新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス (文春新書)

著者 :
制作 : 佐藤 優 
  • 文藝春秋
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感想 : 41
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166610969

作品紹介・あらすじ

『新・戦争論』『大世界史』に続く、累計50万部を突破した最強コンビの第3弾!どの先進国でも、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいています。英国EU離脱にしても、米国大統領選での共和党候補トランプの躍進にしても、フィリピンのドゥテルテ大統領誕生にしても、社会の指導者層やエリート層に対する大衆の不満が爆発した結果です。つまり従来のリーダーやエリートのあり方それ自体が問われているのが今日の状況で、現代世界を理解するには「リーダー論」が不可欠となっています。 現在、エリートやリーダーのあり方が以前と大きく変わっているのは、経済のグローバル化、すなわち新自由主義の浸透と深く関係しています。格差が拡大し、階層が固定化し、エリートと国民の間の信頼関係が大きく損なわれてしまったのです。 ここから、大衆の間に「強いリーダー」を求めるポピュリズムが生まれる一方で、エリートほど新自由主義的な価値観を当然視して、権力を持ったエリートが、社会全体に対する責任を思う前に、自己利益や自己実現ばかりを優先するナルシシズムに陥っています。さらに、教育格差と経済格差が連鎖することで、「エリートVS大衆」という対立がますます激化しています。 このような難しい時代に、リーダーやエリートや組織のあり方を改めて考えるのが本書です。「組織が弱いところに強いリーダーは生まれない」「何気なく覚える社風や社訓が組織を支える」「角栄ブームは組織が崩壊した日本の病理」「向上心が強いエリートほどナルシシズムに陥る」「トランプのような「俗流哲学」は馬鹿にできない」など、随所に目からウロコの話が満載!

感想・レビュー・書評

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  • この本は自分にはまだ早かった。理解できそうな部分だけ読んだ。
    かなり悲観的な内容に感じるが、テーマがテーマなだけに仕方ないか。
    リーダーは集団の中から生まれる。それは政治、宗教、ジェンダー、人種等あらゆる問題、敵が存在する状況も、条件として加える必要があるかもしれない。
    たしかに、強いリーダーって逆境から生まれるし、平和な時はリーダーの存在感って薄い気もする。じゃあ、リーダーなんて生まれない世界が理想郷なのか。リーダーってなに。お腹いっぱい。

  • 池上彰と佐藤優の対談第3弾。
    世界のリーダーたちを検討しつつ現代に必要なリーダー像を語る、的な?
    面白くないはずないよね?ええ当然のように面白かったです!
    面白かったけど、これ実際に会話してるとこにいたとしたら、まっったく、参加できる気がしないわー。(まあ参加を求められることもないだろうけど。)
    話題の広範さはもちろん、打てば響く感が半端ない。
    スコットランドが独立・EU加入したら、中央ヨーロッパ標準時を採用すればいい→金融市場がイギリスより有利になる、とかすぐに思い至るもの!?
    なんか当然のように話してるんだけど!
    そうかと思えば「半沢直樹が…」とか「釣りバカ日誌の…」とか言ってるとちょっと笑う。

  • 池上彰と佐藤優の3冊目の対談。
    内容は3冊ともに、その時々のホットな国際的な時事問題であるが、タイトルは「新・戦争論」「大世界史」と、今回は「新・リーダー論」と、必ずしも内容全体を著してはいない。
    タイトルのような内容も入ってはいるが、むしろ直近の国際情勢の分析と割り切って読むことをお勧めします。そういう読み方をすれば、いつもホットな国際問題について切り込んだ、深い洞察力を感じさせてくれるシリーズです。

    内容は、「新自由主義」下における格差の拡大や階層の固定化により、それへの大衆の不満と、それに迎合する大衆迎合型のポピュリズムが台頭し、その結果エリートと国民の間の信頼関係が薄れ、民主主義がうまく機能しなくなっている・・・米国のトランプであり比国のドゥテルテ、また英国のEU離脱の国民投票実施等。

    佐藤優はそのような政治家の先陣を切ったのは、フランスのサルコジだという。
    エマニュエル・トッドの言葉を引用して「サルコジの否定性が人々を引きつけた。強いものへの敬意、弱者への軽蔑、金銭への愛、不平等への要求、攻撃の欲望、イスラムやブラックアフリカの人々をスケープゴートに仕立て上げる手口、目まぐるしい自己陶酔・・・」
    言葉だけを聞けば、トランプの事だと思ってしまうほど類似している。

    ここで考えなければならないのは、現在の「新自由主義」と、かつて米国レーガン大統領や英国サッチャー首相が「新自由主義」を掲げて登場したときと、社会的背景が違っている。
    当時は社会民主主義が蔓延しており、国家による富の再分配で「ゆりこごから墓場まで」と言われた時代だった。そういう環境で、レーガンとサッチャーは、批判を顧みず敢えて「これでは国家も社会も弱体化する一方だから競争原理を導入しろ」と主張した。

