人工知能と経済の未来 (文春新書)

著者 :
制作 : 井上智洋 
  • 文藝春秋
3.57
  • (55)
  • (143)
  • (131)
  • (33)
  • (5)
本棚登録 : 1422
感想 : 147
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610914

作品紹介・あらすじ

【AIが発達すると人口の9割の失業状態に!? そのとき経済はどうなる?】人工知能(AI)が目覚しい発展を遂げています。小説を書いたり、囲碁をしたり、ツイッターでヒトラーを肯定する発言をして、日々ニュースを賑わせています。また、AIを搭載したロボットも活躍しています。pepperは感情を読み取ることが出来ますし、ダヴィンチは外科手術をこなしますし、iPhoneに搭載されているSiriは道案内もしてくれます。このまま技術開発が進んでいくとどうなるのか……? 著者は、2030年には、人間並みの知性を持ったAIが登場する可能性があると指摘します。ホワイトカラー事務職は真っ先に職を奪われます。医者も弁護士も失業の危機に瀕しています。最大で人口の9割が失業する可能性もあると筆者は推計しています。一部の資本家以外の労働者は飢えて死ぬしかないのでしょうか?AIによって奪われた労働は、BIで補完しよう!それが筆者の提言です。BIとはベーシックインカムのこと。社会保障をBIに一元化して、子供から大人まで一律で約7万円/月を支給するという仕組みにしようというのです。AIの未来、資本主義の未来、労働の未来、社会保障の未来まで、気鋭の経済学者が語りつくします!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • もう10年もするとどうせリタイアするからなあ。前倒しで雇用崩壊してくれないかしら。なんでもロボットがやってくれる世界が来るとは思っていなかったけれど、ちょっと期待してはいた。それがどうやらあと2~30年ほどでやって来そうな気配がある。私たちがやって来た仕事のほとんどをキカイ(AI)がやってくれる。そうすると我々は失業する。そうなったとき、どうやって生きていけばよいのか。そこに登場するのがベーシックインカム(BI)。生活保護とは違うという。すべての人に(子どもから大人・老人まで)月額7万円なら7万円が支給される。財源は増税だという。たくさんもうけている人にはたくさん税金を納めてもらって、均等に配分する。審査など必要としないので、事務処理がずいぶん削減できる。マイナンバーと銀行口座を紐付けすればすぐにできそうな施策だ。そんなことすると、皆働かなくなって税金を納める人間がいなくなるのではないか。けれど、まず働く必要がなくなるのだ。そして、1割くらいのそれでもお金儲けをしたい人たちが大量に儲けて税金を払う。この社会の格差が最大限にまで広がってしまうのか。そのとき、テロはなくなっているのか。私の読み方が甘いのかも知れないが、結構本書を読んでいると楽観的に感じてしまう。「手段より目的を高く評価し、効用よりも善を選ぶ。物事のなかに直接のよろこびを見出すことのできる人、汗して働くことも紡ぐこともしない野の百合のような人」ケインズの言うこういう人に私もなりたい。

  • S図書館
    2030年近未来の予想
    教科書のよう
    注釈は編集部で作成(本人でないのか…)

    《感想》
    難しい言葉を使ってなく、いい意味普遍的、ある意味面白味がなかった
    新鮮さは欠けていたがこれは仕方がない
    2016年に出版してから僅か7年で、人工知能がマスコミにも多く取り上げられ広く浅く浸透したからだろう

    コロナで一気に時代のスピードが加速されたと感じる
    コロナ禍であらゆるものが前倒しして行われ、結果的に変遷をもたらしたように思う
    AIもメタバースもその中の1つだろう
    次の著書も続けて読んでみよう

    余談だが、脱成長VS資本主義と題して、斉藤幸平氏と討論していた
    お話はわかりやすかった

  • 人工知能の進化の先にどんな未来が待っているのか。肉体労働や事務系の仕事は今後ますますAIによって代替され、残るのは資本家かマネジメントの仕事のみ。新しい産業が生まれるから大丈夫かと言われると、誰もが労働移動できるわけではないし、これまで技術進化が進まなかったサービス産業にも人はいらなくなる。1割ほどの職を除いて、働く必要のない社会を大胆に予測している。著者が提唱するベーシックインカムの導入には懐疑的だけど、今の仕事に安住するのは危険。人生100年時代、自分の市場価値を上げて、変化に対応できるように勉強し続けないとダメですね。

