子どもが壊れる家 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166604708

作品紹介・あらすじ

少年犯罪加害児童の生育歴に、法務省東京少年鑑別所・元法務教官の著者が迫る。共通点は親の過干渉と、予想を上回るゲームの悪影響。子育て不安の時代に、指針となる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 近年、センセーショナルな少年犯罪の話題に尽きない。
    昔は不良グループを中心とした万引きや暴力が主であった。
    最近のテレビで耳にする事件の犯人は、なんてことない、
    至って普通な少年である。

    彼らの犯罪は万引きや暴力ではない。
    同級生の頸動脈をカッターナイフで切り付けて殺害。
    幼少時代から繰り返してきた生物の解剖に興味が促進され、
    人体の解剖を試みたいという欲求を満たすために一家を殺害。
    正常な精神状態では決して実行しえない、猟奇的殺人事件なのである。
    本書では、今の少年が犯す数々の犯罪の実態、その背景、
    および犯罪を未然に防ぐ方法の考察がなされている。

    少年が異常犯罪を犯す原因は、ゲームやパソコンの普及によって
    暴力や殺人と身近に触れられ、感化されてしまうからだと思っていた。
    それだけではない。
    もう一つの重要な原因が考えられることを本書に教えられた。
    それは、親の子供に対する愛情不足である。

    仕事に追われ、平日のみならず休日であっても子供に構ってやれない父親。
    自分が考える理想像に近づけるためには厳しい躾けや規則の制定も厭わない、至上理想主義者の母親。
    彼らに育てられる子供は、まるで一日中自由の利かない籠の中に閉じ込められたまま一切餌を与えられないペットである。
    このような育て方で、果たしてまともな大人になるだろうか。

    パソコンやゲームの使用を管理し、殺人・暴力で満ち溢れている
    幻想の世界に子供が引き込まれないように努めること。
    テレビやビデオを代表とする受動的メディアの接触を控え、
    親と子供で積極的にコミュニケーションを行うこと。

    放任と、過干渉。
    この二つが、可愛いわが子が進む道を誤らせないためのポイントである。

  • ゲームやテレビ等メディアの暴力性について最後はまとめられていた。過干渉と放任の危険性。現代にアップデートされた内容を読んでみたいと思った。

  • 青少年による不可解な凶悪犯罪。
    共通するのは,家庭内での一方の親による過干渉ともう一方の心理的不在,そして放任という。
    そのような家庭は昔から存在するはずだし,現代だってたくさんあるはず。
    しかし,そこに残虐性のあるゲームやインターネット,ホラービデオが入り込むと,視覚的に強化されていき,また前頭前野の働きが落ち,現実と空想の世界が曖昧になっていく。
    筆者は,大人が注意して,ゲーム,インターネット等の接触から子どもを極力遠ざけるよう警鐘を鳴らしている。

  • 2005年刊行。著者は元少年鑑別所法務教官。「普通の家庭で育った少年でも犯罪を起こす。」そのテーゼの正当性に関して、家族関係・家族構造の面から解読。また、ゲームとそのレーティングの是非についても。紹介実例が少ないので、加害事例分析は一般化しにくさが残るようにも。

  • 普通の家庭の子供が凶行に走る。親の変化、子供をペット化する親、モンスター化する親、三割のクラスで学級崩壊、家庭の弱体化、学校教育の限界など、少し前の事件を元に現状を説明。
    加害者が育った家、家庭環境、親とのかかわりなどが書かれていた。
    少年Aや、佐世保の事件など既に他の書籍などで読んでいるが、改めて親、家庭環境、生育歴、持って生まれた性質としかとらえられない事象もあり、どこで変わってしまうのか、親のかかわりはどうあればいいのかを考えさせられた。

    犯罪を生む家庭の共通項
    ○家庭内で主に母親の過干渉、父親の存在感のなさ(逆の場合もあり)
    ○過干渉によって子供の中には「もう一人の自分」が芽生え、次第に攻撃性を強めていく。
    ○家庭や学校に居場所をなくした子供は、ゲーム、インターネット、ホラービデオなど幻想の世界にのめりこむ。
    ○残虐な映像が頭の中を支配し、現実と空想の境界線がなくなる。

