2040年全ビジネスモデル消滅 (文春新書 1108)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611089

作品紹介・あらすじ

ベストセラー『2020年マンション大崩壊』の筆者の第2作! 前回は個人の住宅問題に切り込んだが、今回はビジネスモデルが対象。 日本の高度成長時代、「量的充足」を目指したマクドナルドのビジネスモデルは、外食産業のみならず、日本のすべてのビジネスモデルを牽引するものだった。とくに、不動産では、企業は、都心から郊外へ、いかに安く大量にオフィスビルや住宅を供給するかに鎬を削った。同じサービスが「どこにいても手に入る]ことが重要だった。 そのいっぽうで、ディズニーランドは浦安・舞浜のシンデレラ城にこもったきり、外には決して出てこなかった。不況下でも値上げを続け、「ここにこなければ手に入れることが出来ない」価値を生み出し続けることに集中した。「質的充足」を目指したビジネスモデルの先駆者となったのである。 そして1996年以降、日本の生産人口が下り坂になると、マクドナルド型ビジネスモデルは、急速にどこにでもある陳腐なもの、すなわち「コモディティ化」し、その価値は崩壊していく。対するディズニーランド型のビジネスモデルは、他では手に入らない、特別なサービスを提供することで、現在のビジネスシーンを牽引している。 しかし、今、絶頂にあるディズニー型ビジネスモデルにも、やがて限界が来るだろう。それは、1%の超富裕層と99%の貧困層といわれる、超格差社会の到来が、「特別」をウリにしたディズニーランド型のビジネスモデルすら存続不可能にするからである。 2040年を予想したさまざまな指標は、これまでのビジネスモデルがすべて通用しない、世界が来ることを示唆している。そのとき、あなたはどうする……

感想・レビュー・書評

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  • マクドナルドとディズニーランドという有名企業でありながら、関連性が見いだせない2つの事例を対比させ、マーケティングと経済的な知見で論じられた本書は大変興味深かったです。

