それでもこの世は悪くなかった (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611164

作品紹介・あらすじ

人から見たら悲劇かもしれない人生。しかし、正々堂々、力いっぱい生きた私はいま、満足だ――こんな佐藤愛子は、どうしてできた? ワガママ盛りの6歳で聞いた乳母の言葉は、思えば初めての人生の教訓だった。以来、父・佐藤紅緑、母、先輩や友の影響を受けて出来上がったのは、「他人から理解されないばかりでなく、自分でも何かわけのわからない、ヘンな佐藤愛子」。そして二度の結婚に失敗、夫の借金に巻き込まれ、それでも人は幸福に生きられる! 93歳、初の語り下ろし人生論。佐藤愛子を作った言葉「なんぼお嬢ちゃんやかて、大きゅうなったらどうしてもせんならんということが、世の中にはおますのやで」(乳母)「豆腐屋のオッサンかて校長先生かて、おんなじ人間ですがな」(母)「カネカネという奴にろくな奴はいない」(父・佐藤紅緑)「女に小説は書けないよ。女はいつも自分を正しいと思っている」(師・吉田一穂)「君はね、平林たい子さんのような作家になりなさい」(師・北原武夫)「苦しいことが来た時にそこから逃げようと思うと、もっと苦しくなる」(師・臼井栄子)「君は男運が悪いんやない。男の運を悪くするんや」(友・遠藤周作)

感想・レビュー・書評

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  • 『九十歳、何がめでたい』と被るお話もありましたが、さらに詳しくその時の状況をお話しして下さっていたので、やっぱり読後はスッキリ爽快感。

    全部が全部、分かります!!ではないんだけど、悩んだ時とか、モヤモヤすることに対して、愛子さんから「なるようになるさ」って言ってもらえてるみたいで、本当に人と話してるみたい。今日からこの本も読み返したい本の仲間入り〜。

    同じ時間軸で、人それぞれ毎日違う人生を送っていて、体験することも思うこともそれぞれ違う。
    絶対普通に生活していたら会えない愛子さんの人生観を教えてもらえるって、今更ながら本ってすごいな〜。

  • しみじみと読める本でした。
    書いてある事は今まで読んだ本や自伝の「血脈」で見た事がほとんど。
    だけど、さりげないエピソードに「ああ、そうだなぁ・・・」としみじみ思ったり、静かに共感や感動ができました。

    主に、佐藤愛子さんの生い立ち、今までいろんな本で書かれている夫の借金を返済してきた半生、作家仲間の事について書かれており、この本で新たに書かれていると感じたのは作家仲間について、今までの本よりも詳しく書かれているという事でした。

    それらに対する私見には、共感できるところもあれば「それはどうかなぁ・・・」というのもあり。
    だけど、自分と違う意見でも「なるほどね」と思えてしまう。
    それは多分、この本を書かれた時の作者の年齢というのも関係しているとは思います。

    私がこの本で一番印象に残ったのは幸せについて書かれた話です。
    電車で乗り合わせた女子高生たちの姿を見て、試験勉強をしている彼女たちは今自分が幸せなのだと感じていないだろう。
    だけど、幸せなのだというのをポッキーで表現されているのが印象的でした。
    今の世の中、こんな繊細な感性をもった人がどれだけいるだろう・・・と思います。
    また、歳をとらないと分からないという事は本当にあるよな・・・としみじみと思います。

    他には今の世の中に対する思いにも共感できたし、引用したいなと思う箇所もいくつもありました。

  • 作家を「先生」と呼ぶのはヘンだと思う。それでもやはりそう呼びたくなる人はいて、その筆頭が愛子先生だ。この本は語りおろしで、特に目新しいことが出てくるわけではないけれど、私は愛子先生については同じ話を何遍聞いてもまったく飽きない。全部が全部「その通り」と思うわけではないが、なにかもう根本の所で仰ぎ見てしまうものがある。それでまた、どういうわけか読んでいると目頭が熱くなってしまうのだ。

    「人生というものはね、幸福だのなんだのと言ったって、どうということはないんですよ」」「苦労したってどうということはない。反対に、幸福になったからと言って、別にどうということはない」

  • 今年は、亥年。
    佐藤愛子氏も、亥年なので、96歳を迎える事になられる。
    「90歳 何がめでたい」も読んで、結婚2度、そして、夫の借金を支払う必要もなかったのに、肩代りした話。
    そして、作家友達の遠藤周作氏・川上宗薫氏などの逸話。
    断固たる猪突猛進型。
    裕福な時代も、戦争時代も知っているからこそ、苦労も乗り越え、そして、武士の子としての威厳をも持ち、生き抜いてきた様を、表している。
    人から見た目と、自分が過ごしてきた人生も、正々堂々と、生きている事に、満足されている事に感銘。
    そして、面白可笑しく、苦労を笑いへと、執筆されている事で、読者数が、増えるのだと思う。

  • 2018/4/11

  • 一言ひとことが血の通った言葉。

    大きな不幸も必死に乗り越え
    後に幸福の素晴らしさを知る。

    そんな豪放磊落な人だと感じた。

  • ぶっ飛んだ婆さんだと思いましたが、すごく肝が座っている。
    私のような我慢が足りない人間には、お灸をすえる一冊です。

  • 著者の本を読んだのは、「九十歳。何がめでたい」についで2作目。そもそもこの人の本は、エッセイ以外の小説を読んだことはないので作家としての実力は知らないが、90歳を過ぎてこれだけ世の中に対してハッキリとした認識があるのは、素直にすごいと思う。いろいろな苦労を経験されたようで、その中から紡ぎ出される言葉は一つ一つに含蓄があり、説得力がある。また、遠藤周作や北杜夫など超有名作家との変人エピソードも満載で、おおらかな、古き良き時代の一旦を知ることができる。

  • 御年93歳、戦争や、高度経済成長、バブル崩壊と不況の時期、3種の神器誕生など、幾多の時代背景と様々な人生経験をしてきた著者の人生観などを語る姿、経験から学んだこと、世の中から見えるものを切り出す言葉は、辛口であり、温かみがあり、爽快感があり、一つ一つが重みのあるものだと感じる。人生は苦しみがあってこそ幸せがあるだろう、自身のこと、まわりのこと、昭和、平成の時代に起こったことなどから見えてくる自身の揺るぎない思いと、辛くとも困難と思わずに自分の方法で切り抜く姿が、今の笑いあり、感動ありの人生だと感じる。

  • 著者が人生・幸福・死について語る。幸福は苦労の上に在るもの、だとか、損があればあとに得がくるという考え方が面白い。とくに印象的だったのは、最後5ページ、死後の世界のこと。物質主義の現代で精神的な事柄を語る点が興味深かった。佐藤愛子さんの他の本も読みたくなった。

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著者プロフィール

大正12年、大阪生まれ。甲南高等女学校卒業。昭和44年、『戦いすんで日が暮れて』で第六十一回直木賞を受賞。昭和54年、『幸福の絵』で第十八回女流文学賞を受賞。平成12年、『血脈』の完成により第四十八回菊池寛賞、平成27年、『晩鐘』で第二十五回紫式部文学賞を受賞。平成29年4月、旭日小綬章を授章。近著に、『こんな老い方もある』『こんな生き方もある』(角川新書)、『破れかぶれの幸福』(青志社)、『犬たちへの詫び状』(PHP研究所)、『九十歳。何がめでたい』(小学館)などがある。

「2018年 『新版 加納大尉夫人 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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