司馬遼太郎 リーダーの条件 (文春新書 726)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607266

作品紹介・あらすじ

『坂の上の雲』の秋山兄弟、『世に棲む日日』の高杉晋作、『翔ぶが如く』の西郷隆盛、『竜馬がゆく』の坂本竜馬…。大転換期を迎えた今こそ、国民作家が愛した救国の指導者たちは輝きを増す。その魅力を半藤一利、磯田道史、関川夏央、田中直毅らが語り尽くす-。

感想・レビュー・書評

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  • 奥付をみると奇しくも2009年の今日(11月20日)に第1刷発刊と記されていた。ちょうど10年前の本だ。

    といっても、本書の内容は、司馬遼太郎の作品で取り上げられている歴史を作ったリーダーたちについて、真の歴史好きのメンバーが語り合う座談会の内容が収められたものであり、10年たったからといって全く古さは感じない。

    リーダー論に関わる話であるので、時の首相・小泉首相という名前が出てきた一行くらいが一瞬、違和感を感じたくらいだ。

    4つの座談会が収められていて、最初の座談会のテーマが、「日本のリーダーの条件」、2つ目は「司馬遼太郎が愛した日本人」、そして3つめの座談会と4つ目の座談会は、特に「坂の上の雲」についての座談会となっていた。

    3つ目の座談会では、当時の文春のアンケートで、「日本を見つめ直す最良の歴史書はなにか」というアンケートで「坂の上の雲」がトップとなったことやNHKドラマ化の経緯からこの座談会が行われたようで、国家のありようなどを中曽根元総理などもメンバーに加えて語り合われている。

    4つ目については、「坂の上の雲」の主要人物、秋山兄弟、東郷平八郎、児玉源太郎の子孫が集まっての語らいとなっている。

    自身としては、最初の2つの座談会が非常によかった。やはり歴史を愛する人が歴史を語り合うのを聴く(=読む)のは本当に面白い。博識であるが、それをひけらかしあうのではなく、司馬遼太郎という作家、その作品、そこに登場する人物を共通テーマとして語るということで、深みが増してくるというか、語り手のメンバーも至福のひと時を味わっているかのようである。

    司会の半藤一利氏も、司会にのみ埋没していられなかったようだ(笑)。

    日本のリーダーということで、幕末のリーダーが次々と登場する。坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛、大久保利通、桂小五郎、土方歳三、高杉晋作、大村益次郎、河井継之助などの面々、それに「坂の上の雲」の登場人物らだ。

    座談会メンバーが選ぶ好きなリーダー5人というコラムもあったが、それぞれのメンバーが選ぶ5人も、かぶっている人物も多少いるものの、人によって人選は違うから面白い。

    司馬さんに「誰が好きか」というような質問をした際の答えとして「誰と決めることはできない」という趣旨の答えが印象的だった。「人それぞれによいところも悪いところもあり、人それぞれだ」と。「時代によってリーダーは変わる」とも。歴史は、さまざまな個性によって編まれているのだなと改めて実感できた。

    司馬さんのスタンスについて語り合われているところも興味深かった。司馬さんは関西出身で、家康よりも秀吉というように関西ひいきがあるという見方(笑)。また、型にはまったエリートより型破り的な人物を好むという関西人気質が現れているような評価もあった。

    特になるほどと思ったのは、新聞記者出身の司馬さんとしては、世にあまり知られていない人物を取り上げて、その本質を世に示し、たちまちヒーローにしてしまうのがあたかも新聞のスクープを取るスピリットに近いといった意見だ。坂本龍馬や、大村益次郎は、司馬小説によって有名になったのだということを知り、司馬さんの小説の力の凄さを改めて知った次第である。

  • この本を「あるべきリーダーの姿」を模索して買ってしまった人は拍子抜けするかも(だいいち、リーダーについて語り合っているのは最初の一章のみ)。司馬遼太郎ファンが「司馬さんが本当に好きだったのは誰だと思う?」と、きゃっきゃいいながら語り合っているファン交流会の議事録のような本であり、誰も口角泡を飛ばして「理想のリーダー」など論じていないからだ。ただ、おしゃべり会といっても、揃った論客が歴史マニアばかりなので、史実や雑学が次から次へと飛び出してきて飽きない。座談会の傍らに座って、楽しそうにおしゃべりをする老人立ちを眺めているような気分になれる本。

  • 「坂の上の雲」の秋山兄弟など司馬遼太郎が書いたリーダーについて識者などが語り合う座談会です。

    印象に残った言葉としては、作家の関川夏央さんの「司馬さんは体質として青春小説の作家であるということです。明るく前向きで、坂道を上っていくような人間を好む。だから竜馬のようなキャラクターが好きなんです。」などがあります。

    「坂の上の雲」はまだ読んでないので、いい予習になりました。

  • 「竜馬がゆく」「坂の上の雲」等で司馬遼太郎が描いた、幕末・明治期のリーダー達を座談会形式で論じた書。2003年~2009年に「文芸春愁」誌に掲載。

    司馬遼太郎の作品を再読したくなった。

  • 司馬遼太郎、最近は読んでいないな。一時は読んでいたと思う。印象に残っているのは『竜馬がゆく』と『風の武士』か。『坂の上の雲』は一巻のみ。『翔ぶがごとく』も『花神』も『世に棲む日日』も読んでいない。本書に述べられたことから、まだまだ読んでいない作品、読んでみたい作品があるものだな、と思った。

  • 司馬遼太郎作品の近現代史作品からいろんなリーダーの書き方を討論。

  • 冷静で素晴らしく、勉強になった。

  • 鼎談形式なので、気楽に楽しめる。特に明治の偉人の子孫たちがこれだけいることに驚いた。

  • 司馬遼太郎の本の中に出てくる幕末のリーダー達の描き方や司馬遼太郎の想い、坂の上の雲の秋山真之の言葉や日露戦争で大きな失策を犯した乃木大将たちの神格化が幕末・明治を知らない昭和の戦争に与えた影響などが座談会形式で語られ、私の習わなかった歴史空白を少し埋めてくれとても興味深かった。
    坂の上の雲の子孫たちの座談会、ラストの論文も重複する部分もあれどそれぞれの家にどう伝わっているのかが面白かったり。司馬作品は実は全然読んでないので読んでみようと思ったし、彼の作品の人物に対する傾向なども先にこの本で知れて良かったと思う。

  •  司馬さんの有名な作品はだいたい読みました。「俄」と「尻淡え孫市」は知りませんでした。面白そうなので、今度読んでみます。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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