寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166602513

感想・レビュー・書評

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  • 面白く、すすんで読み進められた。
    言っていること自体はものすごく難しいけど業界用語がほとんどなかったし、抽象的な説明のあとの具体例も分かりやすかったから構造主義の全体像をなんとなく掴めたような気がした。
    内容は、簡単にいうと「自己とはなにか」というもので、それは自分も浅はかながら考えたことはあることも少し含んでいたが、思想家たちはそれを深く深く追求しまとめているし、筆者はそれを自分でもわかる言語で説明してくれたので「なるほどそういうことなのか」と、モヤモヤがすっきりしたような感じがした。
    それに自分が今まで考えたこともなくパッと見全く理解できないことをこの本では分かりやすく説明してくれるので、自分ひとりでは絶対に到達出来なかった思考の領域に触れることができて興奮した。

    <ソシュールと『一般言語学講義』>で、最初「名づけられる前にものは存在しない」という内容の文章を見た時意味がわからなかったし、りんご!と言ってからりんごという物体が現れるなんてことは有り得ないと思った。しかしその後の説明の中で「星座の見方を知らない人間には満天の星が「星」にしか見えず、天文に詳しい人には、空いっぱいに「熊」や「獅子」や「白鳥」や「さそり」が見える」「言語活動とは「既に分類されたもの」に名を与えるのではなく、満天の星を星座に分かつように、非定型的で星雲状の世界に切り分ける作業そのものなのです。ある観念があらかじめ存在し、それに名前がつくのではなく、名前がつくことで、ある観念が私たちの思考の中に存在するようになるのです。」というのを見てものすごく納得した。私は考え自体がこの言語活動に乗っ取られていたことに気がついた。たしかに言葉がなければものの区別なんてない。

    また、色んな思想の説明が「人々は〜だとおもっているけどそうではなく、こういうことなのだ」というような展開になっていることから、私たちが誤った方にしか考えられないのは、世の中の真理がそれほど私たちにとって恐ろしいもので避けたいものであるということなのかなと思った。とても興味深い。



    今の時代にもこの時代特有の思想の型があって、その中に生まれてきた人が「自分の思考が時代によって定められた範囲内でしかできていない」ということに気づかないのは恐ろしいと思った。いや、筆者の言葉を借りれば気づかないのではなく気づきたくない、気づかないための努力をしているということなのか。であるならばなぜ気づきたくないのだろう。私はそこに人間の動物さを感じる。人間は動物でもあり、元々は自分を抜け出すことなんてできない。だから本当にあらゆる場面で完全に自分を抜け出して考えることまではできないのだと思う。小さい頃から教育されてるのもあって、他者との関わり‪そのものである「人間関係」において自分から抜け出す(相手の気持ちになって考える)ことは、必要だと思うからできるけど、個人の活動である「自身の思考の仕方」においては抜け出す必要がない(なぜなら自分だけの問題だから)と思うからできないでいた。その結果自分中心的な考えとなって真理を見誤ってしまう。なぜなら自分の考えることが自分じゃないものに支配されているなんて微塵も考えたことがなかったから。自分自身が時代に完全に染まっていることに気がつけなかったから。結局私は自分主体で物事を考えていた。自分が考えるのとは100%一から自分が考え事だと思っていた。

    哲学者などの世の中の真理を追求できる人は本当にすごいと思う。なぜこんなに広い視野で、固定観念に囚われず物事を深く考えられるのだろう。普通の人たちが気づけない思い込みに気づけるのだろう。自分とは見ている世界が違う。今の自分はその時代の風潮に染まりきった駒でしかない。愚かすぎる。
    私も当たり前だと思っていることを無条件に受け入れるのではなく批判的かつ懐疑的に追求できるようになりたい。これは私の今の勉強における課題と一致していることに気がついた。この本は自分に「構造主義とは」だけでなく、人間になるために必要なことを教えてくれた。今回理解出来たのはほんの一部のみだから、これからも一生をかけて繰り返し読み、理解を深めていきたい。

  • 6年くらい積読してたけど、やっと読み通せた。もっと歳を重ねてから再読したい。

  • 随分前に買ってあったけど何故か読んでいなかった。
    内田樹さんの本はまえがきとあとがきが面白い。
    入門書は専門書よりも「根源的な問い」に出会う確率が高い、そう言われると、この本で根源的な問いに出会えるかもしれない、という期待が膨らむし、何より「私が知っていること」より「私が知らないこと」を中心に描かれている、のだ。
    寝ながらわかった、とは言わないが、楽しく読める本だった。

  • 構造主義の入門書です。まず、現代思想の源流となったマルクス、フロイト、ニーチェについて、簡単な説明がなされたあと、構造主義の源流とされるソシュールの言語論が紹介されます。その後、構造主義の思想家であるフーコー、バルト、レヴィ=ストロース、ラカンの4人がとりあげられ、それぞれの思想についての解説がおこなわれています。

    ただし、本書は単なる概説ではありません。著者の目を通して、構造主義的な「ものの見方」が説明されており、いきいきとしたたとえを用いて、読者が構造主義に特有の考えかたを具体的に理解できるようになっています。

    著者は、難波江和英との共著である『現代思想のパフォーマンス』(2004年、光文社新書)も執筆しており、そちらでは「解説編」でそれぞれの思想家の基本的な考えかたを説明したあと、「実践編」で小説や映画などを例にそれらの考えかたをじっさいに作品の分析につかってみせるというスタイルが採用されていました。本書は、「実践編」として独立の章立てがなされているわけではありませんが、前著と同様のねらいをもった入門書ということができるように思います。

  • 流し読みですが
    ロランバルトとフーコーが面白いね

  • 構造主義が現代思想のひとつということも知らず勢いで手に取りました。「寝ながら」はもってのほか、1回では分からなかったので読み直しながら書いてまとめるまでしました。
    大枠がぼんやりわかったところで、もしや非常によくまとめられている本なのでは?と感じました。何もわからないのにもう一回読んでみよう、まとめてみようと思わせてくれたこと自体、良書なのだと思います。

    追記 
    他の本を読んでいて、この本で書かれていたなと思い出すことが多々ありました。自分にとって新しい視点をくれた本だと思います。

  • 構造主義という今では当たり前となった見方考え方について、平易に分かりやすく書いてくれている。だが正直、内容はスッと入ってくるレベルのものでは無い。「寝ながら」では難しい。けれど、分かりやすい。

    また時間をおいて読んだら、自身の経験も生き、別な理解が深まると思う。

  • 入門書とはいえ、理解は7割程度。他の本も読んでみてもう一度立ち返る。

  • 『<読む>という冒険』佐藤和哉著 岩波ジュニア新書より:
    「構造主義は最新流行の思想ではないが、文化や言語、社会についてのいろいろな考え方の元祖。知っておいて損はない。」

    「なーんだ、そんなことだったのか! フーコー、バルト、ラカン、レヴィ=ストロースと聞いて、難しそうと尻ごみするのは無用。本書を一読すれば「そうかそうか」の連続です」

    斎藤孝氏おすすめ。
    「物事をわかりやすく説明するためには、ちゃんとその物事を理解していなくてはなりません。その点、この本は構造主義について、とことんわかりやすく説明してくれているのです。ー内田先生の本を読んでいると、自分の頭で考えて現実に立ち向かっていく姿勢、思考力を武器に世界に立ち向かうという姿勢に、とても刺激を受けます。」

  • そもそも構造主義の定義について曖昧でしたが、「構造主義」前からはじまり、4人の思想家の話にコンパクトにまとめられていたので、とても分かりやすく理解できました。
    人名が記憶に定着しませんでしたが笑

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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