発達障害 (文春新書 1123)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 955
感想 : 89
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166611232

作品紹介・あらすじ

「人の気持ちがわからない」「同じ失敗を繰り返す」「極端なこだわり」……ASD、ADHD、アスペルガーの謎に迫る!近年、ドラマや小説の主人公に「発達障害」を思わせるキャラをよく見かける。たとえば2016年にヒットしたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)の主人公・津崎平匡。彼は高学歴だが対人関係が苦手で応答が画一的、些細なことへのこだわりが強い、という設定。アメリカの人気ドラマ『クリミナル・マインド』の主人公リードは、FBIのエリート捜査官で、IQ187。彼は飛び級を繰り返してカリフォルニア工科大学で数学、化学、工学の博士号を取得し、驚異的な記憶力と分析力で難事件を解決する。しかし、他人の気持ちがわからず、空気が読めないため、周囲からは煙たがられている。こうした発達障害の特性をもつキャラがポピュラーになった影響か、精神医療の現場では「自分は発達障害かもしれない症候群」がみられる。「他人の気持ちがわからない人」「空気が読めない」ことを家族や同僚から指摘され、外来を受診する人が増えているのだ。実際、人口の約5~10%が該当するという研究報告もあり、周囲にこんな人がいる、と思い当たる人も少なくないだろう。その一方で、誤解も蔓延している。動機が不可解な少年犯罪や猟奇的な事件で、根拠もなく「アスペルガー症候群」との関連が不適切に取り沙汰されたこともある。本書は、日本初の「発達障害のためのデイケア」を運営する病院長が、○発達障害とは何か?(正しい知識)○彼らが抱えている問題は何か?(課題)○どのように社会が受け入れていくべきか?(社会の対応) ……を、豊富な症例をもとに、初心者にもわかりやすく解説した作品だ。事件の精神鑑定の裏側、天才(驚異的な記憶力、共感覚など)、歴史上の人物の例など、興味深い症例も盛りだくさん。新年度を控えていろいろな人との出会いが増える中、必読の一冊だ。

感想・レビュー・書評

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  • ADSやADHD、きちんと診断できる医師が少ないことが問題だと分かった。別の精神障害と誤診され不適切な治療を受けて問題を悪化させてしまっていることがある。

  • ASDとADHDについての特徴が書かれており、基本の1冊という印象。
    ASDとADHDについては特に真新しい事は書かれていないが、サヴァン症候群についての章は新たな知識を得ることができた。

    自分もそうかもしれないと知識を得ることによって、行動は変えていけるのかもしれない。こういった事を学ぶことでより広い視野で様々な人と関わっていくことができると考えると、非常にためになる1冊だった。

  • ASD、ADHD、アスペルガー症候群など、発達障害の症状や症例が豊富。
    事件性のある症例や、いわゆる偉人となった例などが挙げられていたりもしているが、多くは日常的な生活が「送りにくい」とか、周りより「トラブルが多い」人なのではないかと思った。

    私としては、どんな風に対応をしていけばいいのかとか、どんな医療機関やケアがあるのかという方をもっと詳しく知りたかった。
    もちろん、ネットで調べたら情報は出てくるだろうが、こうした書籍で網羅的に扱ってくれると、信憑性という点でやや安心できる。(まあ、新書だからってそう変わらんよ、という意見もあるかもしれないけれど)

    成人してからの発達障害を扱う施設は少ないとある。
    また、医師がそう判断せず、本人の甘えだとしたケースもあった。

    私も、とても苦しくて医療に助けを求めた時、それはあなたの性格だ、とだけ言われたことがある。
    多くの、酷い症状を抱える患者の中では、その程度と思われることだったのかもしれない。
    けれど、救われなかった残念な思いが、今も少しの不信感として残っているのは事実だ。

    知ろうとする人、疑い悩む人への、結果ではなく過程の優しさがあれば、当事者にとっては違うのかもしれない。

  • 事例を交えた内容は、分かりやすく興味深かったです。
    ASDと犯罪の関係が取り沙汰されていますが、生育歴が関係している場合も。
    ASDだから、という考え方は安直過ぎ。マスコミ報道に踊らされたくないです。

  • 名探偵シャーロック・ホームズ。
    映画「風立ちぬ」の堀越二郎。
    ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の津崎平匡。

    「少し変わったところがあるが、特定の分野におちて驚異的な能力を発揮する天才タイプ」として、アスペルガー症候群の人たちが好意的に取り上げられている。

    ここ数年「発達障害」という言葉は、ポピュラーなものになった。

    だがその反面、誤解も多い。

    裁判で採用された精神鑑定ですら、臨床の専門家の著者などから見ても明らかな誤りであるケースが散見されるという。
    少年事件における被告人の刑罰減免のために「発達障害」という病名が濫用されている実態があるのだと。

