日本人へ リーダー篇 (文春新書 752)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607525

作品紹介・あらすじ

なぜリスクをとるリーダーが出ないのか-危機の時代こそ歴史と向き合え!21世紀の「考えるヒント」40本。

感想・レビュー・書評

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  • 題名と中身が少し異なる印象(※)だが、塩野七生氏の考察が面白い本だった。ローマ人の物語もぜひ読みたい。
    (※リーダー編とのことで、ローマ史に基づいて組織の中でリーダーシップを発揮する手法が書かれていると思ったが、雑誌連載コラムをまとめただけの要素が強かった。)

    ビジネスにおいて参考になりそうだったのは、政策の継続が大事だということ。
    危機の時代は、状況を打開できると夢をみるためか指導者が頻繁に変わる。そのため、政策の継続性を失うらしい。神曲を書いたダンテは、「痛みに対処する、病床の上で輾転と身体の向きを変える病人」として例えている。

    よく組織の中で「上が悪いから」と思うことがサラリーマンなら一度は思うかもしれないが、指導者が変わったところであまり効果がないことをローマ史から学べた。

  • 戦争を潜ってきた女は、口がわるい。

  • 「律法」と「法律」の話は非常に興味深かった。ルールに自分を合わせるべきか、ルールに自分を合わせるかというスタンスはどちらが正解という訳ではないが、盲目的にならずにしっかり自分で考えなければいけないと思った。

    そして、何よりローマ史についての自分の不勉強を痛感した。。

  • 塩野さんの「ローマ人の物語」を3分の2ほど読み終えたのですが、いつも思うのは歴史から学ぶことは多い、と言うことです。この本は彼女が10年ほど前に書いた著書で、まだ「ローマ人の物語」が完結していない時に書かれたようです。執筆中の心境なども綴られていて興味深いのですが、なんと言っても国の在り方や政治についてなど、国際情勢を交えながら日本のリーダーたちへ物申している内容が、ローマ人の物語で再三取り上げていることに通じているので、やっぱり黙って見ているわけにはいかないのだろうと思ってしまいます。
    私自身もローマ人の物語を読んでいて文章を抜き出していますが、政治家やビジネスマンには必携の書ではと常々思っていたので、この本の苦言は塩野さんなら、さもありなんと思ったのでした。
    この時代のブッシュはいなくなり、アメリカはトランプへ。イギリスはEU離脱を巡り国が割れ、安倍首相は長期政権下で外交に精を出しても、日本の立ち位置はパッとせず、北朝鮮の動きに手も足も出せず、韓国とは犬猿の仲状態の現在。これを彼女はどう思っているのか気になります。この頃の首相は小泉さんでしたが、案外塩野さんが彼を評価しています。この本の筋とは離れますが、最近では息子の進次郎氏に注目している記事が雑誌にあったようなので、政治オンチの日本人にあって彼が本物のリーダーになるのか…ホント誰かいないのか…と思うのです。
    それにしても、世界における日本の非力は目に見えるし、国際連合の力の低下も今じゃ歴然。国際政治におけるプレーヤーの持つ切れ味の良い剣は、5つということです。1.拒否権をもっている 2.常任理事国である 3.海外派遣も可能な軍事力 4.核をもっている 5.他国に援助も可能な経済力 。日本はこの中で一つしか持っていないのですから、力がある筈はありません。そこでどういう国を目指すのか考えるのは私たちなのですが…

  • 週刊誌連載のエッセイをまとめたもの、同じような話が何度も出てくるのは仕方ないかな。
    古代ローマの歴史には詳しくないが、もっと知りたいという気持ちになった。そっち方面の著書を読んでみたい。

  • ☆2(付箋8枚/P254→割合3.15%)

    あのローマ帝国が何故滅びたのか、通して書き終えた著者の視点は現代にもいかんなく生きる。
    ローマから比べれば、アメリカの文化も寛容ではない。

    日本の政治に対しても、
    “人を代えようと、奇跡が起るわけではない。
    誰が最高責任者になろうと、やらねばならないことはもはやはっきりしている。
    ならば、政策の継続性を保持するためだけでも、政権交代は避けたほうがよいと思うのだ。政策のちがいはあると言う人がいるが、私にはそれは、何を優先するかのちがいにすぎないように思える。”
    と述べる。ユリウス・カエサルの先見と個人の力をつぶさに見た著者からすれば、十把一絡げに見えるんだろうなあ、今の政治家。

    ***以下抜き書き***
    ・アメリカ合衆国は多くの人種の混合体であり、ゆえにアメリカ人は多民族との共生に長じているとの見方は、私には大変に疑わしい。
    アメリカ人は、自分たちの国に来て仕事をしたいと願っている他民族との共生には慣れていても、アメリカには行きたくなくあの国とは関係を持ちたくないと思っている他民族との共生となると、その成果としては半世紀昔の日本を持ち出さざるをえなかったことが示すように実績にとぼしい。

    ・しかし、このローマ帝国でも滅亡を免れることはできなかった。だが、これほども手をつくしたうえでの崩壊だからこそ、なぜローマは滅亡したのかという議論が、今に至るまで絶えないのである。そして、これだけは厳たる史実だ。近代の帝国は植民地が次々と独立したことで帝国でなくなったが、最後まで属州の離反がなかったローマは、帝国として滅亡したのだった。
    (戦争で勝利した属州に市民権を与え、指導層には家門名や元老院の地位を与える。基地を作り、属州民と兵士の混血をすすめる。このローマ帝国を彼らはラテン語でfamiriaファミリアと呼んだ。)

