農民になりたい (文春新書 707)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607075

作品紹介・あらすじ

しんどい、貧しい、カッコ悪い…そんな農業の印象が変った-。就農説明会には若い世代が列をなし、メディアも頻繁に農業特集を組む。収入が激減しても、「今が幸せ」な「脱サラ農民」たちの理想と現実。

感想・レビュー・書評

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  • わかりやすく言えば、6名の脱サラ就農者の体験談をまとめた本。

    各就農者ごとにまとめてあり、誰もが本書においては就農「成功者」である。
    中には、収入が20分の1にまで下がった人もいるが、本人の満足度で測れば、全て成功者なのだ。

    特に私が、農業に憧れを抱いているわけではない。
    自分には農業ができるような忍耐力もないし無理だと思っているが、そういう人間が読んでも、ドキュメントとして十分に楽しめる内容である。
    農業の大変さにぶち当たりながらも、めげることなくサラリーマン時代に培った営業力や企画力を駆使して頑張っている姿は、非常に頼もしいものである。

    中には、日本の農業の将来を憂えている人もいるが、だから就農したといった印象はない。
    どの就農者も、純粋に農業がやりたくて農業をやっているという印象が強い。

    そんな中で一人だけ異色なのが、AV業界を飛躍させたあの有名な高橋がなり氏である。
    彼は、ひょんなことからAV業界を引退し、農業に転進した。
    本書で紹介される他の就農者と違うのは、高橋氏だけ厳密には就農者ではないことである。
    彼は真に農業の未来を憂い、私財10億円を投じて農業の改革(農民たちが就農しやすい環境作り)に力を入れているのである。
    経営者として間違いなく成功した高橋氏による業界の分析は鋭く、面白い。
    そして、JAをはじめとする閉じきったこの業界を、いかに変えていくのだろうか。

    最後に、本書の言葉で興味深かったものがある。
    それは、農業は仕事と思って転職したら満足できない。
    それまでの収入を維持するどころか、大きな収入減になる可能性が高いからである。
    だから、農業は仕事ではなく、自分の生活だという認識で、本当に農業をやりたいと思って満足感を得るのがよいということである。

  • 所要時間:3
    印象的な文章:実はどんな仕事でも自分が気持ちよくやれていれば、プライドを持ってやっていれば、それだけでカッコいいんじゃないかって思い始めていた。ー中略ー自分の気持ち次第でどんな仕事もカッコいいし、楽しめるようになるはずだって信じていた。
    オススメ度:
    身内 3
    身内以外 3
    過去の自分(20歳) 2
    未来の自分(60歳) 3
    子供が【40】歳のときに読んで欲しい

    それ相応の覚悟と度胸、体力がない限りは失敗してしまう農業。ちょっと興味があるからと脱サラして農業の道に進むと決めてしまうと大変なことになる。
    この本は成功者の事例が掲載されているが、断念やリタイアしてる人も一定数いる。その人たちがなぜ失敗したのか、どうすれば失敗を防げたのかも気になる。

    私は虫やカエルが苦手だから、興味はあるが農業はできない気がする。

  • How to 農業、と思って読まないほうが良い。ここに紹介された農家の皆さんは脱サラに成功した、言わばトーナメントの勝ち組だ。また、6章のうちの3章は家業が農家のために初期投資は不要である。多くの脱サラ農民が負け抜けていったことは想像に難くない。サラリーマンである自分も、今の仕事よりも農業の方がストレスもなくやりがいがあるのではないか、と幻想を抱くことがある。しかし、勤め人も満足にできないのであれば、農業だって言うに及ばずなのではないかと思わされた。それでも「農民になりたい」かを自問してみよう。

  • 脱サラ就農の”成功者”への取材の取り纏め。脱サラ就農の具体的な手引書ではない。

    本書が出版されたのは2009年、リーマンショック直後である。サラリーマンが常日頃抱いている漠然とした不安・焦燥感に加えて、将来の生活の不安が具体的に顕在化した時期に重なる。しかし、本書に描かれるストーリーは、農業に興味を抱く「脱サラ志望者」を煽り立てるような英雄談ではない。農業の抱える問題点や農業の難しさを踏まえたうえで、脱サラ就農者たちの苦闘を伝えてくれる。著者の良心が感じられる。

