て、独自に調べた情報や資料を駆使し、日米開戦に至る過程の裏面史の謎の解明に挑んでいます。
    (N)

  • 読んだのはだいぶ前になるので詳細は覚えていないが、大した内容は書いていなかったと記憶。

  • 日米開戦への挑戦状と戦後悪名の高いハルノート。この原案を書いたとされるホワイト氏とソ連の接触があったとされるが、その真相は?意外にもソ連は日米開戦を望んでいなかった?そしてハルノートは日本の満州撤退を要求していなかった? また、東条内閣が近衛内閣と比べて指導力があることを最初は米国から歓迎され、日米開戦回避の方向で動いていたとのこと。しかし、日本当局の杜撰な外交により、勝手な思いこみと誤解の重なりで、留まるとこを知らずに開戦へ!歴史の大きな分岐点がこのような些細なことで決まることに恐ろしささえ感じました

  • 感想未記入

  • ここで描かれている日本の政治家のプロファイルや印象はどこから持ってきたものなのだろうか?情報ソースが私の読んだ他の本と同じなのか、それとも、違うのか、によって、例えば松岡外相などの人物像を描かれたとおりに頭の中で結んでいいものかどうか。この時代に活躍していた明治生まれの男性は、国際結婚している人が驚くほど多い。(2007.7.27)

  • 2003年2月5日

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