マインド・コントロール 増補改訂版 (文春新書 1074)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610747

作品紹介・あらすじ

「本書は21世紀の必読書である。」――佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)推薦!問題は、カルト宗教やテロ集団だけではない。自己愛と孤独の現代、マインド・コントロールの罠に落ちる人は、ますます増えるだろう。古くから暗示や催眠術として存在したマインド・コントロール。その後、心理療法として発展し、ソ連やアメリカにおいては、行動を直接コントロールする「洗脳」技術が国家レベルで研究された。現代ではあらゆる組織、家庭の中ですら、技術の応用が見られる。心の崩壊と戦う現役の精神科医が、マインド・コントロールする側の特性、されやすい人のタイプ、その歴史、原理と応用など、「騙されたと気付かれずに騙す技術」のすべてを解説する。2012年に刊行され、各界で話題になったロングセラー、待望の新書化!第一章 なぜ彼らはテロリストになったのか第二章 マインド・コントロールは、なぜ可能なのか第三章 なぜ、あなたは騙されやすいのか第四章 無意識を操作する技術第五章 マインド・コントロールと行動心理学第六章 マインド・コントロールの原理と応用第七章 マインド・コントロールを解く技術

感想・レビュー・書評

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  • 「マインドコントロール」現代では、誰しも大なり小なり影響を受けていると言えるのではないだろうか。それは「トンネル」と言われる閉鎖的空間で中で過ごすことで起きるとある。情報を制限された空間に閉じ込め視野狭窄を引き起こすように仕向けるのだ。それは受験の世界や、スポーツ漬けの世界で、ブラック企業というものも同様だ。
    この仕組みはテロリスト育成やカルトなどでも昔かれの常套手段となっていのだから愕然とする。
    真面目で純朴で知的な人間ですらかかってしまうのだ。というかそんな人ほどかかりやすい。
    また、古今の「マインドコントロール」国家研究は驚きであった。「ある暗号を聞くと催眠が発動する」とか「電磁波を放って」ある地域の人間の精神に影響を与えるとか、スパイ小説やSFの世界であるようなことが現実に述べられていて、もう驚きを通り越して一周してしまった(笑)
    でも、古くは大本営発表、近くは原発やコロナ関連など繰り返し「マインドコントロール」は登場する。情報を極端に与えないとか許容範囲を越える情報を与えたりすることで心の深層にまで影響を与えるというのは人間の生物学的限界に合致しているのだろう。そら恐ろしくもある。
    情報過多の現代で、自分の主体的な生き方をしていきたいと思わずにはいられなかった。いろんな本を読むことや地道に毎日を生きることって大切だと思う。すごく考えさせられたけど、読んでおいた方がいい本であった。


  • この著者の本はたくさん読みました(精神科医が書いていることもあり、機能不全家族をどのように捉えたらよいのか、私なりに大変参考になりました)が、特に本の後半で精神保健福祉法第22条について書かれていたことが目からうろこでした。
    私なりに法律には詳しいつもりでいましたが、これまで精神的に大変な人と関わることが少なかったので盲点でした。多読で知識を増やすことも大事だということを、この本を読んで感じました。

  • 最初と最後だけ読んだ。
    マインド・コントロールはトンネルの中を通るようなもの、というたとえがすごくわかりやすかった。
    求めているからマインド・コントロールされるというのはなるほどなと思った。
    人は誰しも一人では生きていけないし、何を幸せと言うかは難しい問題。
    そこも含めて考えないといけないと思った。

  • 「マインド・コントロール」という単語を聴くと、どうもなんだか新興宗教やテロ組織による洗脳とその果ての危険な非社会的行為を思い浮かべてしまう。

    本書は、そんな思い込みに、新たな視点を与えくれた点でとても興味深かった一冊。

    マインド・コントロールは、必ずしもわかりやすい悪人たちに悪用されるばかりではなく、近代化の歴史と並行するように、多くの医師や研究者たちの手により、催眠療法や暗示的療法、ひていはカウンセリングとして、精神的に苦しむ人々を救うものとして何度も模索され、善用のための道を探られてきたこと。