    本書に登場する就農者たちは”成功”するまでかなり悪戦苦闘を強いられている。なかには、取材時点にあっても経済的には”成功”していない方もいる。それでも、本書に登場する脱サラ就農者たちの姿は明るく自信に満ちているように見える。それは、結局、「はじめに」でも触れられているように、「農業は職業ではない。農業は生活なのだ。」という一言に集約されるのだろう。”成功”=黒字、ではないのだ。

    就農(半農半X)を考えている中年としては、次回作として脱サラ就農者の「しくじり先生」を期待したい。

  • 30代男性の就農、帰農エピソード数話。
    自分と年が近かったり、はじめる頃の迷いや右往左往を丁寧に書いていたり、励まされる。
    就農から数年〜10年くらいの人たちなのも、先輩像にしやすくていい。
    女の存在感がないのが、元ブルータス連載では仕方ないかもしれないけど、女の私には残念。

  • 農民になりたいとは思っていませんが読んでみました(笑)「農家とは職業ではなく生活」本書で『しいたけブラザーズ』が紹介されていてビックリ!しいたけブラザーズ第2の拠点である避暑地にあるビニールハウスは実家から1キロぐらいのところ!親近感あります。この他にもSOD創業者の高橋がなり氏の農業改革も興味深かった。農業に関して理想や楽観的な本が多いなか本書は厳しい現実も書いてあって面白かったです。

  • [ 内容 ]
    しんどい、貧しい、カッコ悪い…そんな農業の印象が変った―。
    就農説明会には若い世代が列をなし、メディアも頻繁に農業特集を組む。
    収入が激減しても、「今が幸せ」な「脱サラ農民」たちの理想と現実。

    [ 目次 ]
    第1章 一六年後のUターン
    第2章 東大卒インテリ農民の夢
    第3章 年収二〇分の一でも後悔なし
    第4章 しいたけブラザーズの誇り
    第5章 農を奏でるバンドマン
    第6章 農業改革に消えた私財一〇億円
    第7章 超実践就農マニュアル

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 経済不況と就職難、日本の食糧自給率の群をぬく低さを背景に農業への関心が高まる中、若くして脱サラした農民5人の、農業を始めようとした時の経緯、そしてその農作業の実態が描かれる。彼らの農業に対する考え方、農業従事者として必要なこと、これからのありかた・・・は、5人ともほぼ共通。みな同じ方向を向いている。サラリーマンという生き方がもはや定番ではない時代の新しく前向きな生き方を感じる。彼らが一様に農協に頼らない農民の自立と、そのための「営業力」の必要性を説いているというのは、さすが前職の経験のなせるところなのだろう。

  • 09/10/08

    今熱い農業に興味が湧き買った本。

    内容としては、5人(5グループ)の農業従事者の以下の点が記載されている本。
    ・農業に至るまでのきっかけ
    ・各人のビジネスプラン
    ・やりがい

    農業が素晴らしいものである、ということを前提としている点や、
    僕が知りたかった情報「何故今農業が熱いのか」が載っていなかったため、評価は低め。

  • 農家の嫁修行本。

    すらすら読めちゃった。
    ここに出てくる人は、
    土地や師匠や頼れる人がいて、農業している。

    本当に新規に農業をやりたい人向けではない気がした…

    でも、こういう人達もいるんだ!!!
    って目からウロコな本でした。

    農民になれるのか!?

    ***以下私信***

    農民の嫁になるにしても、
    やはり自分のやりたいことをやって、社会を知ってから
    彼を手伝いたいと思った。
    手伝う?いいや、一緒に創り上げていきたいな。

    その時には、私も戦略web部長くらいにはなっているだろうか?笑

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