    どうずれば子供を守れるか?
    ●過干渉しない=子供を自分の理想にはめ込もうとしない。
    ●放任しない=ゲーム、インターネットとの関わりを放置しない
    ●子供を孤独にさせない、子供と向き合う。

  • 2004の佐世保小6女児、1997酒鬼薔薇、2000の17歳少年のバスジャック…いわゆる中流家庭に育った少年たちが凶悪で粗暴な事件を起こした。子どもを育てるというより、理想を押しつけて調教する傾向が見られ、ゲームのしすぎも問題である。

    理由が過干渉とゲームであり、責任は、親としての愛情問題ということになると、ほとんどの親は困惑するばかりでしょう。今は少し見方が変わっているのでしょうか。

  • 酒鬼薔薇聖斗
    佐世保
    少年犯罪の起きる家庭
    一見普通だが過干渉、放任など
    大きな期待、負担

    270802

  • 最近起こった少年犯罪の取材をもとに本書は書かれています。具体的な内容については触れませんが、その少年が育った家庭に共通する点がいくつか見つかるようです。その一つが親の過干渉というものです。過保護とか甘やかすというのとはちょっと違います。どちらかというとしつけが厳しい、いや厳しすぎる。親が自分の理想像を子どもに押し付けすぎているようなのです。さらにもう一つ共通するのはテレビゲームの存在。テレビゲームばかりしていると、大脳の前のほう(前頭前野と呼ばれる部分で、物事を理性的に判断する働きがあります)の働きが鈍る。そのために、キレル、自分の欲求を抑えきれずに犯罪をおかすというのです。幼児期のテレビやビデオの見すぎも影響するようです。ただ、このあたりの議論についてはまだまだはっきりした結論が出ているわけではなく、とくに「ゲーム脳」なんていう言葉を作り出した人は、かなり批判されてもいます。どこまで信用できるか素人にはちょっとわかりません。私自身はテレビゲームが好きでなく、我が家にもありません。そればかりになるのがいやなのと、子どもたちが集まって別々に違うゲームをしている姿を異様に感じるからでもあります。もっとも、このパソコンに入っているゲームは時々やっていて、結構頭を使うものもあるから、一概に悪いとは言えないと思っています。まあ、親の過干渉にしろ、テレビゲームにしろ、何事もやりすぎは良いことではないだろうという気がします。ほどほど、いいさじ加減、というところの見極めが必要でしょう。犯罪をおかすというのは特異なケースかもしれませんが、それを例外と片付けてしまうのでなく、誰にでも起こりうることと、真剣に考えてみる必要はあると思います。

  • 人が生き返ると信じている子供の多さが衝撃だった。
    殺人を犯した子供だけが非難されるべきではないことを知った。子供を育てることの難しさを実感。近頃の男の子たちが外で集まってそれぞれが個別にゲームしている異様な姿を目にして寒気がしたところに出会った本でした。

  • 過去に少年少女が起こした異常な犯罪、神戸の「酒鬼薔薇聖斗」、長崎佐世保市の小六女子が同級生の首をカッターで切りつけて殺害した事件など、彼・彼女たちの非行は、離婚などの家庭の不和や貧困を起因とした、昔型の非行とは異なり、「普通の家庭」で育った、はたから見たら普通の子供が起こしたもの。作者は、彼・彼女たちの育った「普通の家庭」には、二つの共通点があると指摘する。
    ・過干渉・・・親が子どもを自分の理想の型に嵌め込もうと必要以上に、躾を厳しくするなど、過剰に過干する。
    ・放任・・・ゲーム、インターネット、ビデオなどの関わりを放置してしまう。
    なかなか、参考になる本でした。

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著者プロフィール

ジャーナリスト・ノンフィクション作家。日本発達障害システム学会員。地方局アナウンサーからブルームバーグL.P.でファイナンシャル・ニュース・デスクを務め、独立。著書『少年A矯正2500日全記録』(文春文庫)など。

「2018年 『となりの少年少女A 理不尽な殺意の真相』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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