新装版 竜馬がゆく (5) (文春文庫) (文春文庫 し 1-71)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105716

作品紹介・あらすじ

池田屋ノ変、蛤御門ノ変と血なまぐさい事件が続き、時勢は急速に緊迫する。しかし幕府の屋台骨はゆるんだようにも見えない。まだ時期が早すぎるのだ…次々死んでゆく同志を想い、竜馬は暗涙にむせんだ。竜馬も窮迫した。心血を注いだ神戸海軍塾が幕府の手で解散させられてしまい、かれの壮大な計画も無に帰してしまった。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    長編だから仕方ないが、些か中弛みが・・・

    勿論、物語自体は面白い。
    ただ、個人的に坂本竜馬の「無敵のヒーロー感」がどうしても鼻についてしまう・・・笑
    何故そんなにも余裕があるのか、何故そこまで達観して物事を見抜く事ができるのか。
    坂本竜馬がこの時点ですでに無敵すぎて、もはや現実感がやや喪失しちゃっている気がしちゃう(笑)

    また、「おりょう」の人間性というか、自分勝手さが個人的にはかなり嫌いだな(笑)
    こんなウザイ女性のどこに竜馬は惹かれたの??
    おりょうとお登勢様、お田鶴様の掛け合いのシーンなんて、一切興味がないなぁ・・・・

    あと、これは決して嫌ではないのだけど、この時期の西郷隆盛のレベルが高すぎてヤバイ(笑)
    もはや神様クラス。
    それだけに、司馬遼太郎の作品でこの時期の西郷隆盛の人生全体にフォーカスした作品がないのが残念だなぁ。
    「翔ぶが如く」の西郷は、個の時期と比べてスッカリ腑抜けになってしまった西郷なので、物足りない・・・

    いちエンターテイメントとしては、「竜馬がゆく」よりも「龍馬伝」のほうが好きだな~。
    (清河八郎やお田鶴様など、主要人物がちょこちょこ抜けているのが玉にキズだけど)


    【あらすじ】
    池田屋ノ変、蛤御門ノ変と血なまぐさい事件が続き、時勢は急速に緊迫するが、幕府の屋台骨はゆるんだように見えない。
    つぎつぎ死んでゆく同志をおもい、竜馬は暗涙にむせぶ。
    そして、自身にも危機が迫る。心血を注いだ神戸海軍塾が幕府の手で解散させられてしまった。


    【引用】
    1.竜馬の眼さきは長くなった。いま、五尺の体一つが死んだところで何になるか。
    (わずか百や二百の浪士の手で、三百年の幕府が倒れるはずがない)
    成らぬことは成らぬ、と竜馬は思った。成るには時の勢いというものが要る。
    (今は、力を培養する時だ。その時機を辛抱できぬのは男ではない)

    2.維新(これあらた)
    池田屋の変の直前、熊本人の宮部。
    「詩経の項に維新(これあらた)なり、という言葉がある。維新回天の道はまだまだ遠い。我々が死に、次に誰かが死ぬ。
    坂本くんのごとき人は、それをまとめて完成させてくれる人だろう。まだまだ残しておくべき人物だ」

    3.外交能力のなさは日本人の欠点とされているが、古来の薩摩人に限っては、まるで異人種ではないかと思われるほど外交能力に満ちていた。
    薩摩藩の外交の最終目的は、まずここで幕府の力を借りて長州を討ち、それとは別に捕虜を優遇してのちに長州と手を握り、幕府を倒すときの布石をしておこうというのである。

    4.「命も要らず、名も要らず、官位も金も要らぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得らぬものなり」
    西郷の人物像はわからない
    西郷は「敬天愛人」という言葉を好んだが、これほど私心のない男はなかった。
    若い頃から「私心を除いて大事を成す」ということを自分の理想像とし、必死に自己を教育し、ついに中年にいたって殆どそれに近い人間ができた。


    【メモ】
    竜馬がゆく 5


    p52
    ・今は、力を培養する時だ。その時機を辛抱できぬのは男ではない
    海軍塾は、崩壊の危機にある。
    京都の志士連中がやってきて、古高俊太郎らの京都蜂起への参加を塾生に説いたのだ。
    ひと昔前の竜馬なら、一剣をひっつかんで京へ馳せ登っていたかもしれない。そういう快挙のためにこそ、国もとを脱藩してきたではないか。

