春画入門 (文春新書 1044)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610440

作品紹介・あらすじ

大英博物館で記録的な成功を収めた春画展がついに日本へ。日本初の春画展を鑑賞する手引きとなる、春画の基本の「き」を易しく面白く解説する入門書。誰もが抱く疑問--春画の「ウタマロ」はなぜ巨大なのか? なぜ、着衣のままなのか?春画は何に使われていたのか? いくらで売られていたのか? どんな絵師たちが依頼されていたのか? どのような技巧が凝らされているのか? などを、ベストセラー『蔦重の教え』の著者が、90点あまりのカラー図版と共にわかりやすく説明する。各図版は日本屈指の春画コレクションから、葛飾北斎、喜多川歌麿、鳥居清長、菱川師宣、鈴木春信、渓斎英泉、歌川国貞などの逸品を紹介。春画を手がけた一流絵師たちの背景や代表作についての解説に加え、絵師、彫師、摺師が春画だからこそ存分に腕を振るえた超絶技巧の数々を図版入りで解き明かす。初めて春画、浮世絵を見る人でもなるほどと膝を打つ、目からウロコの「夜の浮世絵教室」開講!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルどおりの春画入門だが、春画に限らない浮世絵入門として読むこともできる。

    序盤で春画に限らない浮世絵全般の概説もなされているし、有名浮世絵師の大半は春画も手がけているから、春画をフィルターとして代表的浮世絵師についても知ることができるからだ。

    カラー図版満載で、眺めるだけでも楽しい(とはいえ、現代人から見ると、あまりエロティックな感じはしない。むしろグロで奇異な印象)。

    現代の感覚だと、春画は一般の浮世絵より一段格下だったような気がしてしまう(一般映画よりポルノ映画が格下に見られがちなように)。

    実際にはまったく逆で、春画こそ浮世絵技術(刷り技術含め)の頂点を極めたジャンルだったのだという。
    使用する色などが幕府によって制限されていた表の浮世絵に対し、幕府の目を盗んでひそかに流通させる春画でこそ、贅を尽くした表現が可能であったからだ。

    ゆえに、海外では春画はポルノグラフィではなく、「エロティック・アート」として遇されている。見事なアートなのだ。

    門外漢の私にとっては、春画のイメージが一変した好著。

  • このところ春画ブームらしきものが来ているようだが、十年前に刊行された本作が先駆けになったのだろうか。日本文化の中で春画は平安、室町の時代からありふれてあった(需要があった)もので江戸時代になって隆盛した浮世絵文化と共に爛熟した歴史的経緯が分かりやすく解説されている。

  • ふむ

  • 一流の浮世絵師として認められる条件は「春画が描ける」ということであった。今の時代の規範からは春画浮世絵にふれることが出来にくい。しかし、江戸時代は大らかで春画を楽しむことが今ほど憚られるものではなかったとのこと。
    浮世絵師の腕を評価するという点からも春画とはどういうものであるかをこの本で知ることができるのは価値がある。
    写楽の作品は、そういう観点で評価するとそれほどの質の高いものと言えるか...とう著者の指摘は面白い。作品数があまりに多くて評価が若干低いところにある国貞の春画の質からこの絵師を高く評価しているなども興味深い。(数ヶ月前に静嘉堂文庫で国貞展を観ていい作品と感じていたので、我が意を得たりの感覚にとらわれた)

  • 全体的に、春画を取り巻く美術史とでもいうべき内容。
    社会の動きは、今も昔も変わらない。

    春画
    ?一般の浮世絵と差別はない。一流浮世絵絵師が春画を描いている。
    ?広く人気があった。
    そば代と同等の低価格。嫁入り道具にも。
    ?お上の取り締まりはそれなりに厳しかった。
    江戸幕府は倹約方針とともに風紀の乱れにも厳しかった。
    「手鎖五十日」は想像以上に辛いようだ。