  • 2030年に考慮すること
    1.特化型→汎用型AIの台頭
    2.希少性→過剰性経済へ
    3.有用性→至高性価値へ

    「価値あるものが価値を無くしていく。
    物事のなかに喜びを見出していくこと。
    至高性が見直される時代へ。」

    読みづらそうを裏切る簡易な文言での展開です。
    業務、大きくいえば事業領域を再考する機会となる書籍です。

  • 人工知能の現状と発達の可能性・限界,発達が経済に与える影響を論じた上で,人工知能によって代替され失業する労働者の生活を保障する仕組みとして,ベーシック・インカムの導入を提唱する.人工知能にはヒトの脳の個々の機能をモジュールとして捉えてその再現を目指す「全脳アーキテクチャ」方式と,ヒトの脳の神経構造そのもの(コネクトーム)の転写・再現を目指す「全脳エミュレーション」方式があり,いち早く実現するとされるのは前者というのは勉強になった.本書とは関係ないが,以前NHKの番組で,ロボット研究の第一人者である石黒浩氏が,「遠い将来人間は自身の身体を機械で置き換え,有機物でできた身体を捨てて無機物からなる存在に進化する」という見通しを出していたのを思い出した.一方本書はそのように,人工知能をヒトが自身の脳機能に組み入れ・置き換えるという段階に達するには,まだ100年以上かかるという見通しで,そうした事態までは想定していない.人工知能に辛うじて勝てる上位の人間になれるとは思えないし,かと言って失業者の生活を保障する仕組みが,何かとレスポンスの遅い日本で整うのかという疑問もあり,数十年後の将来に対してやや暗澹たる思いを抱く.

  • 著者は経済学者であって、人工知能を専門とする科学者ではない。ということがすべて。

    冒頭に「私が特に注力したいのは、汎用人工知能が2030年頃に出現するならば、それ以降、経済システムの構造がどのように変化し、それによって経済成長や雇用がいかなる影響をこうむるかといった議論です。」とあるが、まさにその「出現するならば」という仮定の部分に関して実際には「出現しない」というのがその道の専門家の意見なので、もはや読む価値はない。

    あくまで「経済学本」として読めばまだ面白いが、人工知能について知りたいと思って手に取ってしまったのが間違いだった。

    33
    アメリカでは2000年以降、所得の中央値は下落しているにもかかわらず、一人当たりのGDPは上昇しています。(一般的な労働者は貧しくなっているが、金持ちは更に豊かになっている)

    86
    全脳エミュレーションと全脳アーキテクチャ

    98
    様々な欲望をおのずと獲得できるようなAIが開発できたら、そのようなAIは生命的であるといえます。

    158
    バクスターは作業ごとのプログラムを必要とせず、人間がその腕を動かすことで、作業のやり方を覚え混ませることができます。日本でもファナック車が、ディープラーニングの美術を用いて、人間に教えられることなく様々なものをつかんで運ぶロボットの開発に成功しています

    174
    19世紀の第一次産業革命の頃に、蒸気機関などによる機械的生産を導入した欧米諸国と導入しなかったアジア・アフリカ諸国との間に経済成長に関する最初の「大分岐」が生じました

    194
    所得は「資本の取り分である利子・配当所得」と「労働の取り分である賃金所得」に分けられ、資本分配率は前者の割合を意味します。この資本分配率が上昇しているがために、所得格差が拡大しているとピケティは指摘しています。
    (純粋機械化経済に至ると)労働者階級は賃金が得られなくなることにより消滅し、資本家階級が全てを手にすることで資本主義は終焉します。

    226
    一国の経済にとって実質的なコストと言うのは、お金を使うことではなく労力を費やすことなのです。
    (使ったお金は別の国民の手元に移るだけ)