    その反面、革命や大戦、冷戦といった争いの中で、米・ソを筆頭に各国の中枢機関が、マインド・コントロールを、国民の全体主義化や敵国の情報収集に利用しようと、少なくない頻度で、時に被験者にとっては拷問にも等しい研究にまで手を出し、悪用に拍車をかけていたこと。

    マインド・コントロールの、実に曖昧で諸刃の剣としての性質が、多くの事例を引き合いに書かれています。

    普段は新書を読まないので、なかなか興味深く読めたのですが、全体的には、マインド・コントロールの負の利用の歴史的経過について述べた分量が多かった気もします。

    もっと、マインド・コントロールの、善用事例や、身近な活用方法、例えば、素人でも心をプラスに保つための方法みたいなものの分量が多かったら、より面白く読めたかもしれない、とも思う作品でした。
    でもそれだと、下手すると、研究新書ではなく、小手先のハウツービジネス書になってしまうから、難しいかな…。

  • マインドコントロール。
    今までにたくさんの人から怪しげなマルチ商法のビジネス話をされた経験がありますがああいう人たちを見るたびに完全に洗脳を受けてはるんやなぁと思ってました。
    その人に悪気はなく、むしろ僕のことを思って言ってるのにみたいなノリで。
    冷静に話を聞いてると話し方とかうまい人もいますしね。
    こりゃアホやったらハマってまうやろなぁみたいな。
    何言ってるかわけわからん人もいましたが。w
    で、思ったわけです。他人をマインドコントロールできればビジネスにも繋がるし自分の思うままにできると。
    この本にもありましたが主体的に考えることを許さず、絶対的な受動状態を作り出すことがマインドコントロールの基本であって、会社、団体に属することで狭いトンネルに入り視野を奪い、他の選択肢のないところまで狭めていく。
    そのトンネルの中が世界のすべてになるわけです。
    経営者は少なからずそういう心理があると思います。
    テロリストの心理とかにも触れてたのでおもしろかった。

  • マインドコントロールとは、宗教団体や会社のような組織化された集団が、個人ないしは複数人に対して心理状態をコントロールして思うように操ることだ。

    自分自身上記のような定義付けをしているが、キチンとした洗脳やマインドコントロールの仕組みについて考えたことはなかった。なんとなく心が弱ってるなと思うとき、自分の行動に確信がいまいち持てなかったり、自信がないといった心持ちのとき、普段なら絶対引っかからないことにも飛びついてしまったり、飛びつきそうになった経験が何回かある。このような脆弱性をついてくる詐欺行為が日常に溢れているにも関わらず、マインドコントロールに無関心なのはよろしくないと思ったため、この本を一通り読んでみた。

    結果として、マインドコントロールの事例から心理状態を操作する方法、解除方法までが具体的に示されていて非常に楽しく参考になった。

    マインドコントロールは人の心理状態を巧みに操作することが本質なので、何分特別なことではなく、人とのコミニュケーションをとる日常生活でもさり気なく使用している場面はある。ただマインドコントロールを意識して行っている人間は、人の理性をスキップして無意識に働きかける術に長けているだけなのだ。あからさまな詐欺行為はともかく、明示的に法規制により取り締まる術がない以上、マインドコントロールは過去の遺物などではなく、ますます形を変えて日常生活を侵食していくと思われるので、いっそう心の脆弱性を突かれないようなマインドコントロールを自分自身に施す必要がある。

    ただ、マインドコントロールも使い方次第で毒にも薬にもなるので、自身に良い反応が起こる条件付け、つまりトリガーとなる刺激を活用するのは薬になる使い方と言える。


    【以下引用】

    何となくうまくいきそうだとか、何か不吉な気がするという場合、過去に条件付けられたサインを感じ取って、成功と失敗の兆候を感じていると言える。成功を信じることで実際に成功しやすくなり、失敗するのではと弱気になることで、実際に失敗してしまうことは、しばしば起きることである。こうした条件付けをうまく利用することで、気分や意欲をコントロールすることができる。そのためのポイントは、成功や良い結果と結びついた条件を、積極的に生活に取り入れることである。行動の記録を取り、物事がうまくいっていたとき、していたことを特定し、それと同じことをするように心がける。うまくいったときに聞いていた音楽を聴くのもいいし、服装や筆記用具などにこだわるのもいい。せっかく物事がうまくいっているのに、そのやり方や生活習慣を変えてしまったために、成功パターンを見失ってしまうということもある。

