ユニクロ型デフレと国家破産 (文春新書 759)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (243ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166607594

作品紹介・あらすじ

リーマン・ショック以降、猛威をふるう「新型デフレ」の下、値下げ競争と賃金安に歯止めがかからない。一方、ギリシャなどグローバル恐慌で財政破綻する国が現れ、その余波が世界中に波及している。明日はわが身か、"赤字国家"日本が二十一世紀に生き延びる道はどこにある?気鋭のエコノミストが読み解く地球経済。

感想・レビュー・書評

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  • ☆☆☆☆
    【グローバル化は外からやっては来なかった】
    正社員は非正規雇用者への転落を恐れ、非正規雇用者は海外の低賃金労働者と競合し「豊かさのなかの貧困」に陥った。こうして社会全体に不安が広がりつつある。一方、マネーの万能性が喧伝され、マネーを生まない人間や活動が否定されがちな社会に変わっていくのであった。
    ところが、グローバル化は外からやって来たのではなく、グローバル化に適応するために自らの生き残りをかけて、グローバル・ジャングルのもっとも先鋭的な部分に自らを組み込んできたのである。


    物の値段、人(労働力)の値段をめぐって、激烈な競争がデフレを助長することは、私たちを取り巻く、“歯止めなき安売り競争”をみても、容易に理解される。
    ただ一方で、金融の世界もグローバル化されていく。かつてないほどの規模で金が世界をかけめぐり、金融を共有する時代が現代であると同時に、利益を求めて、儲かるところに集中するのが金の本質であることを考えると、資産インフレが非常に起きやすい。
    この“実物デフレ”と“資産インフレ”が共存することは、歴史的にみて極めて特異な情況であるが、これが第三次グローバル化時代“の経済の大きな特徴である。


    一蓮托生で世界は衰微していくことを。私たちは21世紀になって10年のうちに学んだ。
    『ミネルヴァの梟は黄昏どきに飛び立つ』
    ローマ神話の知性の女神、ミネルヴァの使いである梟はのイメージ。
    21世紀になってまだ、20世紀の黄昏を引きずっているこの世界に、新世紀の本格的な夜明けを告げる梟は、まだ飛び立っていない。それを阻むのは「強い国家であれば問題を解決してくれるのではないか」「どこかでまたバブルが起きれば、地球経済はうまく回り始めるのではないか」という、われわれの“切り替わらない心”である。
    新しいもの、未知のものは誰しも怖い。しかし、地球上のすべての人間がともに手を携え、「あまねき富の均霑」という頂上を目指して山をのぼっていくために、われわれはいまふもとの薄暗がりの中に立っている。新しい智慧の到来を告げるミネルヴァの梟を、勇気をもって飛び立たせてやらなければならない。
    今がその時だ。智慧の女神とその使者が、我々を待っている。

  • 2010年刊行。覚書。➀30年程度、米国が必要としたドル高幻想に日本は加担。現在もドル高幻想を維持しようとする米国の思惑は強い。ただ、米国輸出振興のためのドル安の可能性は危機管理として必要事項。②グローバル化の進展がデフレ亢進の主要因。が、グローバル化は是正不可だし、人・物・金の保護主義は全体の経済力を低下。③ニクソンショック、レーガノミクス、グリーンスパンは注目検討要。特に後二者。④アイスランドは反面教師に。独(メルケル)・仏(サルコジ)の米国流を咀嚼する手法、蘭の労働政策は参考に。⑤三方一両損の発想。
    aバブル論と史的展開、bニクソンショック以降の経済事象分析は興味深い。また、提言の基本としての、三方一両損の発想には親近感。ただ、雇用創出に関する提言が余りない。加え、グローバル企業等、事業体として収益を得た地域における納税の問題も余り書かれない。公共サービス(法人も同様に享受)に対する対価について、収益を上げているのにただ乗りするのは納得しがたいので…。著者は同志社大学大学院ビジネス研究科教授。

  • 読書レポート:ユニクロ型デフレと国家破産 (文春新書) 浜矩子 著 | デジたろうとピアノ http://digitaropiano.luna.ddns.vc/digitaropiano/?p=4535