  • 全ビジネスモデル崩壊という強烈なタイトルではあるものの、中身としては過去の日本が経験してきた高度成長、バブル景気からバブル崩壊、そして超高齢社会の到来から人口減少時代を迎えるにあたり、日本のビジネスモデルがどの様に変遷してきたか、将来どの様になるかを予測する内容となっている。筆者は三井アウトレットパークなど数々の人気のハコモノを手掛けてきた三井不動産出身の方である。
    本書はその変遷をマクドナルドとディズニーランドを運営するオリエンタルランドに焦点を当てて、2社の経営思想・手法を例に挙げて解説している。マクドナルドは1970年代に日本に進出したから、当時の日本はまだまだ成長真っ只中を突っ走り、庶民が気軽に(高額なビフテキは滅多に口にできない事から)食べることの出来る牛肉として、銀座のど真ん中に1号店を登場させる。当時の時代背景からはそれまでの日常にはなかったハンバーガーや高価な牛肉を気軽に食べられる発想がウケて長蛇の列を作る人気店となった。その後も日本全国津々浦々、マックの無い街など見かけないほどに店舗数を伸ばし、いつしか外食産業日本一へと成長する。時代背景に支えられて業績を伸ばし続けたマックも、バブル崩壊長期のデフレスパイラルで価格をどんどん下げていく。これに加えて余りにも気軽に安く誰でも食べれる事がマックのコモディティ化を促進させ、珍しいハンバーガーを食べに行くという商品に対する明確な目的意識が無くなり、安く滞在出来るゲームスポットの様な感覚に陥ってしまう。こうして時代背景に合わせて姿形を変化させた結果、果たしてマクドナルドの価値とは一体何だったのか、という企業の存在価値が曖昧になっていくのである。
    一方、1980年代に海外初出店先としてウォルトディズニーが選んだのは日本の舞浜である。この設立背景も本書で紹介されており、なかなか興味深いものとなっているが、設立にはオリエンタルランドへ投資する三井不動産の姿も紹介されている。当時ディズニーランドに懐疑的な目を向けていた同社の経営陣をよそに、ディズニーランドは圧倒的なソフトウェアパワーと掴んだ顧客を離さないリピーター戦略が大成功し、入場料の値上げを繰り返しても人が付く経営を実現した。
    ディズニーランドの経営哲学を紹介する書籍も大量にあり、一貫して夢を見て提供すると言う目的・価値を創り上げる全キャストの想いや経営の考え方を学ぶ事ができる。時代に合わせて姿を変えるマクドナルドと一貫して夢を提供し続けるディズニーランド、この2社を比較させる事でソフトウェアパワーの重要性と経営哲学の重要性を明確にしている。
    本書後半はその様な2社であっても迎えたことのない人口減少時代に日本は突入していく。不動産業出身の筆者であるから、土地建物に求められる価値についての言及が多くなっていくが、都心マンション購入者には少々恐怖の内容になっていく。誰でも予測は可能だが、いざ人口減少に加えて、実態を伴わない都心マンションの高額化はどことなくバブルに浮かれた時代を思い出す。この10年でマンション価格は倍、株価もバブル時の最高額を狙える額まで来ている。一方、自身の手元の給与額は変わらず、一時期に見かけた様な外国人だらけのインバウンド需要がそれ程増えたとも思えない。本書はコロナ前のものではあるが、コロナで閑散とした旅行業が元に戻りつつある現時点でも、それが以前の中国人爆買いに支えられた時期に戻るとは思えない。中国は世界第2位の大国になり、低価格な買い物より価値を求める様に変わってきている。
    将来の日本が人口1億人を下回り、労働者の数が圧倒的に減少した時、前述の2社は果たしてどの様なビジネスモデルになっているだろうか。日本の不動産業界は空き家問題をどの様に解決しているだろうか。日本の政府は荒廃する地方、加速度的に進む過疎化を止める事ができるだろうか。何によって地方を活性化させるのであろうか。
    全ビジネスモデルが直面する日本の状態を直視し、これから自分がどこでどの様な働き方をするかまで考えさせられる一冊である。

  • タイトルに惹かれて図書館で借りた。
    5年前の本
    どこかで聞いた事ばかりだな。。と思ったら、
    一緒に借りた「家・土地」バブル崩壊にマクドナルド・ディズニーを無理矢理当てはめただけだった。

    例えとしてちょっとすっきりしないが、業界を全く知らない人にはいいのでは?

  • 『2020年 マンション大崩壊』を出版した2015年に、オフィスやホテルなどあらゆる不動産を対象とするコンサルタント会社・「オラガ総研」を設立した牧野氏が、2040年の日本を予測する。アメリカ発祥ながら日本の文化に深く根付いたマクドナルドとディズニーランドという2つのビジネスモデルを比較して、時代の流れに対応できずに凋落してしまった前者と、常にブランド価値を上げながら成長を続ける後者に「量的充足」から「質的充足」へ移行しつつある世界の趨勢を見い出す。生産年齢人口(15~64歳)がピークを迎えた1995年以降の日本はもう20年以上も低成長が続いており、少子化と格差拡大によって近い将来の2040年頃には大きな試練を迎えると予測する。 タイトルの『全ビジネスモデル』には多少言い過ぎ感もあるが、東京オリンピック後の日本に迫りくる危機は待ったなしの所まで近づいているのかも。

  • 2040年のビジネスモデルがどうなってるかを書いてるのかと思いきや、マクドナルドとディズニーランドの話がメインだった。

  • 牧野さんという人は不動産が専門なのに「全ビジネスモデル」まで風呂敷を拡げてしまった。全部読まなくてもよい新書の例としてはよい。最初の5分の一だけ読めばよさそう。

  • 全ビジネスモデル崩壊はちょっとおおげさなタイトルかと。マクドナルド型、ディズニー型のモデルの対比まではいいのですが終盤なんだか話しについていけなくなってしまいました・・・。