  • 何度でも読もう。騙す方が悪いが、騙される方も原因があることが科学的に分析されており、刺さる。奪回の鍵は調査と行動で、予防には考えること、自由に考えをしゃべれる環境、鵜呑みにしないこと、忖度は楽だけど、危険。戦前、敗戦を通じた反省がいきていない。そういう土壌を狙われた。猛省した。

  • 866

    どういう人が、どういうプロセスを経てテロリストになるのか、それはもう少し踏み込んだ姿を教えてくれる。  一つは、理想主義的で、純粋な傾向を備えていたことである。また、もう一つは、彼らは社会でうまくやっているように見えていても、実際には、社会で生きることに苦痛や困難を感じており、あるいは、社会に対して不信感を抱いていたということだ。不適応が顕在化して、すでにドロップアウトしている場合もあるが、潜在的な不適応を抱えているものの、周囲は問題に気づいていないという場合も


    ところが、純粋な理想主義者が抱えやすい一つの危うさは、潔癖になり過ぎて、全か無かの二分法的な思考に陥りやすいということである。二分法的思考においては、完全な善か、さもなくば完全な悪かという両極端な認知に陥って



    だが、霊感商法において不可解だったのは、多くの人が騙されて不当に高額の商品を買ったこと以上に、それを売った側の人たちもまた、それによってほとんど報酬を得ていなかったということである。  売り上げ金の一部は、手数料として本人に割り当てられたが、それらも結局献金したり、さまざまな名目で他の用途に用いられたので、実質的に彼らは無給で、過酷な仕事をしていたことになる。ノルマが達成できないと、深夜まで販売をしたり、断食を強いられることもあった。奴隷以下の待遇だと言えるだろう。ある意味、彼らは進んでその立場を受けいれたので



    人を信じやすい人や人の関心や愛情に飢えている人は、マインド・コントロールを受け



    実際、破壊的カルトと呼べるような危険な宗教的、政治的組織の場合、その主宰者は、過去に犯罪歴をもつという場合が少なくない。その典型は、オウム真理教の麻原彰晃である。彼が松本智津夫と呼ばれていた頃、一度は二十一歳のときに傷害罪で、もう一度は二十七歳のときに薬事法違反で、二度の有罪判決を受け、罰金刑を科せられている。反社会的性向は、教祖となる前からすでに存在していたと



    何者にも頼らない本来の自分の人生ではないかもしれないが、もっと強く、揺るぎない存在やもっと大きな意味に自分を同一化することで、このちっぽけで弱い自分にも、生きる確かな意味があると感じたい。そうした願望が、ユングの愛人となってでもそばにいるという選択を生んだであろうし、カルト宗教や反社会的集団、ファシズムなどの政治運動にすがる人々を生み続けてき



    リフトンの著作が図らずも明らかにした重要な事実は、全体主義やファシズムというものが、カルト宗教と極めて似た特性をもつということだ。そして、大きな共通点は、善か悪かの二分法的価値観であり、その独善性で



    共産主義や社会主義に、社会の救済を見出そうとした若者たちが、治安維持法により数多く逮捕され


    それは、決して他人事ではない。日本やイタリアでも、ファシズムに熱狂的な支持を与えたのは、知識人を含む普通の市民だった。多くの人が、強い確信をもって希望を約束されると、その言葉を信じてしまう。なぜなら、多くの人は、現実の世界では満たされない願望やフラストレーションや不安を抱え、希望や救いを求めているから


