- Amazon.co.jp ・本 (182ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166601097
作品紹介・あらすじ
自由競争讃美の市場第一主義の跋扈で、バブル経済期以降、日本社会は深刻な混乱に直面している。だが、自由ははたして絶対の善だろうか。日本には自由競争とは異なる文化があるのだ。多くの経済学者が日本的経営を否定する中で、新古典派経済学の誤りを暴き、終身雇用制が生産性を上げることを論証。「ゲーム論」の手法を駆使して、文化が経済効率に影響することを解明し、グローバル・スタンダードに対抗する日本的システムの重要な価値を明らかにする。文化の役割を無視した経済学の伝統への挑戦の書。
感想・レビュー・書評
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終身雇用制は派閥を作りやすいが、本来のあり方ではない。終身雇用を廃止するのではなく派閥主義を克服するほうが効率化につながる。
どの協力関係が成立するかは文化による。協力すれば組織の効率は高まる。
市場主義の重大な誤り。信頼関係がないと取引に過大な苦労が伴う。=低信頼社会の恐怖。
司法のパラドックス=裁判の取引費用が司法の利用を阻害している。
私的財であっても、外部経済を通じて公共性がある。日本は公共性は相互依存関係を重視してきた。
組織は無法地帯になりうる。派閥によるインフォーマルな扱いが元。
無限回繰り返しゲームからは協力関係と非協力関係がナッシュ均衡になりうる。それを決定するのは文化。
相手が協力的であるとき、終身雇用関係は効率的となる。
日本は高信頼社会。
文化が公共心を決める。
新古典派経済学のもとでは公共心が低下する。
創造性や優れた指導者は、新古典派の考え方では生まれない。
新古典派経済学では説明できない現象が多くなって、経済学に人気がないのではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新古典派経済学を盾に自由主義化を迫る昨今の反日本主義経済(※筆者の言葉ではない。が私はあえてこう言いたい)に一石を投じる良書。
やや感情的で日本文化を讃美し過ぎているきらいがあるが、直感的な例題提示と平易に噛み砕いた説明で、経済学を専攻していない人でも難無く読みこなせることと思う(持ち出される数学的裏付けはあくまで本論の補強であるので、わからなければ読み飛ばしてもかまわない)。経済学に取り組む前に読んでおきたい一冊。