    ところが新自由主義が社会の隅々にまで浸透した結果、それがいまや素晴らしいことだと思われている。特にエリートほど新自由主義的価値観を当然視して、社会に対する責任を思う前に、自己利益を優先している。
    金が全ての価値基準になってしまった。

    他に、プーチン、エルドアン、金正恩、トランプに乗っ取られた共和党、ヒラリー、英国のEU離脱、パナマ文書、オバマの広島演説・・等々の話題満載だが、上記の「新自由主義」の部分だけでも、しっかり理解できれば、この本を買って読んだ価値があると思います。

  • やっと読み終わった~。2016年の本だけど例によって読み応えが。教養…。
    この二人がずっと本を(しかも新書とか手に取りやすい形で)出してくれているのは本当にありがたいことだ。精進いたします。

  • 新・リーダー論 大格差時代のインテリジェンス (文春新書) 2016/10/20

    トランプは、実はものすごい潔癖症です。自分専用のトイレしか使えない
    2016年12月31日記述

    池上彰氏と佐藤優氏による対談本の第三弾。
    2016年(平成28年)10月20日第一刷発行。
    この書籍発行の一ヶ月後にはアメリカ大統領選挙で
    ドナルド・トランプが勝利するという。
    ある種、既存エリートが力を失いつつあるという本書の指摘がいきなり当たってしまった感がある。

    印象に残った文章を引用してみたい。

    どの先進国でも、大衆迎合型のポピュリズムが勢いづいています。(池上)
    それぞれの時代、それぞれの地域、それぞれの環境によって、リーダーに求められる役割は違ってきます(池上)

    強いリーダーを育成しようとしても、これだけ個人がアトム化(原子のようにバラバラになること)
    している所では、リーダーはでてきようもありません。
    どの先進国もそういうジレンマに陥っています。(佐藤)

    エリートは自分自身に対する自信を喪失する一方で、社会に対する責任も放棄しています。
    日本の裁判員制度がその典型です。(佐藤)
    ⇒個人的には国民の感覚を司法判断に影響させることは良いと思う。
    ただ村瀬均などの死刑判決を覆すクソ裁判官が一番国民も裁判員制度も裏切る国賊だと思う。

    組織には個人を強制的に鍛え、能力を身に付けさせる仕組みがある。(池上)
    警視庁捜査一課担当の2年間は、事件現場での聞き込みや深夜早朝の捜査員への取材など
    休みが一切ない「この世の地獄」を体験しました。
    それ以降、世の中にはつらい仕事などなくなりました。
    「組織が人を育てる」という点は、若い人たちにも、ぜひ知ってほしいところです。(池上)

    どんな企業でも、どんな組織でも「現場に任せる、ただし何かあったら俺が責任を取る」
    というのが、理想のリーダーですね(池上)

    課長も経験していないような霞が関のキャリア官僚など、何の使い物にもなりません。
    少なくとも官僚としてのキャリアに何の意味もありません。
    組織を見渡すという修練を欠いているからです(佐藤)
    若手官僚の自己全能感には驚かされます(池上)

    アメリカに比べれば、現時点では日本の選挙の方が品性はまだ保たれているのかもしれません。
    少なくとも自民党総裁選で殴り合いにはならないし、総裁候補夫人のヌード写真が問題になることもない(佐藤)
    ネット動画でも酷いものが流れた。テッド・クルーズのマシンガンベーコンという政治性、思想性の欠片もない内容。
    YouTubeでmachine gun bacon と検索すれば視聴可能。
    予備選挙中、クルーズの政治集会で彼の演説を聞いたのですが、トランプの方がまだましだと思いました(池上)

    仮にプーチンがロシアの国情に合った強いリーダーだとしても、
    プーチンがいなくなった後のことが心配だ。(池上)
    北朝鮮の正式名称は「朝鮮民主主義人民共和国」。
    国名に「人民」と「民主主義」という言葉が入っていますが、皮肉なのは
    コンゴ民主共和国やアルジェリア民主人民共和国と同様に、わざわざ国名にこの言葉を入れている国はたいていそうなってはいないことです(池上)

    トランプは「これは口には出さない方がいい」と皆が思うような問題に敢えて触れることで
    質の悪い連中を駆り立てて、結局、共和党を乗っ取ってしまった。(池上)

    トランプと橋本徹は、似ている部分がある。
    橋本は、大阪の子供たちの学力が低いのは学校の先生のせいだ、教育委員会のせいだと言ってバッシングする。
    そうやって、わかりやすい敵をつくる。実はその背後には貧困の問題があるのに、そこには目を向けず、「先生が悪いんだ」と非難する。(池上)

