日本人を考える 司馬遼太郎対談集 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.64
  • (11)
  • (16)
  • (30)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 207
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105365

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 昭和47年頃の対談集です。現在読んでもまったく色褪せてないのには感動すら覚えます。あの頃の日本に比べて今の日本は良くなってるんでしょうか。ねぇ司馬さん?

  • 日本人を考える 司馬遼太郎対談集

    司馬遼太郎は 対談の名手である。
    相手の持つよさを うまく引き出して、知の輝きが増す。
    昭和44年(1969年)から昭和46年の間の対談集。
    その時代からかなりたっているが、
    日本の思想の底流が明確になっているような気にもなる。

    梅棹忠夫、
    日本は無思想時代に入った。
    大企業に入るとは 藩に属するようなもの。
    ギターを楽しんで弾いて生きていくことが不思議でなくなっている。

    犬養道子、
    相対的思考のなかで あっけらかんとして生きている。
    ヨーロッパの理詰め的な対話はつかれる。
    なぜ 絶対なものをもとめたのか。
    祖父が 首相だったが 殺されたことによる
    絶対を求める力が強かった。

    梅原猛、
    真善美。は 宗教の求めるもの。
    南無阿弥陀仏と南妙法蓮華経。
    弥生文化と縄文文化の潮流がある。
    浄土宗、浄土真宗は 死の論理。
    日蓮からは 新興宗教が産まれている。
    日蓮は生の論理。そして、縄文的だ。
    利とはなれることが宗教であったが 創価学会は利を求めている。
    それは 日蓮を系譜としない 新たな宗教。

    信長は近代を切り開いた。
    無神論者となり、奇妙なものは徹底して破壊した。
    比叡山、一向宗教、

    向坊隆、
    日本はエネルギーの問題をさけて通ることができない。
    石油は いつ枯渇するのかわからない。
    原子力はコストが安いが それ以外のコストがかかる。
    残された灰をどう保存するのか。
    地震が多く、地下水が多い、狭い国で。

    高坂正堯、
    攘夷のエネルギーが、明治維新を作った。
    しかし、開国は、先の見えるものたちによって、当然だった。
    薩摩藩は、開国だったが、薩英戦争で、攘夷のように見えた。
    長州は、イギリスとの戦いをすることで、
    攘夷から開国に変更することができた。
    上杉は理解していた。
    勝海舟は、政治家のように言われるが、評論家だった。
    幕府には、政治家が、いなかった。

    長州が、陸軍の基礎になったのが、悲劇を産んだ。
    奇兵隊の延長で、猛攻に次ぐ猛攻。糧食は敵に求むというわけで、
    補給なんか考えない。
    無能な精神主義がまかり通った。

    司馬遼太郎は言う。
    日本の歴史の政治家で四人あげよといわれたら、
    信長、秀吉、家康、それに大久保利通をあげる。

    政治に教科書はない。人生に教科書はない。

    辻悟、
    子は親を批判することによって、自分を作ることが出来る。

    陳舜臣、
    日本人は、騎馬民族。緊張した臨戦体制。

    富士正晴、
    寝転んで、大阪弁で吠える。

    桑原武夫、
    理屈が話せて、しかも感情表現が豊かな日本語。
    日本語は変化し、進化する。
    人々を感動させる文章。
    形式論理から見ると非合理的で、心理的には納得させる論理がある。

    貝塚茂樹、
    日本語は、イデオロギーが成立しない。
    気分として、語ろうとする。
    毛沢東は、聖人である。
    中国人は、繰り返しが好きな民族。

    山口瞳、
    司馬遼太郎の東京にくしに、山口。タジタジ。

    今西錦司
    氷期には、対応したが、氷期が終わる時の気候の変化に対応できなかった。

  • この本は司馬遼太郎の対談集である。

    「坂の上の雲」で多少ゲンナリしていたので、不安があったが読み終えたら結構おもしろかった、というのが率直な感想。

    ただ、この対談は昭和45年~46年くらいのもので、わたしが2、3歳の時期である。もちろんわたし自身、この頃の時代がどういうものだったのか、存在はしていたが、時代の雰囲気までは感じ取れない年齢で、だから新鮮味があった。

    司馬遼太郎を初め、ほとんどが既に鬼籍に入ってしまった人たちで「この人ら、このときはこのように言ってたけど、今の時代を過ごしていたらどんな感じだったろうな?」という気持ちがすごくする。ここ数十年間で日本は随分変わった、日本人も変わったんじゃないかと思うくらい、この本に出てくる「日本人」は違うと思う。ただ、時折「集団ヒステリー」を起こす、と書いてはあったが、まさか四六時中集団ヒステリーを起こす民族になってしまったとは想像できまい。

    あとは文明が進むとそれぞれの人が「小粒」になるのかなあという気がしないでもない。あの時代からわたしが大人になるくらいまではまだ大物がいたような気はするが、今の時代はそういう人物もあまり見当たらないものなあ。。ただ、それは「階級のない社会」であった証拠であるから、仕方のないところなのかも知れない。昔のような超エリート数人で国を動かしてもいいものかと思うと、やはりそうは思わないので。

    この対談の中で出て来た辻悟という精神科医の言葉が頭に残る。ただ、ネットでいろいろ調べてみたらこの言い分は「持論」らしい。

    「だから自分の属している集団の同質性であれ、歴史の中から自分のものとした安定性であれ、自分のよりどころとしているものに絶対的なものとして寄りかかってしまうのではなくて、相対的なものとして受け止める心を自分のものとしなければなりませんね。それは不安の多いものではありますけれども、そうでなければ人間の精神は閉ざされたものになってしまう。簡単に実現できるという保証もありませんし、終わりのない作業かもしりませんが、それが大事であるという心構えだけは最低限持ってなければならない。」

    それから、最後の今西錦司との対談が面白かった。

  • 下記12名との対談集

    梅棹忠夫
    犬養道子
    梅原猛
    向坊隆
    高坂正堯
    辻悟
    陳舜臣
    富士正晴
    桑原武夫
    貝塚茂樹
    山口瞳
    今西錦司

  • 昭和44年。司馬遼太郎が12人の識者との対談を通して、日本人の考え方を描きだす。40年経った現在、予見通りとなったものもあれば、全く異なる結果となったものもあり、対談の「答え合わせ」ができる点も興味深い。

  • 昭和40年〜50年ごろの日本を理解するにはもってこい。中国との付き合い方の対談もあり勉強になった。

  • 読了

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

司馬遼太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
司馬遼太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×