新選組 粛清の組織論 (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610730

作品紹介・あらすじ

【殺した敵(25人)より、粛清した味方(40人)の方が多い!】 江戸の農民出身である近藤勇、土方歳三、沖田総司らは、京都で剛剣を振るい、最期まで武士らしく散っていった――それが一般的な新撰組の「正の歴史」だろう。 だがしかし、新選組のヒーローであるはずの土方歳三と近藤勇が、“局中法度”の名の下に、大量の味方を惨殺していたことはあまり知られていない。 総勢約520人の隊士のうち、40人が粛清・暗殺で命を落としたとされる。芹沢鴨、新見錦(以上局長)、山南敬助(副長)、伊東甲子太郎(参謀)、藤堂平助(隊長)、武田観柳斎(軍師・隊長)ら幹部クラスも犠牲になっているのだ。池田屋事件を含む、京都市中警備という正式な隊務で殺害した敵が25名なのだから、その多さには戦慄が走る。 なかでも有名な粛清は、①芹沢、②山南、③伊東グループの御陵衛士粛清事件「油小路の変」だろう。 幕府に顔が利いた新選組の始祖・芹沢一派を殲滅して「近藤・土方政権」が確立するや、今度は組織のブレーンであり、江戸道場時代からの仲間であった山南を切腹に追い込む。そして次の大粛清は、近藤が組織拡大のため三顧の礼で迎えた伊東一派だ。尊皇(伊東)vs佐幕(近藤)思想観の対立化が表面だつと、今度は再びナンバー2を脱退させ、江戸の道場時代からの仲間(藤堂平助)もろとも惨殺する――。 ならず者集団を統率するとは言え、組織に反する者は幹部でも殺す。殺された彼らは本当にただの〝悪者〟だったのか? 粛清された〝敗者〟の視点から、組織が抱える暗部をえぐり出す、全く新しい新選組論!

感想・レビュー・書評

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  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685527

  • 新選組は清河八郎が幕府に働きかけて浪士が集められた集団が母体だが、清河はすぐに朝廷側につき江戸に帰った。残された芹沢・近藤らは攘夷活動経験を有する芹沢のつてで会津藩主松方容保預かりの立場を得た。芹沢は酒癖が悪く酔うと強盗や放火をやらかしたため、会津藩から近藤土方らへ暗殺命令が下った。土方と沖田が寝込みを襲い殺した。
    山南敬助は試衛館以来の同志で、学に優れ近藤派の中では近藤に次ぐ有力者だった。人柄もよく人望もあった。突然切腹しておりその原因ははっきりしない。尊王派の伊藤甲子太郎と通じたことを親幕派の近藤らに嫌われた、西本願寺への移転を強行しようとする近藤を諌めるためなど諸説ある。
    伊藤甲子太郎は尊王攘夷のため新選組入りしたが近藤土方は親幕であり、分離を企てた。油小路で惨殺され、伊東一派も殺された。
    新選組が殺した敵より殺した身内の方が倍くらい多い。幕臣や藩士など正規の武士なら財産没収などの処分もあり得たが、新選組隊士は無産者ばかりで担保となるのは命だけだった。そのため処分は切腹しかなかった。

  • 20191109

  • 東2法経図・6F開架:210.58A/Ki24s//K

  • 幕末に幕府方として一陣の風をおこした新選組に関する一冊。
    反幕の諸士暗殺よりも組織内での粛清で命を落とした人が多かったのは意外ですが、それだけ乱れていた一団を英雄のように扱う、歴史というより世間の見方にはあきれてしまいます。

  • 新撰組粛清されし者達にスポットを当てた本。読んでみると永倉新八とかよく粛清されなかったものだと思う。本書は淡々と時系列に沿って粛清された芹沢鴨、伊藤甲子太郎などを取り上げているが彼らは暗殺されなかったらどうなっていたのか想像してしまった。近藤が最後に官軍に粛清されるというのが痛烈なオチ。

  • 新撰組といえば、武士よりも武士らしく生きた集団。滅びの美学に殉じたことでも有名。しかし、組織としての新撰組は内部粛清を繰り返した。芹沢鴨、山南敬助、伊東甲子太郎などの幹部クラスを含めて約40人もの組織員が死罪や暗殺などに処されている。その数は戦闘で命を落とした者よりも多い。

    オウム真理教やあさま山荘事件のように過激な無法組織が信賞必罰と規律維持を極めると、「死」をもって償うという結論に達するのは必然だろう。しかも、新撰組隊士にとって担保となるのは自らの身体だけ。守るべき財産も家も名誉もない彼らに罰を与えるには「死」という選択肢しか残らない。その結果、新撰組が規律を守るためには粛清しかなかった。

    とはいえ、そんなことを繰り返していたら貴重な人材は殺されるか、逃亡するか。そして、凡人だけが残った新撰組は自然淘汰されただろう。現在のシャープや東芝で優秀な社員ほど先に辞めていくことと同じ。しかし、新撰組は人材難で崩壊する前に親会社の幕府が崩壊し、トップの近藤勇も斬首して、やむを得ずに解散。

    幸か不幸か、新撰組は「粛清好きな過激集団」という悪名を残す前に滅びることができた。

  • 【殺した敵(26人)より、粛清した味方(40人)の方が多い! 】
    この触れ込みに興味を持って読んでみましたが、別段取り立てるものもなく、また組織「論」と言うには疎かな内容でした。また史実と著者の説が混同していて、本当の事なのか定説なのか分からなくなる部分も多く、そのあたりをすっきりさせてほしいと感じました。
    僕の評価はA-にします。

  • 粛清された側からみる新選組論。個人的には山南と芹沢が面白かったな。新選組の本格的な研究はまだ始まったばかり、だからこそ面白かった。

  • 新選組を好きな人なら、そんな新たに買うこともないかなぁと思った。
    組織論とうたっているが、特に論でもない。事実が書かれているのみ。

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著者プロフィール

昭和26年(1951)、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒業。新選組を視点にした幕末維新史の研究を在野で続ける。新選組検定運営事務局主催の「新選組検定」(第1回~第5回)の監修を担当。新選組をテーマとした著書に、『新選組謎解き散歩』(新人物文庫)、『新選組謎とき88話』(PHP研究所)、『新選組の新常識』(集英社新書)、『土方歳三日記(上・下)』(ちくま学芸文庫)。共編に『新選組日誌(上・下)』(新人物文庫)などがある。

「2020年 『最新版 新選組検定公式ガイドブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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