  • 人工知能と経済、特に雇用の関係について考えたい人には必読の書だろう。人工知能の基礎知識についても大まかにではあるが書かれているし、それが雇用に与える影響についてもよくまとめられている。ただ、それらはあくまで著者の仮説であり、予想に過ぎない。一つの仮説が崩れれば、すべてが狂ってくるたぐいのものであり、本書に書かれていることがそのまま現実になるとは思わない方がよい。

    ただ、こういったことが起こるかもしれず、その際に社会を維持するためにはベーシックインカムというシステムという選択肢があることを知っておくことは意味のあることだろう。ちなみに本書の最重要ポイントは人工知能ではなく、ベーシックインカムにある。その点は買う前に知っておいたほうがいいかもしれない。

  • これまでのAIに関する情報を整理し、ベーシックインカムが解決策であると論じている。帯の広告が訴えるほど新しい示唆は得られなかった。

  • 何かおかしい気がする論考だけれども、何がおかしいのかは、よく分からない。
    でも、トンデモ本の匂いがする

  • コロナ禍前の2016年に、気鋭の経済学者によって発表された本。当然ながらChat GPTのような生成AIが社会に出回る兆しも見られない頃の著書。
    だからこそ、「便乗して書かれたのではない」古典的な説得力がある。
    普通、最先端技術と経済に関する書は、少しでも古くなると記述内容の価値も激減してしまうことが多いように思われるが(もちろん記述の質や正確性によっても左右されるが)、
    本書は、経済学者である著者の理念が前面に出ているとは言え、結果的にその予測通りに社会基盤の変化が加速している今、古典的に参照する書として大いに参考になると感じた。

    新型コロナウイルスやAIについては、流言や都市伝説の類いも飛び交っていて、
    それらの言説全体が怪しく見えてしまうような奇妙な状況になっている。
    その話題に直接的には触れていないとしても、この2〜3年の間に刊行された書物に対しては(誠実かつ真摯に著述されているかたに対しては大変失礼で申し訳ない話だけれども)少なからず流言性や都市伝説性を疑いながら読み進めざるを得ない印象が拭えない。

    著者の経済学者としての業績などはまったく知らずに私見を述べてしまっているが、
    少なくとも記述内容は2024年時点での社会状況をそれなりに正確に捉えたものであり、
    かつ上記のような「疑わしさ」に煩わされることなく読み進めることができる点は非常に評価に値すると思う。

    星5にしても良かったけれども、綿密な分析を提示しないまま一部の仮説のみを頼りに大雑把な予測のみを提示した書である点を(わかりやすさを重視して意図的にそのように著述したのかもしれないが)一応、割り引いて星4つとした。
    「大雑把」と言っても、説明自体は身近な例を挙げながら具体的で分かり易かった。
    一般人向けに書かれているのだから当然と言えば当然だとも思う。良書。

    個人的には、
    全脳エミュレーション方式のものを含めてAIと捉えるのが自然だと感じるので、
    その部分に妙に線引きしている点に関しては違和感が残った。
    そもそも何をもってAIあるいは人格あるいは主体と呼ぶのか、ということ自体、
    これから再定義したり哲学的に見直して議論を深める必要があるように感じられるので、
    単純に「全脳エミュレーション方式のものを除外」する姿勢は短絡的過ぎる感は否めなかった。

    最後に。
    現在、なぜベーシックインカム制度の導入が進む気配がないのか。
    ・・・それは世相を観察すれば、自ずと見えてくることのようにも思われる。
    そもそも人は合理的に動く生き物ではないし、目先の環境の維持も安定に固執する傾向が強い、
    ということも少なからず影響しているだろうことは、想像に難くない。

全147件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

経済学者。駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。IT企業勤務を経て、早稲田大学大学院経済学研究科に入学。同大学院にて博士(経済学)を取得。2017年から現職。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』『純粋機械化経済』(以上、日本経済新聞出版社)、『AI時代の新・ベーシックインカム論』(光文社新書)、『MMT』(講談社選書メチエ『)「現金給付」の経済学:反緊縮で日本はよみがえる』(NHK出版新書653)などがある。

「2022年 『東大生が日本を100人の島に例えたら 面白いほど経済がわかった!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上智洋の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ベン・ホロウィッ...
トマ・ピケティ
佐藤 優
ジャレド・ダイア...
アンデシュ・ハン...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×