    一方、現代では、写真が普及して、選択肢は多岐に渡るようになった。
    絵だけのものは、ニッチな存在になっていく。→成年コミック。
    その作者が、著名な一般マンガ家なんてことはまずない。
    ただし、取り締まりは同様に厳しい。
    4,5年置きに出版社への懲罰的な警察の取り締まりが行われているようだ。

  • 単に春画のバリエーションを紹介するのみではなく、浮世絵の成り立ちから、製作技法、出版の仕組み、鑑賞のポイントまで解説し、手引として良く纏っている。新書にしては、かなりの数の春画をカラーで掲載しているのも価値がある。変態の限りを尽くした絵もある春画だが、著者が女性という事も影響してか、掲載の絵や文章にはある程度抑制が効いており、下世話な印象は受けなかった。現代に全く劣らない妄想の世界が拡がる春画の魅力を知るきっかけとしてお薦めの一冊。

  • 1978年に生まれた岩佐又兵衛が浮世絵の始祖の由.菱川師宣,奥村政信,鈴木春信,月岡雪鼎,勝川春章,鳥居清長,喜多川歌麿,葛飾北斎,歌川豊國 國貞 圀芳,渓斎英泉らが作製した春画の一大歴史を詳しく解説している.ここには写楽と広重は出てこない.それにしても,性に対するおおらかな気質を持った江戸時代の人々の雰囲気には感心する.例によって幕府は規制したがるが,したたかに生き延びる人々のバイタリティーは素晴らしい.

  • タイトルは意図的に「春画入門」になっているが、より詳しくすれば「浮世絵入門-春画を中心に」となろうかと思われる(著者あとがきにも「念願だった浮世絵の解説書を出せることになり、喜びもひとしお」とある)。
    私はさほど浮世絵を知らないので、浮世絵の入門書が欲しいと思っていたのだが、この新書はその要望に適うものだと思う。
    研究者の著作ではないので、春画に関していわゆる俗説に傾いているきらいがあるものの、しかし入門書としてはさほど問題にならないと感じた。
    成人であれば一読推奨。

  • 春画展の予習復習に。
    前半は浮世絵の基礎知識の説明で、後半に代表的な春画、浮世絵師の紹介。
    春画展では混んでいてじっくり見れなかったものも、自分のペースでじっくりと。でも、電車の中で読むのはちょっと周りに注意が必要かも。

  • <目次>
    はじめに
    第1章  浮世絵の発祥
    愛2章  浮世絵の技法と役割
    第3章  名作春画を描いた浮世絵師たち
    第4章  春画のさまざま

    <内容>
    確かに春画の本である。日本の春画は、男性は一様に巨
    まら。女性は意外と毛が多いが、男性よりも実際的である。
    それもそうだが、著者は前半で江戸時代の浮世絵事情を詳細しているが、わかりやすい書き方で、すんなりと頭に入ってくる。

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著者プロフィール

著者:車浮代 Kuruma Ukiyo
時代小説家/江戸料理・文化研究所代表
大阪出身。企業内グラフィックデザイナーを経て、作家の柘いつか氏に師事。江戸時代の料理の研究、再現(1200種類以上)と、江戸文化に関する講演、 NHK『チコちゃんに叱られる!』『美の壺』『先人たちの底力。知恵泉』などの TV出演や、TBSラジオのレギュラーも。著書に『江戸っ子の食養生』(ワニ ブックスPLUS新書)、『免疫力を高める 最強の浅漬け』(藤田紘一郎氏と 共著/マキノ出版)、『1日1杯の味噌汁が体を守る(』日経プレミアシリーズ)、 『天涯の海 酢屋三代の物語』(潮出版社)、『蔦重の教え(』飛鳥新社/双 葉文庫)ほか多数。西武鉄道「52席の至福 江戸料理トレイン」料理監修も。 『和食Style.jp 』にて「豆腐百珍のすべて」連載中。

「2022年 『江戸の料理本に学ぶ 発酵食品でつくるシンプル養生レシピ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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