  • 図書館

  • 20世紀半ばに誕生したマクドナルドとディズニーランドは共に飛躍的な発展を遂げてきたが、21世紀になると業績に大きな差が生じ始める。マクドナルドは、デフレに対応するため価格を下げ、下がった売上を補うために他店舗化を推進したけっか、完全なコモディティ商品となった。一方、ディズニーは施設の魅力を上げることで価値を上げ、今も人気の施設となっている。

    同じような現象が、日本の不動産市場にも今後、当てはまるであろう。首都圏の人口は2020年にピークを迎え、3569万人に達するが、その後は減少に転じる。上述の様に、不動産市場もコモディティ化が加速し、首都圏ですら人口増という新たな需要の増加が期待出来なくなるのである。住宅を建てれば、“誰かが買う”、オフィスを建てれば“誰かが借りる”という経済モデルは、何れ達行かなくなる。

    現在、日本の空き家率は13.5%にも及ぶが、2033年には2160万戸、30%にも達するという。つまり、両隣のどちらか1軒が空き家という事になる。わずか17年後の事だ。2040年には、これが43%に及ぶと予測され、日本中がスラム化の危機を迎えることとなる。

    生産人口が2010年の8173万人から、2040年には5786万人となり2100万人が減少する中、橋や道路、駅、空港といった社会インフラの維持には巨額の費用が必要となる。世の中の仕組みにも様々な歪が生じ、格差は拡大し、ディズニーの提供する夢の世界に酔いしれる事が出来るひとはいなくなる。当然、移民を受け入れる事が避けられなくなり、その移民たちはスラム化した空き家に住む事となる。移民は、治安上や生活上の問題を引き起こす事となるだろうが、もう日本として不可欠なものとなり向き合うことを余儀なくされる事であろう。

  • 20世紀半ばに誕生したマクドナルドとディズニーランドは共に飛躍的な発展を遂げてきたが、21世紀になると業績に大きな差が生じ始める。マクドナルドは、デフレに対応するため価格を下げ、下がった売上を補うために他店舗化を推進したけっか、完全なコモディティ商品となった。一方、ディズニーは施設の魅力を上げることで価値を上げ、今も人気の施設となっている。

    同じような現象が、日本の不動産市場にも今後、当てはまるであろう。首都圏の人口は2020年にピークを迎え、3569万人に達するが、その後は減少に転じる。上述の様に、不動産市場もコモディティ化が加速し、首都圏ですら人口増という新たな需要の増加が期待出来なくなるのである。住宅を建てれば、“誰かが買う”、オフィスを建てれば“誰かが借りる”という経済モデルは、何れ達行かなくなる。

    現在、日本の空き家率は13.5%にも及ぶが、2033年には2160万戸、30%にも達するという。つまり、両隣のどちらか1軒が空き家という事になる。わずか17年後の事だ。2040年には、これが43%に及ぶと予測され、日本中がスラム化の危機を迎えることとなる。

    生産人口が2010年の8173万人から、2040年には5786万人となり2100万人が減少する中、橋や道路、駅、空港といった社会インフラの維持には巨額の費用が必要となる。世の中の仕組みにも様々な歪が生じ、格差は拡大し、ディズニーの提供する夢の世界に酔いしれる事が出来るひとはいなくなる。当然、移民を受け入れる事が避けられなくなり、その移民たちはスラム化した空き家に住む事となる。移民は、治安上や生活上の問題を引き起こす事となるだろうが、もう日本として不可欠なものとなり向き合うことを余儀なくされる事であろう。

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著者プロフィール

不動産プロデューサー。1959年生まれ。東京大学卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストン コンサルティング グループ、三井不動産などを経て、オラガ総研代表取締役兼全国渡り鳥生活倶楽部代表取締役。著書に『空き家問題』『不動産激変』『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』など。

「2022年 『2030年の東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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