新装版 竜馬がゆく (6) (文春文庫) (文春文庫 し 1-72)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105723

作品紹介・あらすじ

幕府を倒すには薩摩と長州が力を合せれば可能であろう。しかし互いに憎悪しあっているこの両藩が手を組むとは誰も考えなかった。奇蹟を、一人の浪人が現出した。竜馬の決死の奔走によって、慶応二年一月、幕府の厳重な監視下にある京で、密かに薩長の軍事同盟は成った。維新への道はこの時、大きく未来に開かれたのである。

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    ついに倒幕の大きな推進力となる薩長同盟を実現させるに至った坂本竜馬。
    坂本竜馬ひとりの力で功が成ったとはさすがに言い過ぎだが、やはり坂本竜馬なしでは同盟の締結なんて無理だったんだろうな~

    温故知新というか、功を焦らず機が熟すまでじっくりと待つことの大切さ。
    あと、それぞれが持つ背景をきちんと捉えた上で、「理」だけでなく各々の「情」も汲んで事を進める点は、現在にも通じる交渉術だなぁと思いました。

    面白い本ではありますが、前巻同様で、おりょうとのラブストーリーの箇所が要らないなと個人的には思います(笑)


    【あらすじ】
    幕府を倒すには薩摩と長州が力を合せれば可能であろう。
    しかし互いに憎悪しあっているこの両藩が手を組むとは誰も考えなかった。
    奇蹟を、一人の浪人が現出した。

    竜馬の決死の奔走によって、慶応二年一月、幕府の厳重な監視下にある京で、密かに薩長の軍事同盟は成った。
    維新への道はこの時、大きく未来に開かれたのである。


    【メモ】
    竜馬がゆく 6



    p28★★
    西郷は沈黙した。竜馬が意外な情報通であることに驚いている。
    竜馬の特技といっていい。この若者は、物怖じもせずひとの家の客間に入り込む名人と言ってよかった。
    相手もまた、この若者に惹かれた。惹かれて、なんとかこの若者を育てたいと思い、知っている限りの事を話そうという衝動に駆られた。

    竜馬には、それをさせる独特の愛嬌があった。
    どんな無口な男でも、坂本竜馬という訪客の前では情熱的な雄弁家になる。
    竜馬は、異常な取材能力を持っており、それゆえに自然と抜群の国際外交通であった。


    p40
    竜馬の理想は、幕府を倒すということでは西郷と一致している。次の政体は天皇を中心にするというところでも一致している。
    しかし西郷の革命像は、天皇を中心とした諸藩主の合議制であり、その下には士農工商という階級がつく。

    その点、竜馬は違っている。
    一切の階級を雲散霧消させることであった。
    大名も、公卿も、武士も、一切の日本人を平等にするということであった。

    竜馬はにこにこ笑って言わない。言えば西郷に危険視される事を知っている。
    事実、西郷は明治になってから武士の廃止に反対する薩摩士族団にかつぎあげられて明治10年に西南戦争を引き起こした。


    p116
    「よく考えてみれば、この下関で西郷がきて君と握手し、いきなり薩長連合をとげる、というのははじめから無理さ。その無理を承知でサイコロをふったわけだが、思うような目が出なかった。
    世のことは偶然を期待してはいかん。桂君、君もそうやたらと腹を立てないほうがいい」

    薩長連合ひとつにしても、主義をもって手を握らせるのではなく、実利をもって握手させる。
    ひどく現実的な回天の方式なのである。

    「思想さえ高ければ、商人の真似をしても構わない。むしろ地球を動かしているのは、思想ではなくて経済だ」


    p214
    藤堂は近ごろ思想的に動揺していた。
    近藤・土方とともに新撰組を結成した結党以来の古参であるが、池田屋の変以来、新撰組が攘夷結社の性格を失い、純然たる幕府の走狗に成り果ててしまったことに激しい不満を感じている。
    また、新撰組幹部は近藤勇、土方歳三をはじめ、武州多摩地方の天然理心流の出身であり、創立以来の同志とはいえどこか近藤らは自分に他人行儀である。