    が、竜馬の眼さきは長くなった。
    いま、五尺の体一つが死んだところで何になるか。

    (わずか百や二百の浪士の手で、三百年の幕府が倒れるはずがない)
    成らぬことは成らぬ、と竜馬は思った。成るには時の勢いというものが要る。
    (今は、力を培養する時だ。その時機を辛抱できぬのは男ではない)


    p102
    ・維新(これあらた)
    池田屋の変の直前、熊本人の宮部。
    「北添くん。詩経の項に維新(これあらた)なり、という言葉がある。維新回天の道はまだまだ遠い。我々が死に、次に誰かが死ぬ。坂本くんのごとき人は、それをまとめて完成させてくれる人だろう。まだまだ残しておくべき人物だ」


    p209
    西郷は、長州嫌いの幕府や朝廷でさえ肝を冷やすほどの「長州撲滅論者」である。
    そのくせ、憎んでいない証拠に、蛤御門の戦いで獲た長州人を薩摩藩邸に収容し、客人をもてなすような優遇をして、密かに長州へ送り返している。

    外交能力のなさは日本人の欠点とされているが、古来の薩摩人に限っては、まるで異人種ではないかと思われるほど外交能力に満ちていた。
    薩摩藩の外交の最終目的は、まずここで幕府の力を借りて長州を討ち、それとは別に捕虜を優遇してのちに長州と手を握り、幕府を倒すときの布石をしておこうというのである。


    p265
    ・西郷の人物像はわからない
    西郷は「敬天愛人」という言葉を好んだが、これほど私心のない男はなかった。
    若い頃から「私心を除いて大事を成す」ということを自分の理想像とし、必死に自己を教育し、ついに中年にいたって殆どそれに近い人間ができた。

    天性によるだろうが、そういう鍛錬によって、異常なばかりに人を惹きつける人格が出来上がった。
    この異常な吸引力が彼の原動力となり、彼のためには命も要らぬという人間が群らがって集まり、それが大集団となり、ついには薩摩藩を動かして維新が完成した。

    「命も要らず、名も要らず、官位も金も要らぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得らぬものなり」

    • ハイジさん
      中だるみ感わかります!
      行き過ぎたヒーロー感が鼻につき、おりょうの良さがとうとう最後まで理解できず…(笑)
      あまりにも同感でついコメントして...
      中だるみ感わかります!
      行き過ぎたヒーロー感が鼻につき、おりょうの良さがとうとう最後まで理解できず…(笑)
      あまりにも同感でついコメントしてしまいました!
      2020/03/09
    • きのPさん
      ハイジさん
      いつもコメント有難うございます!(^^)

      作中で、「竜馬はいつも女性にお世話される側だから、逆に自分が世話役になれるおりょうに...
      ハイジさん
      いつもコメント有難うございます!(^^)

      作中で、「竜馬はいつも女性にお世話される側だから、逆に自分が世話役になれるおりょうに気がいった」という風な記述がありましたよね(^^)
      わからない気もしませんが、、、笑
      2020/03/10
  • 「古高俊太郎」とでてきた瞬間、その後の悲劇がばーっと頭を駆け巡って、胸が張り裂けそうになった。
    前巻同様、ぜんぶが今につながってると思うから、いろいろ切なくなるんだろうな。
    わたしのなかでは源平や戦国時代は完全に歴史だけど、幕末明治はまだまだ近代に近いのかもしれない。
    それにしても、お田鶴さまと おりょうの対面は蛇足でしょう。
    ロマンス要素も大事だけどさ。
    ちょっとでいいんだよ。

  • 全8巻の物語もここからが後半の折り返し。
    長州が半分、次いで薩摩、竜馬の話という感じ。
    長州が無念の大敗を喫し、血生臭さが増していく。
    竜馬は、勝海舟の神戸海軍塾の解散、西郷との出会いを経て、やがて会社の設立を思い描いていく。

