遍歴・流浪・渡世 旅芸人のいた風景 (文春新書 587)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166605873

作品紹介・あらすじ

道に生まれ、道に死す-。遊芸民、香具師、渡職人、行商人…。定住農耕社会からはみ出し、よるべなき漂泊の人生をおくった「道々の者」。その失われた民俗を愛惜こめて描く。

感想・レビュー・書評

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  • 古本で購入。

    失われてしまった少年時代の風景への、限りない哀悼。
    「おわりに」にあるように、「『道々の者』への挽歌」です。

    筆者は昭和2年生まれ。
    漂白の遊芸民を見た最後の年代と言っていい筆者の、香具師たちへの眼差しが何とも優しい。

    旅芸人の歴史的背景も中々興味深い。
    浅草弾左衛門による支配体系、役者村の成立、香具師の由来…
    あまり知らない分野の話なのでおもしろかった。

    僕の生きてきた中で体験した祭りには、筆者の見てきた人々の姿はなかった。
    ガマの油売りも猿回しもいなかったし威勢の良い啖呵もなかった。

    そうした人々が日本中を遍歴することの是非は措いてしまうが、もう見られないのは残念だなぁ。
    今では祭りそのものが「祭り」という雰囲気をなくしてしまってるけど、もし芸人や香具師がいたとしたら、胡散臭~い、怪しい感じがして楽しいと思うんだが。

  • うちの祖父は若い頃旅芝居の一座に居たことがあるらしい。最近芸能史に興味あるのとじいちゃんのことが知りたい的な動機で手に取った一冊。

  • 沖浦さんの本はどれを読んでも、「いいなぁ~!」

    読むことで、正史からかき消されてきた民衆の歴史(稗史)が素直に理解できます。

  •  日本音楽史講義の副読本の一つに指定してみた。著者の幼少時の記憶をベースに背景説明や史料の紹介が入り交じっており、話の流れは雑然としているが情景が浮かびやすい。昭和の戦前期において、近世から続く芸能が形を変えつつ根強く残っていたことがよく分かる。

  • 感想未記入

  • 昭和になってからの旅芸人の姿が見える、貴重な本。

  • [ 内容 ]
    かつては珍しいものではなかった地方巡業の芸人や行商人、露天商……。
    こうした人々の姿を日常的に目撃していた昭和2年生まれの日本の基層文化研究家が、フィールドワークや数少ない文献をもとに、民間信仰、祭祀(さいし)儀礼の歴史の中で彼らが果たした役割を考察する。

    [ 目次 ]
    はじめに―近世文化の残影を求めて
    第1章 街道に生きる遊芸民
    第2章 「物乞い、旅芸人、村に入るべからず」
    第3章 ドサ回りの一座と役者村
    第4章 香具師は縁日の花形だった
    第5章 医薬業と呪術の世界
    第6章 遊芸民を抑圧した明治新政府
    まとめ 旅芸人の生きてきた世界
    おわりに―「道々の者」への換歌

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 物乞い、旅芸人は入村禁止だったこともある。
    傷害を通して裏街道を歩きながら世間の片隅で生きてきた彼らの歴史は国家が編纂する正史に登場することもない。表の文化誌から見れば彼らはゴミのような存在で、夜の役に立たぬ余計者だった。
    天ぷら学生と呼ばれていて、学生の振りをして学費がないなどと言って、電車でお金をせびっていた乞食もいた。
    サンカの中にも香具師の隠語がたくさん隠されていた。
    テキヤと言えば、誰もが柴又の寅さんを思い浮かべる。テキヤはもともと香具師と呼ばれていたが、諸国を歩く苦労人だったので、弱きを助ける狭義心も厚かった。

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著者プロフィール

沖浦 和光(おきうら・かずてる): 1927−2015年。大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。桃山学院大学名誉教授。民俗学、比較文化論、社会思想史専攻。被差別民と被差別部落の研究をおこなった。国内外の辺境、都市、島嶼を歩き、日本文化の深層をさぐる研究をつづけた。主な著書に、『宣教師ザビエルと被差別民』 (筑摩選書)、『幻の漂泊民・サンカ』 (文春文庫)、『天皇と賤民の国』 (河出文庫)がある。

「2023年 『「悪所」の民俗誌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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