    毎回同じことをし忘れる、目にしても気づかない。
    話し出すととまらない、話がとぶ。
    ものの置き場所にこだわる。

    著者は、昭和大学烏山病院長として、発達障害の人のためのデイケア、リワークプログラムに取り組んでいる。
    一筋縄ではいかない状況なかで、トライ&エラーを繰り返し、生活の中で感じる「生きづらさ」への対処、どのように本人の個性を生かした生活をしていくかを検討するのが目標だという。

    本人も、家族も、周りの人々も、そして行政、医療関係者が、実態を正しく捉えて対処していくことが肝要なのだと。

  • 発達障害のASDとADHDの解説に重きを置いた書籍です。この2つについて知りたい方におすすめします。

    個人的な感想ですが「ケーキの切れない非行少年たち」「累犯障害者」を読んでみると、社会に適応できなかったり、人に拒絶されたりすると攻撃してくるタイプが多いように感じます。
    また反対に生育環境が悪くても、発達障害的になる方もいらっしゃるとも思っています。
    犯罪の記述が多かったので、少し気になりました。

    後者に関しては「愛着障害」「教誨師」「殺人者はいかに誕生したか」が参考になるかもしれません。

  • 豊富な事例から導き出された知見は、説得力に富み、納得できることばかりだ。ときに、歴史上の人物を事例に持ってくるのは典型的な特性を見ることができ興味深い。SNSなど対面しない、空気を読まなくてもよい生活環境は発達障害を持つ人にとってよくない環境であると思う。デイケアによる専門プログラムなどの取り組みはとても良いと思うし、もっと広まってほしい。

  • 本人はもちろんのこと、家族や周囲が発達障害を正しく理解し、どう向き合うかが問われています。

  • 岩波明(1959年~)氏は、東大医学部卒、精神生理学を専門とする精神科医。東大医学部精神医学教室助教授、昭和大医学部精神医学教室准教授などを経て、現在同主任教授兼同付属烏山病院長(ADHD外来を担当)。
    本書は、「発達障害」の中で、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」(アスペルガー症候群を内包する)と「注意欠如多動性障害(ADHD)」を取り上げ、それらの典型的症状・診断基準、それぞれの共通点と相違点、アスペルガー症候群に対する誤解、発達障害と犯罪との関係、そして、発達障害を社会でどのように受け入れるべきか等について、ADHD患者の臨床医として解説したものである。
    私にとっては、人間の脳の複雑さは長年の関心事のひとつである。そのきっかけの一つは、サヴァン症候群のキム・ピークをモデルに、ダスティン・ホフマンとトム・クルーズが主演してアカデミー賞を受賞した、1988年の映画「レインマン」にまで遡るが、その後も、神経学者オリバー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』等の著作、サヴァン症候群といわれるダニエル・タメットの自著『ぼくには数字が風景に見える』、1998年生まれで、アインシュタインよりIQが高く、早くもノーベル賞のホープと言われる、自閉症のジェイコブ・バーネットの成長を母クリスティンが綴った『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』、2004年の佐世保小6殺人事件を扱った『謝るなら、いつでもおいで』などのドキュメント物(本書の中でもそれらの多くが言及されている)のほか、専門家が一般向けに著した書籍も読んできたが、本書もその一部として手に取った。
    そして、読了して感じたのは、これらの障害に対する認識・理解がまだまだ進んでいないということであった。私は、一般人にとっては、そうした人びとに接する機会自体が多くはないと考えていたのだが、本書で取り上げられている、著者が実際に外来で接した数多くの事例や、発症率から推測すれば、学生時代には間違いなく周りにいたであろうし、現在の職場の中にもいる可能性が十分にあり、自分自身、全く認識が足りていなかったというのが正直なところである。また、一方で驚いたのは、専門の医師の間でも、(著者によれば)明らかな誤解・誤診が少なくなく、何と、犯罪者の精神鑑定においてすら(だからこそ、なのかも知れないが)そうであるということであった。(ただ私は、著者が取り上げたいくつかの事例の分析において、「サイコパス」という見解が全く出てこなかったことには少々疑問を感じている。。。)
    著者は後段で、自らの臨床医としての立場から、発達障害を持つ人びとをどのように支援していくべきかに力点を置いて解説をしているのだが、眼に見えない障害を持つ人びとに対し、社会は何ができるのか・何をすべきなのかについて、一人ひとりが考えていく時期に来ていると改めて感じた。
    (2020年8月了)

  • 途中までわかりやすく読めたと思う。しかし最終盤、当事者による犯罪例をここまで凄惨さを強調して書くことに意味があったのか極めて疑問。途中までの論調に反して当事者への偏見を思い切り煽っているようにしか見えず、正直悪意を感じるほど。

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著者プロフィール

昭和大学医学部精神医学講座主任教授

「2023年 『これ一冊で大人の発達障害がわかる本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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