  • 知り合いが述べていた「ユニクロを発端とするデフレ」を表題に掲げていたため、興味深く思って購入。
    私自身、デフレというものに対する関心が、ここ最近急激に高まっています。

    ユニクロをはじめとする安価を売りにして成長してきた企業の登場により、国内に終わりの見えない低価格合戦が繰り広げられている。
    まわり回ってそれは国民の生活を逼迫している。
    背景となった世界的情勢や、日本がとるべき姿勢について著者なりの考察を示す一冊。

    2010年の発刊ですが、見事に現在の世界情勢に当てはまる分析がなされており、説得力があります。
    日本という成熟した国におけるこれまで通りの輸出主導の国内経済立て直しには、自分も常々疑問を持っています。
    著者が主張する「開かれた小国モデル」は世間の評価を受けづらい考えかと思いますが、少なくとも新境地を模索する一参考にはなっていくのではないかと感じました。
    グローバル社会の負の側面を分かりやすく表している点も評価が高いです。

  • 富の均霑 地域通貨
    ドルのハーフサイズ化

  • リーマンショック後、人類史上かつてないグローバル恐慌下で何が起きているのか。見極めることもなく、状況分析に基づいた処方箋もないまま、古びた感性と硬直した頭脳から導かれた経済政策がただ闇雲に打ち出された。バブル崩壊から繰り返されている巨額の経済政策を場当たり的に行うのみで不良債権処理は遅々として進まず、国債残高だけが爆発的に増え、新たな金融暴走の元凶となっている。かつての常識が通用しなくなったグローバル経済の中にあってどのように取り組んでいくかを示唆に富むレトリックで導いてくれる。

  • 金本位制をやめたときから、新型デフレが始まった。
    ドルの価値が今のハーフサイズぐらいに縮小するまで、
    資産インフレ、実質デフレは続くと言う。

    解決策は、ヨーロッパの小国家を見習うことではないかと。
    日本では道州制よりも、もっともっと小さな単位で、
    地元の強みを生かした独自の政策をすべきだというのが、
    著書の考えだ。

  • ユニクロの980円ジーンズ代表されるような際限ない値下げ競争による企業の消耗戦を嘆き、現在の世界同時デフレを過去の歴史の反省と共に分析。今後日本が取るべき政策・向かうべき方向を提示する本。

    ユニクロの話題は導入扱い。
    『通貨を知れば世界が読める』で著者の「1ドル50円構想」と「基軸通貨なき地域分権」に初めて触れ、興味があってこっちも読んでみたのだけど、正直微妙。

    著者の主張は大体こんな感じ?
    ・銀行のマネーゲームが恐慌を引き起こし、ついに国家財政まで圧迫した
    ・実勢にそぐわないドルの過大評価を止め、日本は円高下で安くモノを買い、付加価値をつけて輸出すべき
    ・グローバル化への過剰反応が現在の日本のデフレを作った
    ・大国不在の促進(「潰しあい」から「分かち合い」へ)
    ⇒これからは国家単位ではなく各地域の共同体が北欧の様な「開かれた小国」モデルを採用し、地域分権を進めるべき
    ・基軸通貨制の否定(ドルの「金本位制下の金」化)

    グローバル化否定しながら開国を提言してるし、
    そもそも今の世の中地域共同体って無理じゃないか、と思う。
    一瞬で世界中を情報やカネが駆け巡る時代に、共同体と言う小さな集団、そしてそこから発信されるモノの影響力って維持できるのか、と。

    なんて言うか著者はアメリカ否定したいだけなんじゃないかとかそんな気が。

  • 政治は経済にとって医者ではあっても、設計者にはなりえない。

  • 合成の誤謬からいかに脱却するか

    ipadは中国で作られる。Ipadが売れるほど米国は貿易赤字になる。
    グローバルな時代に国別の貿易収支にいかほどの意味があるか。

    ドルの清算がおこる。1ドル50円に。

    あまねき富の均霑を目指すべき。

    実物デフレと資産インフレが同時進行する。

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著者プロフィール

1952年生まれ。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。
主著=『新・国富論――グローバル経済の教科書』(文春新書、2012年)、
『老楽国家論――反アベノミクス的生き方のススメ』(新潮社、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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