潜入ルポ 東京タクシー運転手 (文春新書 1004)

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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610044

作品紹介・あらすじ

走れども稼げない、「陸上の蟹工船」理不尽な客の要求、激減する水揚げ、増える事故。潜入ルポから見えてきたのは、「身近な足」のはずのタクシー業界が抱える闇だった!

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/689819

  • 実際に何社かでタクシー運転手を務めたノンフィクション作家による東京のタクシー論。実体験に基づいた意見には説得力があり、タクシー運転手の実感を理解することができた。面白く興味深い内容が多かった。
    「決められた労働時間をオーバーし、休憩もそこそこに走り回って達成した65万円という水揚げ。それでもらった給料は、税金・社会保険等を差し引く前の総額で39万1404円」p35
    「履いているのは、値段がチープなら性能も怖ろしくチープなタクシータイヤだ。グリップ力を筆頭に、直進性や排水性といった性能を犠牲にしてのコスト最優先。そんなタイヤで首都高のきついコーナーやら東名道をぶっ飛ばすなんて、とてもじゃないが怖くてできやしない」p44
    「深夜は稼ぎ時ではあるけれど、それ以上に、客探しに苦労する時間帯でもある。タクシーの数が多すぎて、六本木も赤坂も新宿も、すべての繁華街の路肩が空車のタクシーで埋まる」p47
    「タクシー輸送人員:1989年 5億8400万人、2008年 3億9700万人、2009年 3億6447万人に減っている」p51
    「東京で日車営収がもっとも多かったのは規制緩和の7年前、初乗り運賃がまだ650円だった1995年の5万9750円である。(2002年に4万円台になり、それからは限りなく3万円台に近い4万円台を保つのが精一杯という状況に陥っていく)」p56
    「隔勤の一般的な労働時間は、合計3時間の休憩時間を含めればおよそ18時間」p70

  • 良かった。タクシーに関するルポ。ルポなのか?
    タクシー運転手として実際に働いた著者が、タクシー業界の人間の視点で、タクシー業界を描いている。

    身近にありつつも、なかなか内部のことはわからないので、そういう意味で楽しめた。

    参考になることも幾つか。特に、タクシーで高速に乗るなってのは事故に関わるので必要であった。

  • 身近な公共交通機関であるタクシーの運転手としての潜入ルポである。もっとも、著者は学生時代にタクシー運転手のアルバイトをしたことがあり、ズブの素人とは少しばかりわけが異なるようだが、運転手でなければ分からないことや、ライターならではの法令・統計の理解に基づく解説がうまく噛み合っており、面白かった。
    もっとも、乗せたお客の変わったエピソードや運転手の役得・悲哀ばかりを期待すると期待はずれになる。冒頭から3割くらいは、この手の話も多く語られるが、タクシー運転手になるための苦労、運転手の収入、あるいは、規制緩和がタクシー業界にもたらした競争激化など規制と経済の話も多く語られる。著者が運転手の収入面やタクシーの安全・安心の観点から、参入規制や強制減車など規制強化に好意的な点には賛同できないが、全体として、バランスよく面白い本になっている。もっとも、東京の地理に詳しくない人には、面白みが半減するかもしれないが。

  • タイトルに「ルポ」と謳ってあったのでもうちょっとタクシー業界の裏側が暴かれているのかと思ったのだが、どちらかというとタクシー市場のはなしが多い印象。
    わたしはタクシーに乗ると、道中はたいがい運転手さんに話しかけていろんな話をしていただくので、自分で取材記事を作成してもいいかもしれないなと思った次第。

  • タクシードライバーの生態がどうこうの書籍は多いが、実際に潜入してみてそこから統計データと自身の体験から導き出す課題とその対処法というのは意外と珍しい。

  • 著者自らが「タクシードライバー」になってみて、その業界を説いた一冊。タクシー業界は昨今の景気低迷と共に下降傾向になりつつあるが、実態は他の業界も変わらないであろう。ただ、規制緩和と共にドライバーの負担が大きいのは避けれないが。

    不景気により、新たに職を探す人でこの「タクシードライバー」を選択する人も増えているが、意外に面接で落とされる事があると言う。その理由は、本書を読んでみると納得できる。

    また、ドライバーのモラルの部分も追求してある章は、お客側からの切実な部分が書かれており、業界全体の意識向上が早急に必要と感じる。

    全てのドライバーが悪い訳ではなく、中にはちゃんとした人も居るのは事実。ただ、業界のイメージとしては低い気が。ただ、ドライバーに後ろ向きな考えではなく、前向きになりたいと言う人は、この一冊を読むのも良いのでは。

  • 実際にタクシー会社に運転手として採用されて取材を行ったライターによる、タクシー運転手事情。
    新書なのでさっくり読めつつ、タクシーの車両やタイヤのコストに関する話や、実車時・空車時の事故率に関する話などが興味深かった。

  • ノンフィクションライターが東京のタクシー運転手に就職。運転手の悲喜こもごもとタクシー業界の内幕を描いた潜入ルポ。

    タクシー運転手になりたい人には必見の貴重な情報満載。運転手になるための「地理試験」なるものから、日常の売上、会社に納めるべき運転手負担などなど。・・・あまりにニッチすぎる情報か?

    それはともかく、現在のタクシー業界のことだ。不況により乗車数は減少しているのに、規制緩和によってタクシー業界に参入する企業は増加。その結果、タクシー数は増えるが、空車ばかり。客の利便性よりも運転手の雇用維持を考えれば、規制による「減車」はやはり必要だろう。減反をした農家に補助金を与えるようなことをタクシー業界にも当てはめる必要があるのかもしれない。

  • 『おもてなし』を求める側に、翻弄される現場!そんなに簡単にかわらんよ!

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