    トランプは「有能なビジネスマン」と言われていますが、かなり疑問です(池上)
    会社を4度も倒産させています。(佐藤)
    どうも経営者としてのマネジメント能力を持っているわけではない。
    「経営」というより「取引(ディール)」が好きなんですね(池上]

    またトランプは、実はものすごい潔癖症です。
    自分専用のトイレしか使えない。
    出張に出かけても、現地のホテルに泊まることはできるだけ避けて、
    ニューヨークへ専用機で戻ったりする。
    イベントをなるだけ自分が経営するホテルで
    行うのは、そのためなのです。(池上)

    民主党のヒラリー・クリントンやバーニー・サンダース上院議員の集会では
    支持者はたいていスマートな体形をしていましたが、共和党のドナルド・トランプの
    集会では、赤ら顔の肥満体の白人が多かった(池上)

    産業革命以来、格差を減らすことができる力というのは世界大戦だけだった(トマ・ピケティ)

    ハーバード大学に通った所、10ヶ月で7万ドルかかったそうです。
    ロースクールを出るまでに6年かかるとすると5000万円程度かかることになります。(佐藤)
    ヒラリーが出たウェルズリー大学(女子大)は全寮制で食事代込みで年間4万5千ドル(450万円)程度。
    州立大学では州出身者はかなり安くなる。
    それでも日本円で200万円くらい。
    それ以外は年間400万円くらいはかかるでしょう。(池上)

    日本学生支援機構は「闇金ウシジマくん」に限りなく近いことをやっている(佐藤)

    伊勢志摩サミットではメルケル首相など牧師の子に対して異教の神を拝ませるなど
    一神教の人間ならどう受け止めるかということが全く想像出来ていなかった。

    「ローマは一日にして成らず」と言われるように、理想的なリーダーも、突如、単独で
    現れることなどありません。
    促成栽培できるようなものではない。
    組織内で一つずつ経験を積んで、その組織にふさわしいリーダーが徐々に育っていく(池上)

  • 数年前に読んだ。感想は読書ノートに記載。

  • 池上さん+佐藤優さんの本って初めて読んだけど、出版から2年半をしてこの迫力。ただのトレンド本ではない。すごいわ。何冊も読みたい本が登場したので、今後読んでいくの楽しみ。
    「思考の一貫性の欠如」「知的凡庸さ」「攻撃性」「金銭の魅惑への屈伏」「愛情関係の不安定」(エマニュエル・トッド「デモクラシー以後」)。なるほど。これは国家のリーダーのみならず、企業のリーダーにも当てはまるのかな?それとも「アトム化」を防ぐ疑似宗教的な企業体のトップは、リーダー的要素においては国家のリーダーを既に超えたのだろうか??

  • 佐藤優氏の「皮肉な事に平和と結びつくのは、平等ではなく、格差。そして、平等に結びつくのは戦争なのです。」は、インパクトあった。確かにこれまでの歴史は過去もそして今現在もそうだったという不都合な真実だなと。
    トランプ大統領になったら、戦争は起きないという洞察も今現在は当たっている。

    リーダーという観点から特定の宗教団体をあげたり、共産党の前の書記長の名前を出すあたりもキリスト教の氏の独特なメッセージが織り交ぜられていて本の幅を広げている。

    この本の締めは、キリストの言葉をひいて、「ナルシズムの肥大した根拠のない全能感を持つような指導者は必要ない。民衆の前にへりくだることができ、弱い人と共に進むことができるリーダーが、本当に強いのである。」と。そして、日本に居るとも。

  • 組織とはなかなか厳しいものです。生易しいものではなりません。理不尽n仕事もありましたしかし、全体としては、そううい経験を積んだからこそ、その後の仕事ができたのです。組織にはそういう利点があります。個人を鍛えて、能力を身に着けさせる仕組みがある。
    北朝鮮のイデオロギーの根幹にはキリスト教的なものがある。
    反ユダヤ主義は、自分たちとは異質な連中が良い想いをしているのではないかという文脈。

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著者プロフィール

池上彰(いけがみ・あきら):1950年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、73年にNHK入局。記者やキャスターを歴任する。2005年にNHKを退職して以降、フリージャーナリストとしてテレビ、新聞、雑誌、書籍、YouTubeなど幅広いメディアで活躍中。名城大学教授、東京工業大学特命教授を務め、現在9つの大学で教鞭を執る。著書に『池上彰の憲法入門』『「見えざる手」が経済を動かす』『お金で世界が見えてくる』『池上彰と現代の名著を読む』(以上、筑摩書房)、『世界を変えた10冊の本』『池上彰の「世界そこからですか!?」』(以上、文藝春秋)ほか、多数。

「2023年 『世界を動かした名演説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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