    藤堂はすでに隊に新加入してきた千葉門の先輩らと共に脱退を決意していた。


    p219
    ・藤堂について
    「人の運命はわかりませんな」
    「それは違う。人の運命は、九割は自分の不明による罪だ。何にせよ、藤堂平助などは、今となっては道を引き返すわけにはゆくまい」


    p239
    桂というひとは、維新後になってからもこの粘っこい拗ね者の性格が直らなかった。
    革命家らしい理想家肌をもっていたため、維新後も自分の手でつくった政府に飽き足らず、絶望と不平と不満を蔵しつつ人に接し、ついにはその門を訪ねる人も少なくなった。


    p245
    ・薩長連合
    当時、薩長連合というのは、竜馬の独創的構想ではなく、すでに志士達のあいだで常識となっていた。
    「薩摩と長州が手を握れば幕府は倒れる」というのは誰しもが思った着想である。

    しかし所詮は机上の論で、冷戦時の「米国とソ連が握手すれば世界平和は今日にでも成る」という議論とやや似ている。

    竜馬という若者は、その難事を最終的には一人で担当した。
    すでに薩長は歩み寄っている。あとは感情の処理だけである。


    p417★★★
    長州人は、たった五百人の兵で上陸している。奇兵隊が主力だから、元々の武士ではない。町人、百姓の子弟である。
    それが半洋式化された小倉藩の武士団を押しまくっているのだ。逃げるのは、大名の家柄を誇ってきた小倉小笠原家の藩士である。

    「長州が勝っちょりますな」
    「いや、長州が勝っちょるのじゃない。町人と百姓が侍に勝っちょるんじゃ」
    たった今、竜馬の眼前で、平民が、長いあいだ支配階級であった武士を追い散らしているのてまある。

    「天皇のもと万民一階級」
    というのが竜馬の革命理念であった。
    平等と自由。言葉こそ知らなかったが、竜馬はその概念を強烈にもっていた。

    「あれが、俺の新しい日本の姿だ」
    竜馬は自分の理想を、実物をもってみなに教えた。
    竜馬の社中が掲げる理想が、単なる空想ではない証拠を眼前の風景は証拠だてつつある。

  • なんかすごいハイペースで読んでいる。
    本が面白いからなのか、ただ暇だからなのか。

    絵堂(えどう)の戦い(長州の内乱)で「開戦状」が出てきて、急に胸が洗われた。
    礼をつくすっていいよね。

    6巻のメインは薩長同盟。
    竜馬と桂の絡みがたくさんで、かなり好きな巻。
    愚痴る桂を、ひたすらなだめ おだてる仲人竜馬が面白い。
    「桂君、きみは天下がとれる」と大声でほめるところとか最高。
    強い人が愛嬌と誠意をもってたら、無敵な気がする。
    たとえ弱くてもそこそこ出世できるはず。
    事が成るかならぬかは それを言う人間によるって、まさにそれ。

    それにしても、おりょうさんをこんなに鬱陶しく感じるとは。
    寺田屋事件まではいい。
    嫁にしたのがいけない。

  • 再読中。いよいよ亀山社中が活躍、そして窮地の長州藩を救うため、竜馬は薩長同盟を画策、桂と西郷の仲を取り持ち奔走。ついに薩長同盟なるも、その晩竜馬が泊まる寺田屋が襲撃される。長州が竜馬につけた護衛・三吉慎蔵(好き)の働きと、高杉からもらった短筒、おりょうの機転で危地を脱した竜馬は薩摩藩に匿われる。

    ところで余談ですがこの寺田屋、私がまだ京都の実家にいた高校生の頃、部活の友人のお母さんが寺田屋で働いていたので、幕末好き数人連れだって見学させてもらったことがありました(※1980年代の話です)当時、旅館として営業していたかどうかは忘れましたが、観光客相手に数百円の入場料で見学できるようになっており、刀痕や弾痕、おりょうさんが飛び出してきたお風呂など、そのまま保存されているというのを見せてもらいました。

    さらに、第14代寺田屋伊助を名乗るおじいちゃんがいて、趣味で手相を見るので「見てもらい」と言われて見てもらったのですが、私の手のひらをしみじみみつめてそのおじいさんは「結婚線がない」とのたまいました(ガーン!)まあ新選組が好きーとか言って史跡めぐりしてるアホな女子高生のことですから、沖田総司に恋などしてるうちは結婚なんかでけへんやろとか思って適当言われただけだろうと思いあまり気にはしていなかったのですが。

