決断できない日本 (文春新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166608218

作品紹介・あらすじ

「沖縄はゆすりの名人」などとレッテルを貼られ更迭された米国務省元高官が明かした事件の真相。対日政策三十年のキャリアをもつ外交官が見た「トモダチ作戦の内幕」「沖縄基地問題の迷走」「日本の政治家たちへの評価」などアメリカ政府の本音を激白する。

感想・レビュー・書評

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  • 珍しく政治語ってます(笑)。
    副題を付けるとしたら「それでも私は言ってない」、ですかね(ドヤァ)(上手くない)

    沖縄県民として読んどかなきゃいけないかな、と購入。沖縄のローカルニュースでもちょいちょい取り上げられた沖縄総領事・ケビン・メア氏の著書「決断できない日本」です。
    当時は私も大多数の沖縄県民と一緒になって、「このアメリカーは県民感情も考えずに好き放題言っちゃってさ〜」と感情的に詰るばかりでした。でした(過去形)。

    ここに書かれてる通りなら(多分事実でしょう)、メア氏、めちゃめちゃ被害者やん(´・_・`)誤解されまくっとるやん(´・_・`)悪人顏とか言ってごめんねメアさん←←←

    えー、メア氏は「沖縄県民はゆすりの名人」なんて言ってないようです。「私は嵌められた」と断言してます。
    彼は「基地負担に対する実質的な見返りとしての多額の補助金(日本政府は直接関係ないとしていますが…)が、一部の政治家や業者に回っている」と説明し、一連の発言は「補助金を手にしながら基地移転に関して何も実行していない」人々に対して呈した苦言だったのに、「沖縄県民はゆすりの名人」という本人の意図を正確に反映しない、ワイドショー向けの言葉になって報道されてしまった。悲劇です。

    そして、件の共同通信社の記者の取材姿勢に対してもメア氏は反論しています。メア氏の「ゆすり発言」を直接聞いたとされる学生達のメモの正確性の問題、学生達が反基地グループに関わっていたという事実、彼等がキャンプ・シュワブのフェンスに「NO BASE!!」の横断幕を掲げていたという事実。その他にも、取材方法におかしな点が散見されます。あ…怪し過ぎる…(笑)。

    多分、今でも沖縄県民は、【ケビン・メア=沖縄蔑視の失言者】のイメージが強いと思います。
    でも、ちょっと待って下さい(誰)。
    私達は彼の反論にしっかりと耳を傾けましたか?
    公式の場で釈明する機会も与えられず、自らの主張を貫く為に職を辞すことを決意した彼が、東日本大震災にあたって、日本の為に奔走したことを知っていますか?
    感情的に詰るのではなく、冷静になって彼の発言の真意を汲み取ろうとした県民・メディアはいましたか?
    そろそろ頭を冷やしましょう。
    基地問題云々はまた別の話ですが、彼の発言をスキャンダラスな物として片付けるのはあまりに短絡的です。
    自分が基地問題や日米同盟を考えるにあたって、新しい視点を与えてくれたことに感謝して、星五つを付けたいと思います。
    沖縄県民、特に基地問題に関心を持つ人は一読すべき本です。


    他にも、
    東日本大震災のホワイトハウスの舞台裏やトモダチ作戦の概要、メア氏の日本との長く深い関わり、歴代大使や外交官の内幕、対中国を見据えた上での日米同盟の重要性、反基地政治家との戦い…
    非常に興味深く、アメリカサイドから見る米軍基地の重要性を勉強できます。

    中でも特に印象に残ったのは、
    「日米安保は平等ではない。日本が攻撃されたら我々は日本を守るために戦うが、我々が攻撃を受けても日本は戦う必要はない。この点一つを取っても、安保は不平等な内容だ」
    「夫(アメリカ)は結婚して何十年にもなる妻(日本)に「愛してるよ」と幾度となく言っているのに、なかなか信じてもらえない」
    という記述。アメリカが数ある同盟国の中でも一番に名前を挙げないと途端に不安になる日本、という描写が可笑しい(笑)。

  • 永年にわたり日米外交のアメリカ側の先頭に立っていたケビン・メア氏が、その舞台裏を記した本。ここ20年間の日米の動きを探るのに非常に興味深い1冊だ。あくまでアメリカ側の代表であったメア氏の視点で書かれているため、書かれている全てを鵜呑みにするのは禁物だが、融通のきかない官僚の動きや、国際常識とかけ離れた日本外交、3・11を巡る日本側の動きなど、日本人として耳の痛い話が、これでもかというほど書いてある。

