依存症 (文春新書 108)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601080

感想・レビュー・書評

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  • 何かに「ハマる」というのは「依存する」の一歩手前なのかな。何事もほどほどになしなくては。
    家族が依存症になった人たちのエピソードがしんどすぎた…。もし自分の家族が依存症になったら、そのときは尻拭いをせず、本人を窮地に追い込んで自分で回復できるように運びたい。もしものときのためにこのことを頭の片隅に入れておきたい。

  • 今から20年以上前の内容とは思えない。今でも通ずるし、今こそ必要な内容。

    アルコール依存症の歴史、そこから生まれたアダルトチルドレンの歴史、そして信田先生の歩んできた歴史を知る。
    ちょうど阪神淡路大震災、オウムの地下鉄サリン事件の年にアダルトチルドレンという言葉が日本で流行り始めたこと。
    アダルトチルドレンはコメディカルの人々が必要性を感じて作り、定義してきた言葉であること。
    何となく知った気になっていたアダルトチルドレンという言葉、それをあらためて知り、社会や時代の構造と一緒に理解していきたい。
    信田先生はほかにもインナーペアレントという言葉を作った。フロンティアなんだなぁ。ずっと臨床をされている現場の方で、経験からくる重みと覚悟が違う。
    新書なのにずっしりくる内容。

  • アルコール依存性の親が治ったと思ったら次は子供が摂食障害になるなど、親と子の関係が見えてくる。

    依存性に対して''治る''ではなく''回復''という表現を使うのはなるほどなと思った。

  •  「依存症」について長年のカウンセラーとしての活動を基に書かれた本です。これまでの病理をとらえる考え方は、は個人を対象としてとらえていました。しかし、その捉え方では解決できない問題が次ぎから次へと出現し、関係性や機能に焦点を当てた新たな考え方が必要となってきました。個人の病理を周囲の人との関係やシステムとして考えることによって、これまでとは異なる解決の可能性が生まれてきたのです。
     この本では、依存症を人間関係障害としてとらえる視点について、著者の具体的な体験を通して説明されています。個人的には、第3章の「経験から」におけるアルコール依存症患者との経験に、精神病院での自分の体験を思い出しながら読みました。そして、疑似体験として知っていて欲しいと思いました。

  • 2023.02.07-2023.08.13

    ・責任は自由な選択を前提として成立する。しかし、我々の存在はそのような選択の結果だろうか。我々は「頼みもしないのに」生まれさせられたのである。受動的であり選択の余地などなかった。つまり、「責任はない」のである。 →イノセンス「この「自分に責任はない」と感じる自分が、ではどうすれば「自分に責任がある」と感じ責任を担う選択の主体になることができふのだろう」
    ・物が溢れる「豊かさ」こそがセルフコントロールを要求していることになる。

    全く本を読む時間がない時期もあり、読了までに時間がかかった。
    学生時代の私が「ゲームへの課金がやめられなくて買った」本だったが、今読むことで自分自身や、他者との付き合い方を改めて見直すきっかけになった。
    「依存症」というのは個人だけが苦しむ物ではなく、また時代の特徴によって発生する場合も多くある。
    環境という箱がある限り発生する資本や自分やそれ以外の誰かに対する欲求とどう共存していくかが、このループから少しだけ距離を取る手段かもしれない。


  • 「巷で言われるように依存症の人たちは決して意志が弱い人たちなのではなくて、とことんまで意志の力を発揮し自分と戦った人たちなのである。

    それは繰り返しになるが資本主義社会が我々日本人に要請したことの忠実な実践なのであった。」



    本の中でも述べられている通り、近代社会がもたらした物質的な豊かさによって、私たちは「生きる」という大きな目的を失いました。

    現在、AIなどの最新技術の発展で、社会はますます便利で、効率的になっていくと思います。

    しかし、その新しい社会には、今まで以上の人間の幸せが本当に待っているのか。

    依存症の問題とも向き合いながら、真剣に考えなければならないことだと感じました。


    依存症とジェンダーの問題が結びつくという視点も、自分にとって新鮮なものでした。


    正しい愛情とは何かについても、考えさせられます。おすすめです。

  • P130
     私はアダルトチルドレンを「現在の自分の生きづらさが親との関係に起因すると認めた人」と定義づけている。この定義には3つのポイントがある。
     第一のポイントは「親との関係」という点である。(略)
     自分、もしくは社会という二極のいずれでもなく「親との関係」に起因すると認めることで、「わたしが悪いわけではないのだ」と免責される。この免責性が「ACとわかって楽になった」という理由なのだ。(略)
     親子関係が支配関係であったと疑う、一種のタブーを越えてまで自分の生きづらさのルーツをたどる必要があると感じる人がACなのだ。
     第二のポイントは「起因する」という点である。
     (略)現実の親がどうであったかという事実ではなく、自分の親との関係を問題にするのである。
     第三のポイントは「認めた人」という点である。(略)症状の有無、チェックポイントによって他者が判定したり診断することではない。