    ・アメリカでは何でも豊富なので、その効率良い活用となると鈍感だ。しかもこの鈍感は、これから味方にしなければならない人々に対しても同様なのは、たとえ肉体的には生存していようと統治的にはゼロにできたサダム・フセインの存在を、大きくする時間的余裕を与えてしまったことが示している。

    ・そのうえ、部下たちをやる気にさせる心理上の手腕。人間は、苦労に耐えるのも犠牲を払うのも、必要となればやるのです。ただ、喜んでやりたいのです。だから、それらを喜んでやる気持ちにさせてくれる人に、従いていくのです。

    ・私には、キリスト教とイスラム教という一神教同士の抗争の根の深さは、ローマ帝国、つまり古代はいつ終わりを告げたのかをめぐる諸説にさえも見え隠れしているように思えるのである。
    忘れてはならないのは、ローマ帝国の事実上の終焉はキリスト教が支配するようになった四世紀と考える人は、政治と宗教は別物と考える政教分離主義者に多い。一方、イスラムが後世に出てきた七世紀だとするのは、これとは反対の考えをもつ人々である。

    ・「いかなる分野でも共通して必要とされる重要な能力が、一つある。それは創造力だ」とは私の言ではなく、五百年前にマキアヴェッリが遺した言葉である。

    ・なぜ「情けない」かというと、重要極まりない問題も賛成反対の論争を重ねていくうちに本題から離れ、賛成派も反対派も問題の本質を忘れてしまうところなのだ。日本滞在中に郵政民営化に関する国会の委員会の討議をテレビで見ていて、またそれを解説するマスコミの記事を読んでいて、衰亡途上のローマ帝国を前にしているのと似た想いになった。

  • 塩野さんが2006年頃に連載していた記事。経済力を高めることに注力みたいな簡単にそんなこと言えるのは素人だからなってゆうとこと、やっぱローマ史やイタリア生活を通して養われた人物を見る力ってのは参考になる。

  • 月刊「文藝春秋」の連載の新書化。
    リーダ篇とありますが、私あるいは民に対する「公」はどうあるべきかを論じた内容。
    とはいえ、割とさらっと読めました。塩野氏自身が丸くなったのかもしれません。(2010.6.23)

  • なぜ彼らにだけ優れた戦略なり戦術を考えだすことができたのか。それらは彼らが他の人々よりは柔軟な思考法をする人であったからです他者が考えつくことと同じことを考えていたのでは絶対に勝てない。疑問を常に抱きその疑問を他者が考え付きもしなかったやり方で解決していく。それには思考や発想の柔軟性こそが不可欠でこれこそが勝敗を分けるカギになるのです。
    国益とは具体的な利益になって帰ってこない限りそれを追求したことにはならないのである。ではそれをどうやれば国益追求には有効か。500年昔の外務官僚だったマキャベリは次のように言っている。「いかなる事業といえどもその成否は参加する全員が利益を得るシステムを作れたか否かにかかっている
    マキャベリの次の言葉を明日の外生担当者たちに送りたい「常に勝ち続ける秘訣とは中位の商社で居続けることにある」
    自己反省は絶対に1人でなされなされねばならない。決断を下すのも孤独だな反省もまた孤独な行為なのである自分、自分と向き合うのだから1人でしかやれない。もしかしたらプロとアマを分ける条件の1つである「絶対感覚」とはそれを磨くことと反省を怠らないことの2つを常に行っていない限り習得も維持もできないものなのかもしれない。
    会社でも破産でもすれば最も被害を被るのは外資でもどこでも行き先に不足しない人ではなく会社が潰れようものなら行き場のない人々であろう。ならば会社の経営状態に誰よりも関心を持ちその工場を誰よりも願うのは幹部社員ではなくて一般社員であるはずだ。国家もそれと同じなのである。
    マキャベリは次のように言っている。「天国へ行くのに最も有効な方法は地獄へ行く道を熟知することである」国政担当者ならば二股かける位当然ではないか。この人たちにとっての責務は国民を天国に向かわせることにあるのだから。この程度の事前対策はいくらなんでもなさっていたのでしょうね。
    歴史に親しむ日常の中で私が学んだ最大の事はいかなる民族も自らの資質に合わないことを無理してやって成功できた例は無いと言うことであった。
    要するに交流・安定期と衰退期を分けるのは大同小異と言う人間の健全な知恵を取り戻せるか取り戻せないかにかかっているのではないかと思っている。つまり問題の本質は何かに関心を戻すことなのだ。言い換えれば問題の単純化である。そして単純化ができなければ百家争鳴をしても改革は頓挫する。
    それは日本人の法律に対する盲信と言っても良い位の過剰な信頼である。まるで宗教でもあるかのようにいちど決めたら一切買えないいや変えてはならないと思っているのではないか。法律とは政策であり人間の考えたものである以上完全と言う事はありえない。それ故法律は通ってもその後には微調整が必要なのは当然のことなのだ。法律を通すことでの国家改革と個人のダイエットは完全に違うのである。ダイエットならば微調整しながら進むのが健康を損なわないで成功する唯一の道だから体格はこの反対でまず先に大筋を変えその後で微調整をすると言う順序にしないと効果がない。


  • 文藝春秋連載のエッセイ集。イタリアに住む著者の視点から、日本への鋭い批判、提言が面白い。印象に残った記述を記す。
    「ユリウス・カエサルは、言っている。「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」
    「なぜか、危機の時代は、指導者が頻繁に変わる。首をすげ代えれば、危機も打開できるかと、人々は夢見るのであろうか。だがこれは、夢であって現実ではない」
    「情報に接する時間を少し節約して、その分を考えることにあててはいかが」

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