    メア氏は日本は「コンセンサス社会」だと書いている。聖徳太子の時代から「和を以って尊しと為す」としてきた日本人だ。それが悪いわけではない。しかしコンセンサスを一歩超えたとこでの決断が政治には必要だと説く。確かに国際社会では、いやアメリカを中心とした現在の国際体制の中では必要なことなのだろう。しかしすべてを政治家をはじめとする、誰かの「決断」で推し進めるようなやり方では日本社会は進んでいかないだろう。

    今後、世界の中での日本の立ち位置を考えるうえでも貴重な一冊だと思う。

  • 更迭の発端となったゆすり発言に関するメアさんの反論に違和感は感じられない。石山永一郎記者が米国学生を自宅に宿泊させていたとは驚いた。一方の言い分だけ読んで感想を書くことに気が引けたので、Netで石山永一郎記者の反論も探したが、最も決定的に記者としての公平さを欠いていると感じられる学生との個人的な関係には一切の反論は無く、『再反論するに価しない次元のものと考えている』と言っているのは逃げているとしか思えない。net上で『石山氏と同じ陣営』にいると自認する曽根綾子氏にさえ説明不足と言われても放ってあるのは反論できないからだろう。メアさんは嵌められたんだろう。本書で本人も認める通り歯に衣着せぬ発言が、偏った信条を持つ人には疎まれるんだろう。震災後の福島第一原発に関して迷走し、全てを東電の責任へとすり替えようとする日本政府。日本政府と沖縄地元民との間に介在する補助金システム。基地周辺の莫大な借地料。鳩山由紀夫によっていいように弄ばれた普天間問題と沖縄県民。メアさんの指摘は、素直に偏りの無い標準的な日本人の感覚だと思う。日本をこれほど理解してくれる外国人が外交官を更迭されたことは日本にとっても不幸なことだと思うが、石山氏なんぞにかかずらわず、マスメディアなどで日米問題にもっと積極的に発言されることを期待する。本書の主題である『決断できない日本人』の根本的な理由の一つが、やり直しを許容しない風潮にあるとする意見も、なるほどと同感した。

  • アメリカの元外交官として当たり前の事を、当たり前に言っている。

  • 外交官として日本に19年間にわたり住み、「沖縄はゆすりの名人」という報道がなされたがために辞任に追い込まれた著者が、日米同盟の意義や沖縄の米軍基地問題について語り、東日本大震災や対中国における日本政府の対応を厳しく批判している。
    日本人は“ノー”と言えない民族だと言われている。著者も、日本人はコンセンサス主義で、責任の所在を曖昧模糊にすると論断している。アメリカ人の著者の姿勢は、「結論を先送りしない」、「間違っていることは間違っていると言う」といった、非常に明確なものだった。その姿勢は沖縄の米軍基地問題に関しても貫かれている。日本人にとっては非常にナーバスになる問題であると思うのだが、著者は「中国への抑止力として沖縄に米軍基地は必要」と言い切っている。歯切れが良く、様々な根拠も提示され、著者の見解もよく伝わってきたのだが、日本人である我々にとっては著者がドライな人物とも映るのではないだろうか。それが故に、辞任に追い込まれた報道事件も含め、著者はこれまで様々なトラブルに巻き込まれてきたのだと思う。
    最後に誤解がないように記しておくと、著者は非常に親日家である。親日であるが故、様々な問題について結論を先送りし続ける日本政府に対し、歯がゆさを感じ、本書を著した部分はあるだろう。

  • 「トモダチ作戦」や普天間問題の当事者として、明かされる本音に驚かせされるだけでなく、あまりにも本質の問題を言い当てており、非常に考えさせられる部分が多い。「コンセンサス」という美名の元で、決断を先送りにし、責任を回避しようとするのは、政治の世界だけでなく、どこにでも潜む病理なのかもしれない。この病理の恐ろしいのは、薬を異分子と判断し、抹消してしまうことなのではなかろうか。コンセンサスというウイルスに侵入されたとしても、決してぶれない軸を持った人でありたいと思う。