    カルト宗教であれ、反社会的仲間であれ、薬物であれ、問題のあるパートナーであれ、それをおおっぴらに攻撃したり、否定したりするという姿勢はとらず、むしろ本人が、そこに惹かれていった経緯やその気持ちを共感的に受け止める。そうして、さまざまな出来事を回想し、語る中で、自分がおかれていた状況や、自分に何が起きていたかを、客観的に振り返れるようになる。  本人が信じ、依存していたものを否定するという立場に立ってしまうと、その人は、相手に対して心を開くという気持ちを持ちにくいし、自分の信じていた存在を守ろうとして防衛的になり、余計に頑なになることで、結局、冷静な視点で事態を振り返ることができなくなって


    外からもたらされる情報や空気を鵜吞みにするのではなく、自分の頭で考え、体験のみならず過去の歴史に照らし合わせて判断し、冷静さを忘れずに行動することはできる

  •  相手の心理状態を操作して、一方的に支配できるように仕向ける。このような恐ろしい現象が、カルト宗教、ブラック企業などで度々目撃される。本書はマインドコントロールをくまなく解説し、その罠にはまらないための対処法を指南してくれる。
     全体的な構成として、前半にマインドコントロールにはまりやすい人の特徴を挙げて、読者に意外な真相を突き止め、マインドコントロールが成立する構造と、その時の双方の心理状態を具体的に解説してくれる。後半では、その手法が至るところで利用されていること、また、それを発揮できるためのプロセスについて注目する。その後、それまで見てきたことを総括し、著者が5つの原理としてまとめて、それぞれの手法がおおまかに理解できる。最後に、既にマインドコントロールの罠にかかってしまった人を、洗脳から解除するまでの苦難な道のりが記述されており、著者が考えた対処を提示して本書を締めくくる。
     以上から、人間同士のやり取り、とくに集団となると、絶大な力を発揮し、その渦中にはまると、とんでもない自体に巻き込まれて、最悪、取り返しのつかないことになるのだ。したがって、本書はより多くの人が読むべき本であり、自己責任が要求される昨今ではなおさら読む必要性があるだろう。
     初めに意外な主張をする。それはこのような洗脳に陥る人は至って普通な人がはまりやすいのだという。社会的に不信感を抱く人や理想主義的な人ほどはまりやすいのである。このような人たちが結果的に、主体性を失わせて、善か悪かといった二分的思考に陥ってしまう。そのため、単に見た目だけで判断したり、一見して優秀な頭脳、経歴の持ち主だからといって、問題ないと片づけてはならないことがわかる。
     次にマインドコントロールの具体的な手法に注目すると、これが特別カルト宗教などのような一見自分たちに馴染みのないコミュニティに発生すると思われる。しかし、本書を読むと、日常的な場面で至るところが用いられていることがわかる。そのため、自分には無関係だと思っていると、後で大ごとになるという。
     さらに、著者がこれらのマインドコントロールの原則を簡潔にまとめている。
    人間は情報を欲する生き物である。極端に情報が供給されない状況が続くと、通常ではありえない行動をとり、まともな思考、判断ができないのだという。とはいえ、反対に情報を過多に与えると、情報の多さゆえに判断に迷う。これは急速に情報量が増えた現代社会を照らし合わせると想像がつく。
     これ以外にも本書にはマインドコントロールの手法が記述されているが、どの部分を読んでも、洗脳の罠にはまらないための知識があるので、部分読みでも何かしらの良い情報を得られるだろう。

  • 友人が今後洗脳を受けたときのために。大変参考になった。勝てそう。

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著者プロフィール

岡田尊司(おかだ・たかし)
1960年香川県生まれ。精神科医、作家。東京大学文学部哲学科中退。京都大学医学部卒業。同大学院医学研究科修了。医学博士。京都医療少年院勤務などを経て、2013年より岡田クリニック(大阪府枚方市)院長。日本心理教育センター顧問。パーソナリティ障害、発達障害、愛着障害を専門とし、治療とケアの最前線で現代人の心の問題に向き合う。著書『悲しみの子どもたち』(集英社新書)、『愛着障害』『愛着障害の克服』(いずれも光文社新書)、『愛着アプローチ』(角川選書)、『母という病』(ポプラ新書)、『母親を失うということ』(光文社)など多数。

「2022年 『病める母親とその子どもたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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