新装版 竜馬がゆく (8) (文春文庫) (文春文庫 し 1-74)

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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105747

感想・レビュー・書評

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  • 再読。武力倒幕一本の薩長に対し、複雑な立場の土佐藩側から竜馬の発案した「大政奉還」を実現するべく奔走する土佐の面々。薩摩、長州そして岩倉具視を説得した中岡慎太郎はさらに陸援隊を結成して浪士救済と同時に兵力増強を図る。

    しかし長崎で英国船イカルス号の水兵殺害事件が起こり海援隊に容疑が掛かる事件が勃発、英国公使と幕府の船が土佐へ乗り込んでくる前に、竜馬も急ぎ土佐へ。このあたり、少し前に再読したアーネスト・サトウの日記にも詳しかったけれど、実は海援隊は全くの冤罪でとんだとばっちり。大政奉還の大仕事前に足を引っ張られた竜馬は大変気の毒。竜馬不在のあいだは後藤象二郎のターン。近藤勇とのエピソードなども。

    それにしても司馬さんが上手いなあ、と思うのは、この終盤になってようやく、しかしラストシーンではなく何てことない場面(越前福井藩に三岡八郎=のちの由利公正に会いに出かけるくだり)で、さらりとタイトル「竜馬がゆく」を織り込んでくるところ。激情家のイメージの強い志士たちの中で、坂本竜馬という肩の力の抜けた風変りな人物でありながら、大仕事を成し遂げた男の凄味みたいなものを同時に表現していて素晴らしい。

    改めて読み直すと、思っていた以上に娯楽小説で、史実より物語としての面白さ重視であることに気づかされた。あまりにも面白くて(あまりにも竜馬が魅力的すぎて)これが本当の歴史だと誤解してしまうほどに。しかしいわゆる司馬史観というのはそういう創作部分を指すのではなく、たとえば幕末と比較して昭和の戦争の愚かさに憤ったりする、そういう余談の部分だと個人的には思っているので、要は読むほうの読解力の問題。面白い歴史小説を読んで歴史に興味を持つ、小説の役割はそれでいいと思う。

  • 大河ドラマで見てからずっと読もうとおもい、結局5年越しに読み始めた。

    ちょうど自分が28歳、龍馬が大政奉還を世に謳うまでの年と比べてみたら、あと3年だと気づいた。あと3年で自分は何ができるのか、歴史を楽しむだけではなくて、龍馬という男と自分という男を比べて、自分を奮い立たせてくれる本でした。

  • ☆は5つ!

    最終巻だというのに、作者はどうにも土佐びいきのようで甚だ平等感に欠ける。竜馬本人以外のことはもうここまで来たらどうでもいいような気がするのに。司馬遼先生、一生懸命に取材旅行などするうちに土皿鉢料のファンにでもなってしまったのだろうか。気になるので今度『・・・街道を行く』シリーズに探りを入れてみよう。『土佐街道を行く』って有ったかなぁ。ま、いっか。

    さて司馬遼『竜馬がゆく』。思えばなんとも宴会場面の多い小説であった。剣を交えて戦っているより、お酒を飲んで宴を張っている場面の方が圧倒的に多かった。
    聞けば作家という生業は偉くなると出版社の編集長や担当編集者達と銀座界隈で宴会をするのがその習性になると言うが、司馬遼先生もそおであったのだろうな。いやこれは坂本竜馬とは直接関係はないがこの小説のキモであると思ってしまったのでつい書いた。すまぬ。

    しかし、竜馬最後の場面を描く最終の何枚かは、心が打ち震えるものがある。やはり名作である。

  • 遂に大政奉還が成った。薩摩や長州が倒幕戦をしようとしている中で、竜馬だけが無血革命の方針を打ち立て、成功させた。大政奉還が成された後、慶喜の心中を思い、「この公のためには一命を捨てん」と言ったその言葉が竜馬らしいと思った。対立していた相手のことを理解するなんてなかなかできることではない。
    また、ここまで事を成し遂げ、維新後の構想を明確に持っていたのは竜馬ぐらいだったにもかかわらず、第一線からは退き、政治には参加せず、世界の海援隊をやると言った竜馬の生き方はやっぱりかっこいい。ただ、これから自分の好きなことがやれるというときに暗殺されたのが残念でならない。

  • 読了。すごく面白かったけど、司馬遼太郎が書く坂本竜馬がスーパーマン過ぎてあまりのめり込めなかった。

  • 「世に生を得るは、事をなすにあり」
    坂本龍馬の口にしたこの言葉通りに生きた生涯であったと、追体験ができた。
    竜馬という自分の道をひたすら貫き生き続けた人生に感動した。

  • 読み切った…達成と喪失!!!

    大学後期から読み始めて終わる一日前に読了。
    私の大学1回生後期の思い出となりました〜!!!

    ていうか、わたしも大政奉還したい
    大事なしとげたくねえ〜!!!?

  • 全8巻に及ぶ大長編小説を読み切ったのは、初めて。
    維新史の奇跡こと、坂本権平弟竜馬の自由奔放さ、快活さ、思想的鋭さ、先進さなどあらゆる感覚が、書き出されていた。
    あっぱれ!司馬遼太郎!!

  • 龍馬の底抜けに明るい性格と、生きとし生けるものへの限りない優しさに感動した。
    龍馬の発想力の根底にあるものは、もちろん人々への愛もあるけれども、“その時代における正しさ”ではなく、“時代を超えた普遍的な正しさとは何か”を求めたところにあるのではないかと思う。
    最後、龍馬が天に帰るシーンは、まさしくそうであったろうと思わせるほど真に迫っている。
    当時も立派な方はたくさんいるけれども、彼ほどさわやかな人生と呼べる一生を生きた偉人も珍しいのではないだろうか。

  • 人間のもっている魅力が、歴史にどのように参加してゆくものか。
    さらに、そういう竜馬の人間像が、どのようにしてできあがってゆき、周りのひとはそれをどのように見たか。

    それを司馬遼太郎は描きたくて、この小説を書いたようだが、まさに竜馬の人間像や背景がありありと描かれている。

    竜馬の現実主義的な考え方や、経済感覚の由来、またその思想が政治にもたらす画期的な発想。

    問題や課題を抽象的に解釈しながら、建前ではなく現実主義的な発想を持って、解決に至るところはとても現代的なビジネス小説としても読める。

    私が感じる坂本竜馬の魅力としてはそういった仕事人であったことにあるように思う。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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