    長州の池田屋ノ変など、重暗い話が続くなか、
    おりょうさんが個性を爆発させるエピソードが印象的で、菊の枕エピソードや、お田鶴さんとの女同士のバトルなど、閑話休題として面白かったです。

    いよいよ薩長同盟が近づいてきたかという感じで、
    次巻も楽しみです。

  • 池田屋事件、禁門の変を経て、長州の暴発は抑え込まれる。この激動の間でも、竜馬はより冷静に時勢を読み自分の志を揺るがさない。だがその意志とは裏腹に、神戸海軍塾は解散となり、竜馬の師である勝と一時の別れとなる。勝は幕臣でありながら、竜馬と西郷になら幕府を倒されても良いとまで言う。勝の天界から日本、世界を見下ろすような視野とそれを所以とした言動には驚かされるばかりだが、その勝にそこまで言わしめた竜馬と西郷も常人でなかったことがよく分かる。そして竜馬と西郷が勝の紹介により対面したのである。初対面の場で無邪気に鈴虫を捕る竜馬。一ヶ月後に竜馬が来る時も鈴虫がいるよう取り計らう西郷。大きな身体で偉大な歴史を残す二人と小さな鈴虫の対比の描写が可笑しかったが、西郷の言葉を借りると「大事をなすには無邪気で私心がないことが肝要じゃ。」と教えてくれる印象的な場面だった。この二人がいよいよ共に歴史を動かしていく。

  • ○あン人がこんど来たとき、貴方の虫ケラはもう居りもさぬ、というのは人間の信義にかかわりもそ(285p)

    ○金よりも大事なものに評判というものがある。世間で大仕事をなすのにこれほど大事なものはない。金なんぞは、評判のあるところに自然とあつまってくるさ(335p)

    ★西郷吉之助が出てきた

  • どんどん動いてきました。 この巻、前半は池田屋の変、そして、禁門の変。来島又兵衛。 そして、龍馬と西郷の会合。 でも、何と言っても、お登勢さんとお田鶴さま、、、。素敵です。

  • 長州は苦しい時代へ。薩長の関係を考えると、どうしてここから、あの幕末を迎えるのか、まったく謎です。まだ機が熟さないって、あと三巻しかないですよ!

  • 後半へ入る。
    竜馬も凄いけど、勝さん、そして西郷さん、なかなかすごい。
    池田屋事件から禁門の変と時代は大きく動く。
    この話読みながら、頭の中のイメージは基本は「龍馬伝」だが、池田屋事件は「新選組!」、禁門の変は「花燃ゆ」が出て来る。来島又兵衛は山下さんの顔しか浮かばんわ

  • 勝海舟、坂本竜馬、西郷隆盛が相見えて、かなり維新ムードが盛り上がってきた。
    この作品の前に「燃えよ剣」を読むまでは江戸末期の知識が殆ど無かったので、異なる立場から見た維新の雰囲気が面白い。
    次は長州視点の作品が読みたくなってきました。

  • 再読中。今巻はほぼ長州藩のターン。というか前半の主役はほぼ来島又兵衛。高杉晋作や中岡慎太郎も本格的に登場してくる。そして元治元年6月といえばもちろんあれです池田屋事件。土佐からも竜馬が可愛がっていた亀こと望月亀弥太や、北添佶磨らの犠牲者が出る。長州藩はついに暴発、禁門の変を引き起こし、多くの死者を出す。(余談ながらこの感想書いている今日は6月5日、池田屋事件の日)

    竜馬はこれらの事件に直接関係はしないが、海軍塾の浪士たちに参加者があったため海軍塾は閉鎖に追い込まれ、責任者である勝海舟も失脚。路頭に迷う塾生たちを救うため、竜馬は西郷に会い、薩摩藩の助力を求める。

    一方恋愛模様のほうは、竜馬を追ってきたおりょうさんと、長州へむかうお田鶴さまがガチンコ対決。結局竜馬がおりょうさんを選ぶことを知っている読者としては複雑ですが、やっぱり作中にもあるようにおりょうさんは同性からは嫌われるタイプだし、私もお田鶴さまの肩を持ちたい。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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