  • この人は本当にフェアに日本を見てくれている。
    中国から見た日本列島の地図はとても示唆的だった。

  •  う~ん,よく書けている。『「普天間」交渉秘録』と合わせ読むことをおすすめします。結局,自民党でも出来てないことを現在民主党ががんばっているわけだが,実はこれは原発を含めた,日本の中央・地方関係に帰するのかな,と感じた。国として何かを決める,ということ,TPPとも実は同じかな。部分的に不利益を被る人や,既得権を持っている人との調整を誰がやるのか。国政ではステーツマンシップを発揮した議論を期待したいものだ。

  • 問題発言で一躍有名になった、前沖縄総領事のケビン・メア氏の著書。
    大震災への対応から日米関係まで、アメリカの視点が非常によくわかる本で一読の価値アリです。
    基地問題で言えば、日本政府の立場を守屋元事務次官の「『普天間』交渉秘録」で読み、沖縄の立場を大田元知事の「こんな沖縄に誰がした」で読みとり、アメリカ政府の立場をこの本で読めると思います。正直、一番よくわからないのが沖縄だという。。。(歴史的にも現在の立場でも難しく危うい立ち位置だからしょうがない面もあるのかもしれない)。
    なるほどと思った点、アメリカにとっての同盟国の順位付けを日本がやたら気にするのはナンセンスだということ、朝鮮半島に有事が起きた際に米軍が介入するには自衛隊の協力が不可欠だということ、日本列島は中国に蓋をしているということ、そう考えるとアメリカから見れば日本は地政学上抑えて置かなければならない場所であること。
    突っ込みたい点、米軍が撤退すれば、お互いの台頭を許さない中国、ロシア等の軍拡競争が起きると言っているが、両国はアメリカの台頭も許さないから結局同じじゃないかという点、その意味でアメリカの立場はわかるが日本がどういう安保体制を築くべきかということはまた別問題だということ、湾岸戦争の際の日本からの支援基金の活用について「お役所仕事」だと言って批判しているが、ソニーのウォークマンを買うことがたとえ米軍の士気に大きな影響を及ぼすとしても、それを国民感情が許すと思うのかと言いたい、「日本の文化を理解することが大事だ」と言っておきながら「お役所仕事」で片付けるのは居酒屋の親父レベルだ。

    ともあれ、なんでも正直に話すというのは今の日本には非常に大事なことであり、こういう人とは真剣に議論してみたいなと思います。

  • 日本を愛する米国外交官が日本の現状に対して厳しく警鐘を鳴らしています。書かれていること、一般市民である私にその真偽のほどは判断出来ませんが、普通に読めばここに書かれていることが一番真実に近いのだろうと、そう感じさせてくれます。

    本書は「自伝」であり、「回顧録」です。ですから、自分にとって都合の悪いことは書いていないか、矮小化してある、自分の都合の良いことは大きく詳細に書く。ということがあるかもしれません。

    それでも、普通の日本人が今の政府に対して抱いている様様な不信や不満、具体的には「問題の先送り」「責任回避、責任転嫁」の姿勢に対する指摘は、まさに的を射ていると感じます。

    大きなものだけでも、沖縄の基地問題や中国への対応、東日本大震災後の各種対応や原子力発電所に関すること。他には、震災後の米国からの援助物資受け入れや瓦礫の除去、その他復興に関することなど、結論や、やらなくてはいけない事はわかっているのに決断せず、それを政治的に利用しようとする政治屋や官僚組織にたいする苛立ちは国民全員の共通の思いになっているのでは、と感じています。

    決断すべき事はなんなのか、現状を打破するためには決断して、進まなくてはいけないのですが、役人官僚を含めて政治家までが「事なかれ主義」「責任回避」で行動しています。まるで江戸幕府の重臣たちが黒船以降、鎖国の平和ボケで決断が出来なかったと言われる状況に告知している様に感ずるのは私だけでしょうか。或いは、太平洋戦争で勝てるはずのない戦争を開始し、戦争継続が不能であると考えられる状況になっても敗戦処理を決断出来なかった戦時内閣とダブってしまうのは間違っているのでしょうか。
    これだけ、現状が苦しくて今後よくなる見通しがなく、将来に対する夢を描くことが出来ない国になってしまった日本。子供達や孫達のために少しでも希望が持てる国にしていかなくてはならないとは考えています。

    それは政府の揚げ足取りをすることだけではないし、声高に自己の主張を繰り返して反対者を威迫することでもないはずです。

    平和ボケ日本にとって一番難しい、辛い行為である「決断する」ということをもっと考えて行きたいとおもいます。

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