口腔医療革命 食べる力 (文春新書 1114)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611140

作品紹介・あらすじ

「食べられない」高齢者が急増!? 健康長寿のカギは口腔機能にあり!お年寄りが病院から退院すると、入院前よりも“元気がなくなっている”と思ったことはないだろうか。退院はしてきたものの、体力・免疫力は返って弱っていると。実は、ここに現在医療の大きな問題が隠されている。多くの医療現場では、『治療中なんだから食べることくらいは我慢しろ』という風潮が蔓延している。高齢者の場合、特にそれは顕著だ。合わない義歯は管理が難しいと強制的に外され、食べることが少しでも危険だと判断されると、食事はほとんどが流動食、点滴、ひどい場合は、経鼻経管栄養や胃ろうにされてしまう。なぜ、こんなことが起こるのだろうか?急性期病院とは、専門医の集まりである。治療すべき臓器を専門医が受け持つ。専門医とは、良い意味でも、悪い意味でも、自分の専門を第一に考え、それに危険なファクターはできるだけ排除しようとする。病院内で『食が軽視される』大きな原因は、「医科」と「歯科」が分かれてしまっていることにある。他の専門家にとって、食べるということは自分の治療にとって、危険以外の何物でもないと思うからだ。実は病院内だけではなく、そもそも食支援に重要な役割を果たす『口腔機能』の専門家がいないという大きな問題がある。人間の体は全て、担当の専門医が決められ、診てもらうことができるが、唯一専門家のいない器官がある。それが『口腔』である。口腔とは口の中から喉までの器官。人間の体の中で、口と歯だけが医科ではなく、歯科が担当する。だから、口腔内のがんやできものは、医科ではなく、歯科の口腔外科が担う。しかし、口腔の外科医はいても、機能の低下や障がいを治療・改善する内科の専門家が全くの不在なのだ。教育すら受けていない。医療から見放されている『口腔機能』だが、人間が生活していく上で、このうえなく重要な器官であることがわかってきた。「食べる」「喋る」「笑う」という、人間の健康にとって、最も重要な行為を支えているのだ。今後、健康に老後を過ごすために必要なこととは……『食支援の専門家(食医)を見つけて、しっかりと噛んで食べながら病気を治すこと』『加齢によって低下してゆく口腔機能を自分の力で維持させてゆく』『本人と家族が「医師任せ」にせず、適切なセカンドオピニオンを持つこと』など、対処法までしっかり紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 人間にとって「食べる」ことは生きる力としてとても大切なんだろう。

    それに食べることを止めてしまえば極端な話、喋ることや笑うことまで止めてしまうことになる。

    長生きしていくうえで、自分の口で食べ物を食べられるようにケアや養生することは大事ですね。

  • 医療介護現場の食に対する現状を的確に表わしていると感じました。
    「病院に入院したから、医師に任せたから、安全」
    という考えはやめた方がいいと、多くの人に気づいて欲しいです。医師や病院が判断したからといって、全てが患者に良いこととは限らないと思います。

    誤嚥や肺炎のリスクがあるからと言い、
    よく調べもせずに禁食にし、患者の身体にリスクを負わせる…
    食べることを止めるのは簡単です。
    しかし、その禁食が患者からどれだけ多くの幸せを奪うのか、医療関係者は考え直すべきだと私は思います。

  •  塩田芳享(しおだ よしたか)著「食べる力」、2017.1発行です。人工栄養高齢者の急増。現在は「食べる力」がともすれば、窒息、誤嚥性肺炎予防の名のもとに奪われていくおそれがあると著者は述べています。「食べる力」とは何か!? 健康のバロメーターは「食べる、喋る、笑う」。そして、食べる力が喋る力と笑う力につながっていると。一方で、急激な高齢化についていけない歯科事情もあるとのこと。よく噛んで味わうには自前の歯がいいことは勿論ですが、高齢者にとっては噛みやすい入れ歯が何よりも大切ですね。いい歯医者さんは宝物です。
     示唆に富む内容でした。塩田芳享「口腔医療革命 食べる力」、2017.1発行、再読。日本人の平均寿命は延びたが、「食べること」がその犠牲になっている。病院が食べられない高齢者を急増させている。誤嚥性肺炎の防止から胃ろうや鼻からの栄養補給、医師がリスクを減じ、患者のリスクを増やしている。人間にとって「食べる力」とは何か! 食べることによって生きる力が湧き、それは歩く力へと。噛む~送り込む~飲み込む は一連の動作。口腔ケア、口腔リハビリ、噛み合わせの調整された義歯が大切。食べる、喋る、笑うが健康のバロメーター
     医科と歯科の狭間で見過ごされてきた口腔(口の中)。医療現場で食べられない高齢者が急増。誤嚥性肺炎を防ぐため、飲みこむ力が弱化した患者に胃ろうや鼻からチューブの栄養摂取を。大切なのは、噛む力、送り込む力、飲みこむ力の一連の動作。食べるリハビリをすれば、食べる喜び、そしてそれが生きる喜びに。するめを口の中で動かしたり、指で下あごを押さえたり、舌や口の運動を。「食べる・喋る・笑うが健康のバロメーター」 塩田芳享(しおだ よしたか)「食べる力 口腔医療革命」、2017.1発行、再読。

  • 高齢者の食事支援について知りたいと思っていた時に発売され購入。

  • 「口を鍛えて、いつまでも健康!」いい標語です。おいしく、楽しく、安全に食べることは、介護の現場でも常に重用ししています。言いまわしに引っ掛かるところや、仕事柄同意できないところ(在宅介護が一番)もありますが、お薦めの一冊です。個人的には「フレイル予防プロジェクト」が地域の高齢化対策に取り入れられないか興味があります。

  • 知多半島に住んでいる要介護認定を受けていない65歳以上の健康な高齢者4,425人を4年間に渡って追跡した結果は、「20本以上自分の歯がある人と、しっかりと入れ歯を入れている人とでは、認知症になる割合はほぼ同じで。それに対し、歯が19本以下で入れ歯を使っていない人が認知症になる割合は約2倍。」
    藤田保健衛生大病院では、あらゆる職種が150名集まる日本一ともいえる「栄養サポートチーム」が活動している。

  • 【「食べる・しゃべる・笑う」が老後を変える】栄養を投与することしか見てこなかった終末期医療の盲点は、自分で噛んで楽しく食べること。お喋りも笑顔も作る、口腔ケアの最前線。

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