大正デモグラフィ 歴史人口学でみた狭間の時代 (文春新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166603589

感想・レビュー・書評

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  • 本作(2004年刊行)を読んだのは、2005年。
    当時の私の年齢は、44歳でしたか。
    若いですね~

    当時某所で書いた感想を、ほぼそのまま転載します。

    この本は2004年1月に発行されました。
    著者の速水融(はやみあきら)氏は1929年生まれ、小嶋美代子さんは生年不詳です。
    本のタイトルにある「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉とのこと。
    「デモクラシィ」とは異なります。
    以下に【この本からの引用】と【私の感想】を書いてみます。


    【この本からの引用】
    人間とウイルスの戦いは、宇宙人との戦いにも似た、いわば「未知との遭遇」で、負ければ人類は滅亡するかもしれない。それに比べれば、人間どうしの戦いは何とも愚行としかいいようがなく、イラク戦争の戦費ほどのお金をウイルス対策に向けることができたら、人類の不安は多少なりとも軽減されるに違いない。

    【私の感想】
    この本の脱稿は2003年11月頃のようですが、この年の春にイラク戦争がありました。
    また当時はSARS(サーズ/重症急性呼吸器症候群)が流行していたようです。
    人間どうしの戦いを「愚行」とバッサリと切り捨て、爽快にさせてくれます。


    【この本からの引用】
    インフルエンザ・ウイルスによる流行性感冒が、なぜスペイン・インフルエンザと呼ばれたのかというと、戦時にあって、参戦国はどこも多大な戦病死者の存在、あるいは国内における流行を公表せず、ひとり中立国であったスペインにおける流行が広く喧伝されたからである。

    【私の感想】
    この本ではスペイン・インフルエンザと書かれていますが、「スペイン風邪」のことです。
    スペイン風邪の発生源は定かではないが、スペインが発生源ではないことは確からしいです。

    1918~1919年にかけて大流行し、世界人口の50%が感染したというのだから驚く。
    死者数は4000~5000万人と言われています。
    日本では当時の人口5500万人に対し39万人が死亡。
    有名な人物では、島村抱月や野口シカ(英世の母)が亡くなっています。


    【この本からの引用】
    電灯の一般家庭への普及は、庶民生活に非常に大きな影響を与えた。

    【私の感想】
    電灯が都市部の家庭で用いられるようになったのは、大正時代のことです。
    この影響の一つに出生率の低下が挙げられます。
    何やら、電灯のもとで雑誌や書籍を読むことができたし、夜なべ仕事も容易になったとのこと。
    そして断定はできないが、夜の生活パターンの変化のため、電灯の普及と出生率の低下は関連があるようだとのこと。
    日本だけではなく他国の出生率低下例も挙げているが、確かに関連があるようにも思えます。

    意外なところに影響がでるものです。

  • 2004年発行。「デモクラシー」ならぬ「デモグラフィ」とは出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉。先に読んだ『歴史人口学で見た日本』のうち、大正時代に特化したともいえる内容。インフルエンザの予防って昔から手洗い・うがい・マスクと変わってないんだね。

  • 前読んだ江戸時代について分析した速水氏の本が目から鱗だらけで面白かったので。
    でも話が浅い所で止まり、あっちこっち行くので物足りず。

    100年前と比べたらかなりの日本人は田舎から都市に出てきて戻らなくなってしまったのだ。
    また、都市や郡部や地方ごとに違った動きが同時進行していて、全体の数字見ているだけじゃわからないことが多い。
    スペイン風邪と肺炎と震災が重なる「大正死亡危機」でデモグラフィ上の転換期だったのはわかるけど、「なぜ大正なのか」が最後まで伝わってこなかった。

    引用
    ・大正年間に日本は農業国から工業国に変身した。
    ・書籍・雑誌の広告が新聞の一面に載るのが大正期に確立したことは、いかにこの時期に読書人口が増えたか
    ・大正生まれの約67%が兵役についた可能性があり、その20~26%前後が失われたことになる。
    ・都市の死亡率が農村より低くなった
    ・大正15年、日本の人口の78%は依然として郡部に居住していた。
    ・家庭用電灯の普及→都市では夜の娯楽が増え、農村に比べてそもそも低かった出生率はさらに低くなった
    ・合計特殊出生率は人口学上の人口の再生産モデルから発生した概念
    ・大阪は乳児死亡率も日本で最も高かった
    ・ヨーロッパでは何でもよくない事はスペインのせいにする
    ・大都市のある東京府や大阪府では。全出生数の10~20%が婚外子であった
    ・出生の多い1~3月の合計と、少ない5~7月の合計の比率「早生まれ症候群」
    ・京阪神では明治末年以降、持続的に出生率が低下していたこと、京浜及び名古屋でも大正の初年から低下していた。出生率低下は大都市では明治末年から大正初期に始まっていた
    ・「教養主義の没落」「西洋の没落」「明治・大正期の神奈川県」「女工哀史」「疫病流行記」「鴎外最大の悲劇

  • [ 内容 ]
    「デモグラフィ」とは、出生・死亡・移動などの人口統計全体、あるいは人口の研究を指す言葉である。
    つまり本書は、新たに発掘された史料、進展してきた歴史人口学の成果を踏まえ、大正期を人口という窓を通してながめてみよう、という意図のもと書かれた。
    その視点で検討してみると、従来「デモクラシィ」の時代と呼び習わされてきた大正期も、かなずしも明るく進んだ面ばかりではなかったことが分かる。
    大正時代を捉え直す意欲的な試みである。

    [ 目次 ]
    第1章 明治と昭和の狭間で
    第2章 大正期の全国人口
    第3章 第一次世界大戦と戦時景気
    第4章 大正五年の出生力
    第5章 死亡率上昇―女工と結核
    第6章 スペイン・インフルエンザ
    第7章 人口指標のいろいろ
    第8章 国勢調査
    第9章 大正末年の人口

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著者プロフィール

慶應義塾大学・国際日本文化研究センター・駒澤大学名誉教授

「2014年 『西欧世界の勃興[新装版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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