植物はなぜ薬を作るのか (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611195

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    第1章  植物から作る薬
    第2章  薬になった植物成分
    第3章  植物はなぜ薬を作るのか?
    第4章  植物はどのように薬になる物質を作るのか?
    第5章  植物の二次代謝と進化のしくみ
    第6章  バイオテクノロジーと植物成分
    第7章  人類は植物とどのように相互共存してくべきか?

    <内容>
    植物の生合成のしくみからさまざまな化学成分の抽出(これがいわゆる漢方)、さらには化学的に生成、さらに遺伝子配列の分析からいわゆるバイオテクノロジーと研究を進めてきた著者の、こうした分野での解説書。わかりやすい書き方で、高校程度の生物・化学の知識があれば読める内容である。そして、逆に薬や味、匂い(これは食べ物として)、たばこや麻薬などの嗜好品(麻薬を嗜好品というのは…)、これらの多くは植物由来であり、さらに言えば彼ら植物が光合成をしてくれているからこそ、我々がこの地球上に生かされていられる訳だし、太古の植物の死骸などが石炭、石油となっていることを考えると、もっと植物のことを考えねばならない。
    また、バイオテクノロジーに関しても、「怖い」イメージがあったが、こうした啓蒙を受けると今やなくてはならない技術であり、もう身近に恩恵を受けている。こうした研究者の方の働きかけも弱いと感じたが、反対派のヒステリックな反応もどうかと感じた。

  • タイトル通りの内容で新書らしい一冊でした。
    植物から得る薬にも毒にもなる効用。その成分。ではなぜ薬を作るのか。どのようにその物質を作るのか。薬にも毒にもなるその成分に植物自身は耐えれるのか。
    細かい話は流し読みしてしまいましたが、知識として面白く、十分楽しめました。
    ただ分かりやすくを意識して、書いて頂いているのは感じましたが、カタカナも多くなり後半は眠くなってしまった…。

  • 生命の定義
    ①自らの生存と成長の為に物質代謝、エネルギー代謝が出来ること。
    ②自己を複製して次世代に受け継ぐこと
    この2つの属性を有し、生命として成り立つために動かないことを選択した植物は独自の生存戦略を発達させた。それが結果的に多くの薬をもたらす事に繋がった。

    地球上で1番多いタンパク質はルビスコ。空気中の二酸化炭素を最終的ブドウ糖などに至る有機化合物に固定できる。温暖化防止に役立つ。
    現在では医師の9割が漢方を使っている。
    ミトコンドリアのゲノムが母親にしか由来しないのは人間も植物も同じ。
    アレロパシー、他感作用。
    薬用成分は植物の二次代謝によってできる。
    一次代謝は生命維持の活動。
    地球上にある種子植物あるいは顕花植物の総数は22万から26万種あると考えられている。その内ゲノム配列が解明されたのは100種程度。

  • アスピリンは、ヤナギの樹皮に含まれる鎮痛作用のあるサリシンをアセチル化したもの。爪楊枝にはヤナギの枝が使われる。植物体が病原菌の攻撃を受けると、サリチル酸は揮発性の高いサリチル酸メチルに変換され、植物の体全体にすばやく伝える。サリチル酸メチルはよい香りで、サロメチールとして使われている。

    タバコの葉が捕食者にかじられると、ジャスモン酸メチルという信号伝達物質が産生され、根のニコチン生合成をつかさどる遺伝子が活発に活動する。

    他の植物の生長を抑えたり、微生物や昆虫、動物から身を守ったり、引き寄せたりすることをアレロパシー(多感作用)という。セイタカアワダチソウは、シスデヒドロマトリカリアエステルを放出して、ススキなどを駆逐して繁殖した。マリーゴールドは、土壌中の線虫の発生を抑える。

    漢方処方の7割に配合されている甘草の主成分はグリチルリチンで、砂糖の30〜150倍甘い。スナック菓子、佃煮、漬物、飲料などに多く用いられている。

    ポリフェノールとは、ベンゼン環などの芳香環に水酸基(OH)がついた化合物群で、水酸基が活性酸素分子を捕捉する抗酸化作用を持つ。柿の渋みはタンニンで、種子が成熟するまで食べられないようにする働きを持つ。
    フラボノイド:フラボノール、フラボン、カテキン類、アントシアニン、イソフラボン
    スチルベノイド
    フェニルプロパノイド
    タンニン

    代謝経路には、どの生物種にも共通して存在する一次代謝経路と、特定の種やグループに存在する二次代謝経路がある。二次代謝経路によって作られる物質は主に5つある。
    ポリケチド:大黄、アロエ
    フラボノイド:ソバ、ブルーベリー
    フェニルプロパノイド:シナモン、アニス
    テルペノイド:柑橘類、ハッカ、甘草
    アルカロイド:ケシ、タバコ

    新薬の6割は、天然から得られた成分、主要部分が天然物由来、天然物の生合成経路を真似て合成されたものなど。

著者プロフィール

千葉大学大学院教授、理化学研究所環境資源科学研究センター副センター長、薬学博士。1977年 東京大学薬学部卒業。東京大学大学院薬学系研究科に進学。慶應義塾大学助手、千葉大学助手・講師・助教授などを経て現職。2018年 紫綬褒章受章。主な著書に『植物はなぜ薬を作るのか』(文春新書)、『天然医薬資源学[第6版]』(共編、廣川書店)、『植物の代謝コミュニケーション』(共編、共立出版)などがある。

「2019年 『植物メタボロミクス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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