    P137
     ・日本的ACとは
     何度振り払っても、不幸そうな顔をした母親が自分の人生に寄生してくる、侵入してくるという苦しみを訴える人は多い。

    P147
     フェミニズムが長年かけて構築してきたものとアダルトチルドレンは一つの流れにつながる。近代家族の持つ権力性をともに鋭く衝くという点でつながっているのだ。

    P152
     自分の欲望をコントロールすること、同じことを繰り返さないでよりよく進歩していくこと、現代社会ではこれが価値あることだ。(略)
     しかし、このような言葉(飲むためのいいわけ)アルコールがいかに彼らのセルフコントロールに役立っているかを表している。眠りにつかせ、食欲を刺激し、思ったことがいえるようになり、寂しさを紛らわし、いらいらを静め・・・なんて便利で都合のいいものなのだろうか。

    P156
     依存症というと悪や病気というマイナスのレッテルで捉えられることが多いが、当人にしてみれば問題解決であり、望ましい状態の実現なのである。自分ひとりで、自分の感覚を変えることで行う「自己治療」なのである。(略)しへき行動の持つ「自己治療」という機能は彼らが生きるために必要なものという理解がなされなければならない。

    P161
     それほどまでに(拒食症の人が行う)ダイエットを開始するまでの人生が過酷であったということなのだ。その過酷さに比例して、同じダイエットをしても摂食障害になるかならないかの可能性が高くなる。

    P173
     ・自責感
     しへきは目前の快(アルコール、ギャンブル、買い物など)に束の間没入することによって
    もたらされる自己治療として人々に機能するということは、すでに何度も述べてきた。この快はそれへの禁止が強ければ強いほど強烈に感じられるのだ。禁止は他者からはもちろん、自分で自分に対する禁止もある。(略)つまり自分を責めることは次のしへき行動を起こすエネルギーを補給しているようなものなのだ。

    P180
     ・男の回復者、女の回復者
     男性の回復者の印象はひとことで言うと、去勢されたかのようである。(略)
     一方女性の回復者たちは、自己主張をし、いやなものはいやとはっきり断る人たちだった。
     この一見対照的な回復者像の違いは何だろう。(略)
     (依存症者は)過剰な適応が不適応になってしまったのだ。
     とすれば、回復とはソノパラドックスを解かなければならない。男らしさ、女らしさの追求をやめることなのだ。
     男の回復者は「男らしさ」を自ら捨てたように思われ、女性のそれは「女らしさ」を捨てたように思われたものこのように考えればよくわかる。

  • 依存症チェックの三段論法で誰が困るのかを明確にする。
    ドーパミン関連遺伝子の話も興味深い。
    アダルトチルドレンもわかりやすい説明。

    断酒できている方々について
    男性は腰が低く挑発に乗らず物静かで穏やか
    女性は自己主張し嫌やものは嫌とはっきり断る
    男らしさ女らしさの追求をやめることなのでは、よりよく生きようとする市政の延長線上にある
    とあった。
    先日初めて断酒会に参加したが、感じたことをそのまま表しているようで納得。

  • アルコール依存症を中心に「嗜癖症」に関する概論。全体像を理解するには有用でした。個々の「嗜癖症」に悩む人には少し物足りないかもしれないけど・・・

  •  依存症の土壌が、モノが豊かになったから、というのは切ない。(もちろんそれだけではないけれどね)

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著者プロフィール

公認心理師・臨床心理士、原宿カウンセリングセンター顧問、公益社団法人日本公認心理師協会会長。1946年生まれ。お茶の水女子大学大学院修士課程修了。駒木野病院勤務、嗜癖問題臨床研究所付属原宿相談室室長を経て、1995年原宿カウンセリングセンターを設立。アルコール依存症、摂食障害、ひきこもりに悩む人やその家族、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待、性暴力、各種ハラスメントの加害者・被害者へのカウンセリングを行ってきた。著書に、『母が重くてたまらない』『さよなら、お母さん』『家族のゆくえは金しだい』(いずれも春秋社)、『カウンセラーは何を見ているか』(医学書院)、『アダルト・チルドレン』(学芸みらい社)、『家族と国家は共謀する』(角川新書)、『タフラブ 絆を手放す生き方』(dZERO)、『共依存』(朝日文庫)などがある。

「2023年 『家族と厄災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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