    それから数十年、あるときふと思い出して寺田屋について検索してみたところ、なんと、実際の寺田屋は鳥羽伏見の戦いで消失しており、私が見学した寺田屋はずっと後になって(この竜馬がゆく連載後に人気にあやかって)跡地の近所に建てられた全くの偽ものであることが発覚。さらに私に結婚線がないとのたまった第14代寺田屋伊助なる人物も、寺田屋とは縁もゆかりもない赤の他人(ただの商売人)だったと。驚愕。

    比較的最近でも、まだあれが本物の史跡だと信じてしまっている人もいるみたいだし、数十年前は働いている従業員もまさか全部ウソとは知らなかったのだと思われますが、現在ではただの「当時を再現」した建物として公開されているようです。それにしても第14代寺田屋伊助、悪質だよなあ。そして悔しいことにこのとんだ詐欺師じじいに「結婚線がない」と言われた私は本当にいまだに独身だという・・・(複雑)

    閑話休題。危地を脱するも怪我の回復が思わしくない竜馬は西郷のすすめで薩摩へおりょうさんと新婚旅行、そして長崎へ。しかしワイルウェフ号の沈没で歴戦の志士・池内蔵太らは溺死、竜馬の留守中、長州や英国との商談を任されていた近藤長次郎は抜け駆け留学しようとしたのが仲間にバレ詰め腹を切らされる。

  • やはり本筋が霞んできましたなぁ、でもこれこそがこの作家を読むという意味でしょう。色々今までいちゃもん(?)つけてきましたが、こういうもんだと腹に落とせばokです。
    でも、他の作品でも既に説教(?)されている内容ゆえ、正直新鮮さは無いです。読んでいる順番の問題なんでしょう。

  • ちょっと時間かかったけど、第6巻読了。本巻の圧巻はやはり薩長同盟と伏見寺田屋でしょうか。寺田屋では良く生き延びましたね。この章は傑作です。 奇跡がこの先も続いて、竜馬がもっと長く生きたら歴史はどう動いたんでしょう? 高杉晋作も魅力的!

  • ◯よく考えてみれば、この下関で西郷がきて君と握手し、いきなり薩長連合をとげる、というのははじめからむりさ。その無理を承知でサイコロをふったわけだが、思うような目が出なかった。世のことは偶然を期待してはいかん。(116p)

    ◯生死などは取り立てて考えるほどのものではない。何をするかということだけだと思っている。(264p)

    ◯三吉君、逃げ路があるかないかということは天が考えることだ。おれたちはとにかく逃げることだけに専念すればいい。(284p)

    ★薩長連合成る。そして寺田屋事件を経ておりょうと一緒になる。ドラマチックな6巻であった。

    ★亀山社中で孤立したために無念の死を遂げた饅頭屋長次郎を教訓にしたい。

  • 7巻が読み終わって6巻を登録していなかったのに気づきました。6巻って、どんなだったかなあ。長編になると1巻前のお話も、昔のことのように思えます。読書とともに歴史を歩む醍醐味です。

  • 竜馬が本格的に動き出し、ついに薩長同盟を実現させる。改めてその凄さに敬服。そして寺田屋事件。よく知ってる話だが、よく死地を脱した。三吉慎蔵、大活躍! さらに薩摩への新婚旅行。これも知ってる話だが、改めて読むと面白い。
    いよいよ大詰めが近づいてくるのがちょっと淋しい

  • 薩長同盟の締結を間近に迎え、幕府の緊張感が高まっている中での竜馬の無謀ともいえる奔放な行動は、一歩間違えば日本の歴史が変わっていたかもと思うと結末が分かっていても注意してやりたくなる。
    運も実力のうちと言うけれど、偉大な業績を残す人には強運も必要条件であるんだなあと思う。

  • 刀では一人も殺さず、そして刀を抜くことさえしなくなり、新時代を象徴するような拳銃を手にした竜馬は、皮肉にもその拳銃で、初めて人を殺めた。
    とうとう竜馬が直接表舞台に立ちました。
    そしてその犠牲も今まで以上に大きなものが。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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