- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166609611
作品紹介・あらすじ
溝口敦氏といえば、泣く子も黙る極道取材の第一人者。その溝口氏が、裏社会について取材を進めるうち、つい四年前まで詐欺業界の周辺で「オレオレ詐欺の帝王」といわれていた本藤彰(仮名)なる人物と出会いました。 本藤は、名門私大に在学中からイベントサークルがらみのビジネスで金儲けのコツをつかみ、集団レイプ事件を起こした早大スーパー・フリーの主宰者・和田真一郎のケツモチ的存在でもありました。卒業後、一度は大手広告会社につとめますが、退社して闇金融を開業したのを契機に、詐欺の世界で名を轟かせはじめます。 オレオレ詐欺の草創期に荒稼ぎしただけではなく、ワンクリック詐欺、未公開株詐欺、社債詐欺、そしてイラク・ディナール詐欺と、彼が率いるグループの業務は、〝詐欺のデパート〟といっていいほど多岐にわたっていました。 そんな「帝王」が「罪滅ぼしの気持ち」もあって、溝口氏に〝シノギ〟の実態を赤裸々に語ったのです。 詐欺師たちはいかなる手口を使い、どんな人間を嵌めるのか? なぜ被害者が後を絶たないのか?――現代日本の〝闇〟を暴く力作です。
感想・レビュー・書評
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想像以上に動いている金額が大きい。そしてその闇は深い。
悪い奴ほど合理的とも言われているが、本書に登場する主人公はその典型例と言える。戦略的思考に長けているので、表社会でも十分に成功したであろう。
しかし、学生時代に楽してお金儲けをする術を身につけてしまったので、表社会には魅力的なポジションを見つけられなかったのだろう。
それにしてもシステム詐欺は怖い。人間の欲が詐欺に遭う原因だと思うが、そこを巧みに突いてくる詐欺師たちは、後を絶たないだろう。
家庭教育、学校教育をしっかりと立て直して、その様な犯罪に手を染める若者が安易に育たない社会にしていかなければ、安心して歳を取れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み終わって「何でこの本読み始めたんだろ…」と思うくらい、悲しい。。
「反社会的勢力取材の第一人者」という物凄い肩書きがプロフィールに書かれているノンフィクション作家が、「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれていた人物への取材を軸に、一連のシステム詐欺が誕生した経緯やエピソードを纏めた一冊。
優秀な頭脳が巨額のお金を騙し取ることに浪費され、中でのいがみ合い、当人たちも幸せとは言い切れないような状況(これは著者の味付けによる部分も大きいですが)、結局誰も幸せになってないじゃないか!
幅広い知識を得る目的で本を読んではいるものの、本著は読んでいてトップクラスに気が重い一冊でした。
ただ、現実としてこういう人の弱みを突くような犯罪が行われていること、その背景も含めて知り、目を背けないことはそれはそれで大事なことで、読んだコト自体は後悔していません。人にはオススメしませんが(笑
さて、幹部だと月収が億り人になる彼らですが、普通の仕事をしても優秀だったんだろうなぁと思わせるエピソードが多数出てきます。
巨大化した組織を上手くマネージし、暴力団と相対しても言い負けず、足がつかないためにあらゆる努力をして、詐欺のお金を引き出す末端構成員には防犯カメラを意識して顔を白飛びさせる高輝度のLEDライトをつけさせたり、ATMにとりつく前後の仕草を指示して個人が特定されないようにしたり。。
マジで余計なお世話のコメントでしかないですが、本当にもったいない。
終章の、日本人にはマネー教育がされていないから詐欺にすぐ引っかかるんだ、という論調は、そういう面もあるのかなと感じました。(どこか満たされない欠乏感と言うか、笑うせぇるすまん的な「心の闇」を生む社会も大きいとは思うのですが。)
ただ、電話1本で巨額を振り込むなんて騙してほしいって願ったようなモンだ、とか、偽造しやすいテレホンカードを作ったNTTが悪い、という記述については、著者のスタンスが取材対象に寄り添いすぎてるのでは…とも感じました。
いたちごっこのように新しい手口が生まれる詐欺ビジネス、当分続いてしまうのでしょうか。。
最後に1点。本著、中盤にリアルにゾッとする描写があるので注意です。。 -
今なお正体が定かでない,2chで有名なオレオレ詐欺集団のトップ,工藤明夫と思われる人物を取材した本.詐欺の内容が興味深かったこともさることながら,溝口敦の取材力に驚いた
