作品紹介・あらすじ
旧制高校で過ごした青春の一時期を懐かしさをこめて語るOBたちは多い。その廃止は日本の国家・社会にとって大きな損失だったと憤る声も聞こえる。しかし、制度がなくなってから半世紀、旧制高校について知る人は年々少なくなるばかりだ。各校ごとの校風の違い、創設時の事情、入学・卒業人数、入試合格難易度、軍事教練や左翼運動をめぐる事件、変わった卒業生等々について詳細に調べ、その実態をあざやかに復元した異色の歴史ノンフィクション。
感想・レビュー・書評
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平成15年刊。戦前の旧制高校について、その形成過程、各学校の特色等を解説したもの。もっとも、カリキュラムや入試問題は叙述されず、総花的な書物。簡明な資料として意味を持つタイプの書籍か。個人的には七年制高校(旧制中学入学後、旧制高校の入試のないもの。武蔵高校や成蹊高校)が興味深い。エリート教育のありようについては、個人的に考えるところがないわけではないが、スタートは18歳くらいからで良いんじゃないかと思う。
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戦前の日本の教養文化を支えた旧制高等学校とはどういう存在だったのか。8つのナンバースクールだけでなく、全38校に及ぶ旧制高校の生い立ち、校風、そして事件などに詳しい。戦後5年ほど残存したときには女子学生を迎え入れた時代があったということも驚きでしたが、それだけ戦前は日本人にとっては女子教育に関心がなかったということなのでしょうか。旧制女学校が旧制中学よりも進学率が高かったという時代でさえそうであったということも併せると、興味深いです。しかし、このような教養主義ともいうべき教育が本当に良かったのか、GHQ・米国の要請で廃止になったのではなく、むしろ日本側から廃止の意見があったということも驚きでした。古き良き時代と思いますが、確かに戦争を止めることが出来なかったエリートを作り出していたとすれば、必ずしも成功した教育ではなかったのかも知れません。
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旧制高等学校についての概説書。
設立および廃止の過程、試験や制度、各校の気風など多岐に渡る情報がコンパクトにまとめられている。
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旧制高校の制度を、資料を駆使して平易に語った一冊。入門向けかと思います。
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戦後世代が旧制高校を知る上で便利な本。個人的に著者が好きなので即買
著者プロフィール
1932年,山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士。著書に、『日中戦争史』(河出書房新社)、『慰安婦と戦場の性』(新潮社)、『昭和史の軍人たち』(文春学藝ライブラリー)、『南京事件―虐殺の構造』(中公新書)、『昭和史の謎を追う』(文春文庫)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会)、『病気の日本近代史―幕末からコロナ禍まで』(小学館新書)、『官僚の研究―日本を創った不滅の集団』(講談社学術文庫)など多数。
「2023年 『明と暗のノモンハン戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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