詐欺の帝王 (文春新書 961)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166609611

感想・レビュー・書評

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  • 吉本芸人の「闇営業」が注目されています。
    昨日は、問題の渦中にいる「雨上がり決死隊」の宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号の田村亮が記者会見して、世間の耳目を集めました。
    ただ、問題の本質はどう考えても特殊詐欺グループだと思います。
    連中のような反社会的勢力をいかに排除するかが問われています。
    ただ、特殊詐欺グループがどのようなグループなのか分からなければ、排除も何もありません。
    というわけで、暴力団などの反社会的勢力について書かせたら右に出る者はいない溝口敦さんが著した「詐欺の帝王」。
    発刊が2014年とやや古く、新手の特殊詐欺についてはフォローできていない懸念はありますが、特殊詐欺グループの思考形態や行動様式はほとんど変わっていないでしょう。
    結論から言うと、こんな連中に眼を付けられたら、素人ではとても太刀打ちできないということ。
    誤解を恐れずに言うと、彼らは本当に頭がキレる。
    本書の「主役」は、かつて「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれた本藤彰(仮名)。
    大学のイベントサークルの代表として頭角を現し、大手広告代理店(D通?)に就職するも、左遷に遭って犯罪に手を染めるようになりました。
    その手練手管のすさまじいこと。
    本物のヤクザさえも抑え込んでしまうのですから恐れ入ります。
    勉強不足で、「かぶせ」という連中の手法も本書で初めて知りました。
    一度何かの詐欺に引っ掛かった被害者を何度も狙い、骨の髄までしゃぶり尽くす。
    本藤はこう話します。
    「300万円振り込むということは、3000万円は貯金があるということです。この残りを根こそぎ搾り取った方が(片っ端から電話を掛けるより)効率的なわけです」(カッコ内引用者註)
    悪党です。
    ここで、「私は詐欺に引っ掛かったことがないから大丈夫」とホッとしたあなた(私も)。
    安心してはいけません。
    プロスペクト理論によれば、人は利益を目の前にすると、利益が手に入らないリスクを回避したがる傾向があります。
    この傾向から自由になるのは、なかなか難しい。
    つまり、私を含め誰もが「特殊詐欺被害者予備軍」と言えるのです。
    では、どうすればいいのでしょうか。
    まずは官憲に、さらに対策を強化していただく以外にない。
    売れっ子芸人の宮迫や田村らを招いて大パーティーを開いていた例からも分かる通り、特殊詐欺グループは派手に散在するのが好きです(これは単に好きだという理由のほかに、銀行口座に入金できないなどでカネの使い道の選択肢が乏しいこともあるようです)。
    そこに目をつけ、官憲は派手な金の使い方に注目し、特殊詐欺グループを徹底的に取り締まっていくのです。
    もっとも、特殊詐欺グループが散在するようなキャバクラなどの店長や黒服は「たとえお客が犯罪者であっても、うちの店に大金を落としてくれる太い客が大事だ」と考えるため、なかなか協力を得るのは難しいと著者は指摘します。
    では一体、どうすれば?
    庶民の私としては、今まで同様、身の丈に合った生活をしながら、少しでも勉強して自己防衛を図るほかないと思うのです。
    詐欺に遭いたくない方はどうぞ。

  • 裏の世界のカネの深さが分かる本。騙される人間は徹底的に騙され、絞られる。

  • オレオレ詐欺他新手の詐欺犯罪のルポ。徹底した取材に基づく迫真の内容に驚愕。

  • 著者の溝口敦氏は極道取材の第一人者。
    そんな著者が闇を暴いた。
    オレオレ詐欺の帝王(本藤彰(仮名))から取材した詐欺の手口とは?、どんな人を嵌めるのか?、なぜ被害者は後を絶たないのか?を赤裸々に暴く力作。
    本藤は名門私大に在学中からイベントサークルのからみでビジネスを学び、卒業後、広告代理店に勤めるが辞めて、闇金融の会社を起こし詐欺の世界に身を投じる。
    彼のアイデアが組織を強くした。
    警察に携帯電話からのメールによって通信傍受されることで足がつかない方法として、
    グーグルメールを使い、利用者共通で、アドレスとパスワードを決めるば、いつでもどこでも詐欺組織員がログインして、メール本文を下書き保存して、お互いの情報を交換に活用という上手い手を思いついた。
    他にも、いろんなアイデアで詐欺行為を行うが、
    良い子は真似をしないようにお願いしたい。

