北方の原形 ロシアについて (文春文庫 し 1-58)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105587

作品紹介・あらすじ

巨大な隣国・ロシアを、いかに理解するか。歴史をつぶさに検証してロシアの本質に迫り、両国の未来を模索した評論集。読売文学賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • こんな時期だから読んでみた。ロシアを巨人の左腕と右腕に例えていた。そこに生きている人と牽制者はきっと違う。

  • ロシアに対する西側諸国からの視点が何だか上から目線で不快なので、司馬先生のフィルターで見るロシアを知りたくて。

    北欧系の海賊が先住スラヴ農民を支配して作られたロシア国家(キエフ公国)。その後モンゴル軍によって瓦礫の山となったモスクワやキエフの町々。その「タタールのくびき」によりヨーロッパのルネサンスから遮断され、未開人とされた歴史。シベリアにとっては首長がタタールからツァーリになったに過ぎず、農奴制(奴隷と言っても過言では無い)も相まって、ロシア帝国はタタールの支配体制を引き継いでいるように見えること。また、シベリア維持のため、日本へのコンタクトを切望していたこと。

    司馬先生の思い入れが強いモンゴルやシベリアの少数民族の話が挟まれ、多面的に(色々雑談というか脱線しつつ)野蛮で狡猾で残酷で、でも粗野ながら豊かで魅力あるロシアを描き出す。

    最新の国際情勢の本もいいけど、こういう眼差しも知っていたほうが楽しいし、こんな角度のロシア本は過去にも未来にも多分無い…唯一無二。
    (毛皮に固執して日本に相手にされない描写には笑えた)

  • ロシアの発展と隣国(モンゴル、中国、そして日本)との関係史について紐解いていく流れ。
    ロシアが、未知の世界を開拓したいとシベリアへ乗り出したことは自然な流れ。でもいわゆるこれが運の尽きか、手を出したことがきっかけで、隣国との関係が悪い方に動き出してしまったのかなと感じた。だからと言ってロシアを嫌うでもなく、あくまで歴史の流れに沿ってロシアという国を浮かび上がらせる書き方に感動した。むしろ大正〜昭和にかけ、ロシアに反発するように膨張してしまった日本を恥じているのも伝わる。
    最後に。読み終わった2023年、出版の1989年から30年以上経つのに今のことを話しているかのようなリアル感。芯をとらえた本は長生きだなあと感じた。

  • 時節柄、ロシアの本質に迫るような本を読みたいなと思って手に取った。

    副題の通り、ウラルより東の話が主なので、ウクライナの話は(クリミアの話が少々登場するする以外は)出てこないし、なんと言ってもまだソ連がある時の本なのだが、約二百年に渡るロシアと日本の外交関係を俯瞰するには大変な良書。

    1945年ヤルタ協定の僅か3条の内容が、1条モンゴルの現状維持(ソ連勢力圏)、3条千島列島のロシアへの引渡(2条は日露戦争による日本の権益のロシアへの返還)、で、北方領土返還が即、モンゴルの中国返還(清朝時代の版図を正とすれば)に繋がり得るため、中国が注視している、ということは全然知らなかった。

    パリの貴婦人が黒貂の毛皮を珍重しなければ、ロシアのシベリアへの進出の動機が無くなり、世界史が大きく変わっていたかもしれない、と考えると不思議な気持ちになる。

  • ロシアと中国とモンゴルとチンギス・ハーン。
    千島列島。
    ロシア人の気質の成り立ちが、地理的に歴史的に理解できました。
    この本は、高校時代に読みたかったです。

    今まで司馬遼太郎さんを敬遠していたこと反省しました。
    あらためて『坂の上の雲』を読みたいと思います。

    図書館で借りましたが、文庫本を購入しました。読み返したい本です。

  • 今この時期だから
    読んでおきたいな...
    と思っていたら
    偶然リユース文庫で入手

    そして
    ロシアの成り立ちについて
    対日関係の歴史について
    全く無知だった自分

    目から鱗がぼろぼろ

    読んで良かった一冊

    政治家がマストで読んで
    勉強してくれ
    と思う

    市のリユース文庫にて入手

  • ロシア関係の本を探していたら、高校生の頃にはまった司馬遼太郎氏が、ロシアについて考察した本を書いているのを見つけて驚きました。

    氏の解釈を踏まえながら丁寧にロシアについての考察を展開していて、興味深く読みました。そして、さすが作家だけあって読みやすい!

    出版年は古いですが、現状を理解するための本としてはまったくもって問題ないかと思います。

  • ロシア。ユーラシア大陸の多くの部分を占めるこの国の成り立ち、歴史。『菜の花の沖』『坂の上の雲』という二つの大作を書く中で司馬氏はロシアについて綿密な研究を行った。
    その成果をまとめたのがこの本。
    ロシア人は、長い間モンゴル人の支配下にあり、自前の国家を持ったのが非常に遅かった。独立後は東へ東へを領土をひたすら拡張。
    黒貂(こくてん・クロヒョウのこと?)の皮のもたらす莫大な利益を求めてシベリアを侵略。ユーラシアの東の果てに発見したのが日本という島国だった。その時日本は江戸時代であった。

    この本を読むと、ロシアというのは地理的に日本に非常に近いというのを改めて思い知らされる。そして、シベリアの大地ってどんなところなんだろう?とか、もともとシベリアに住んでいたブリヤード・モンゴル人をはじめとした原住民はどんな生活をしていたんだろう?とか、シベリア鉄道に乗ってみただとか、想像を膨らませる。

    狭い世界に生きながら
    少しは広い世界を覗くことができた気がする。

  • 「坂の上の雲」「菜の花の沖」を読んだ勢いでこの本も読みました。

    この1冊でロシアという国の成り立ちから現在までがよくわかります。

    作者がモンゴルに精通していることもあってか、モンゴルに関する記述も多いです。

    あと、北方領土とモンゴルの関連性など新鮮でした。

  • 本書時点ではソ連だったが、ロシアと読み替えて何ら不都合が無いのは、国家体制が変わっても、根っ子の部分は大して変わってないからだろう。そしてソ連の一部だったウクライナの独立が結局戦争を惹起し、そも侵略者ロシアとは何なのか、という問いを喚起している。ユーラシア全土に膨張したモンゴル帝国の一部、キプチャク汗国とロシア帝国との連続性は、執筆当時既に古い見解となっていたようだが、著者は皆無とは言い切れないとする。今日の情勢はそれを裏付けている、のかもしれない。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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