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吉本芸人の「闇営業」が注目されています。
昨日は、問題の渦中にいる「雨上がり決死隊」の宮迫博之、ロンドンブーツ1号2号の田村亮が記者会見して、世間の耳目を集めました。
ただ、問題の本質はどう考えても特殊詐欺グループだと思います。
連中のような反社会的勢力をいかに排除するかが問われています。
ただ、特殊詐欺グループがどのようなグループなのか分からなければ、排除も何もありません。
というわけで、暴力団などの反社会的勢力について書かせたら右に出る者はいない溝口敦さんが著した「詐欺の帝王」。
発刊が2014年とやや古く、新手の特殊詐欺についてはフォローできていない懸念はありますが、特殊詐欺グループの思考形態や行動様式はほとんど変わっていないでしょう。
結論から言うと、こんな連中に眼を付けられたら、素人ではとても太刀打ちできないということ。
誤解を恐れずに言うと、彼らは本当に頭がキレる。
本書の「主役」は、かつて「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれた本藤彰(仮名)。
大学のイベントサークルの代表として頭角を現し、大手広告代理店(D通?)に就職するも、左遷に遭って犯罪に手を染めるようになりました。
その手練手管のすさまじいこと。
本物のヤクザさえも抑え込んでしまうのですから恐れ入ります。
勉強不足で、「かぶせ」という連中の手法も本書で初めて知りました。
一度何かの詐欺に引っ掛かった被害者を何度も狙い、骨の髄までしゃぶり尽くす。
本藤はこう話します。
「300万円振り込むということは、3000万円は貯金があるということです。この残りを根こそぎ搾り取った方が(片っ端から電話を掛けるより)効率的なわけです」(カッコ内引用者註)
悪党です。
ここで、「私は詐欺に引っ掛かったことがないから大丈夫」とホッとしたあなた(私も)。
安心してはいけません。
プロスペクト理論によれば、人は利益を目の前にすると、利益が手に入らないリスクを回避したがる傾向があります。
この傾向から自由になるのは、なかなか難しい。
つまり、私を含め誰もが「特殊詐欺被害者予備軍」と言えるのです。
では、どうすればいいのでしょうか。
まずは官憲に、さらに対策を強化していただく以外にない。
売れっ子芸人の宮迫や田村らを招いて大パーティーを開いていた例からも分かる通り、特殊詐欺グループは派手に散在するのが好きです(これは単に好きだという理由のほかに、銀行口座に入金できないなどでカネの使い道の選択肢が乏しいこともあるようです)。
そこに目をつけ、官憲は派手な金の使い方に注目し、特殊詐欺グループを徹底的に取り締まっていくのです。
もっとも、特殊詐欺グループが散在するようなキャバクラなどの店長や黒服は「たとえお客が犯罪者であっても、うちの店に大金を落としてくれる太い客が大事だ」と考えるため、なかなか協力を得るのは難しいと著者は指摘します。
では一体、どうすれば?
庶民の私としては、今まで同様、身の丈に合った生活をしながら、少しでも勉強して自己防衛を図るほかないと思うのです。
詐欺に遭いたくない方はどうぞ。 -
後味の悪さだけが残った本。イベサー(イベントサークル)の意味もよくわからなかったが、頭がよく、行動力、リーダーシップを持った人間が道を誤ることもよくあるということか。
この本は騙される側の立場ではなく、騙す側の社会的背景を語っている。 -
裏の世界のカネの深さが分かる本。騙される人間は徹底的に騙され、絞られる。
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f.2014/7/24
P. -
こんな世界もあるんやなあ
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特殊詐欺の元締めへインタビューしたという触れ込みだったので興味を持って読んでみました。食肉の帝王を書いた著者なので期待して読みましたが、いささか拍子抜けする感じでした。
元締めへのインタビューはそこそこに、特殊詐欺周りの状況が書いてある。また、著者お得意の暴力団の代替わりなどが書いてある。そんな本です。
特殊詐欺は闇金融の発展形である、という事実は率直に驚きましたが、それ以外の事項については、正直に言ってあまり新たな知見があったとは言えませんでした。 -
鈴木大介の本とはなんかだいぶ違う感じ
あっちは、人に着目している感じだが、
こっちは実際の事件とかと関連させて述べている感じ
個人として扱ってはおらず、
一つの事象として扱って、
それをベースに話を進めている感じ
両方読む価値はあると思う
単純に本の面白さで言ったら、
鈴木大介のが面白かったかな