    【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 「伝説の詐欺帝王」前史/第2章 五菱会のヤミ金が原点/第3章 システム詐欺とは何か/第4章 ヤミ金からシステム詐欺に/第5章 鉄壁の経営とトラブル/第6章 システム詐欺と暴力団/第7章 思いついたイラク・ディナール詐欺/終章 システム詐欺がなくなる日

  • エグイです。

    ここまで書いてしまうとモデルになった人がわかる人にはわかってしまうのではないかと思ってしまいます。

    徴税についてはやはり被害者救済の視点は全くなく、自分の手柄のみなのかというのがよく分かった。
    また、加害者からお金を没収しても先に税金に持っていかれてしまい、被害者へは微々たる額しか返済されない。

    テレカが詐欺の温床というかあれでだいぶNTTは損をしているはずだが、おそらくはそれらはすべて国民に転嫁してしまっているのだろう。やつらがリストラされたり給料が下がったという話は聞きませんからね。

    詐欺の帝王が「被害額の100%ではなく、利息や迷惑料など込みで120%を返還する法的ルールができればいい」と言っている。
    120%でも少ないくらいだが、そのようなルールはない。

    そして全編を通してあるのが、富を国や政治屋や既得権益を持っている奴らが吸い上げるのか、詐欺師が吸い上げるのか、というだけの違い、というような考え方。

    それに気づかず、既存の政治屋を大勝させてしまう国、日本。

    それが現実。

    払ってもいい金額:1000円

    ※内容がエグイ部分があります。

  • 未公開株詐欺、社債詐欺、必勝法詐欺、還付金詐欺、融資保証金詐欺、架空請求詐欺、オレオレ詐欺、かぶせ詐欺、詐欺被害返金詐欺

    何故儲け話を勧めるのか、不思議に思う

    プロスペクト理論 ダニエル カーネマン

    詐欺の原則は かぶせ

    システム詐欺は大金持ちは寄せ付けない
    日本の資産構造は微動だにしない
    鼠小僧
    義賊 鼠小僧

  •  読んでいて不愉快というか気分が悪くなる本である。オレオレ詐欺を主導していた男に取材した内容だが、彼らの言動というか考えというか唾棄すべきものがあり、おそらくリアルだからこそこのように感じるのだろう。
     暴力団とは友好関係を保ちつつも、それには加わらず、弱者から平然と更に毟り取る様は正視できないものがある。暴力団ものよりも気分が悪いのは、普通の人がやっているからだろうか。筆者が主張するように、浪費現場から彼らを特定できるだろうから早々に撲滅してほしいと切に願う。

  • 詐欺という普段はなじみ深くない分野だが、興味を持ちながら一気に読了できた。

    詐欺も法人組織のように、システムで動かしているというのは驚きだった。

  • あの事件とあの事件が線で結びついて勉強になりました。が、動くお金が大きくて、文を読むのに途中から疲れました。。

  • 事実は小説より奇なり。
    漫画『闇金ウシジマくん』も徹底した取材に基づいて書かれているとのことだが、リアリティのある出来事には多くの発見がある。アメリカのGMでは、ビジネスにおいて、自分の手を下さずとも回る状態を作ることを奨励されるようだが、詐欺という事の是非はともかくとして、勉強になる点が多い。

著者プロフィール

ノンフィクション作家。ジャーナリスト。1942年、東京都に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、フリーに。著書には『暴力団』(新潮新書)、『血と抗争 山口組三代目』『山口組四代目 荒らぶる獅子』『武闘派 三代目山口組若頭』『ドキュメント 五代目山口組』『山口組動乱!! 日本最大の暴力団ドキュメント2008~2015』などの山口組ドキュメントシリーズ、『食肉の帝王』(以上、講談社+α文庫)、『詐欺の帝王』(文春新書)、『パチンコ「30兆円の闇」』(小学館文庫)などがある。『食肉の帝王』で第25回講談社ノンフィクション賞を受賞した。

「2023年 『喰うか喰われるか 私の山口組体験』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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