新装版 坂の上の雲 (4) (文春文庫) (文春文庫 し 1-79)

著者 :
  • 文藝春秋
3.95
  • (583)
  • (515)
  • (601)
  • (22)
  • (10)
本棚登録 : 5630
感想 : 286
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105792

作品紹介・あらすじ

明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。豊富な兵力を持つ大国に挑んだ、戦費もろくに調達できぬ小国…。少将秋山好古の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。また連合艦隊の参謀・少佐真之も堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。緒戦から予断を許さない状況が現出した。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 戦争禍において無能な上司の下に配属されることほど悔やまれる事はないとわかる。また派閥に基づく人事も碌でもない。令和の今となってもその悪しき習慣はある。残念すぎる。

    無能無策な上に頑迷で、多くの日本兵を殺すことになった乃木という人間の描写が耐えられなかった。が、どうにか読み切った。次号に期待。

  • ・3巻の終わり方からして、本巻のメインになると思った東郷平八郎が全然出てこない。

    ・その代わり、本巻のメインとなっているのは旅順の乃木軍、とりわけ参謀長伊地知幸介の無能さと頑迷さ。何度焦ったく思ったかわからない。とてももどかしく、やるせない。
    cf. 「事実、旅順攻略の乃木軍の様子がこれ以上悪化すれば、日本の陸海軍作戦は総崩れになり、日本国そのものがほろびるであろう。日本の存亡のかぎが、もっとも愚劣でもっとも頑迷な二人の頭脳ににぎられているというのが、この状況下での実情であった。」(p. 405)

    ・日本が経験した対外戦争4つのうち3つは知らないけれど、少なくとも日露戦争においては日本の存亡がかかっていた。
    戦争や平和関連の本だと、教育上の目的から、戦争の悲惨さを伝えたり「二度と戦争はしたくない」という感想を導き出すような、「使われた側の兵士」や市民の目線で書かれた話が多いと思う。だが、このような「戦争を考えて動かしていた側」の止むに止まれぬ事情を知るのもとても重要なことだと実感した。私は平和を追求したいし戦争はしたくないが、なぜ戦争をせねばならなかったのか、するしかないという状況になったのかを知らずに、今後どう戦争を防ぐというのか、平和を追求するのか、今までの自分の無知を知った。

    ・人物が多くて久々の登場シーンで記憶が朧げになってしまっているのが惜しかった。
    時系列や人物(活躍や性格など)や地名のまとめをしたら、膨大な量になりそうだがとても楽しそうだ。

    ・本巻は今までの4巻の中で最も切羽詰まっていて、先が気になってどんどん読み進めた。
    日本をギリギリのところで守ってくれた明治の先人に大変感謝している。
    私は自主的にロシア語を勉強しているけれど、先人の奮闘がなければ今頃ロシア語を強制されて日本語を話していなかったかもしれないと思う。

    ・ところどころで日露の比較、農耕と遊牧の比較、薩長と閥外の比較、陸軍と海軍の比較、そして明治(日露戦争)と昭和(太平洋戦争)の比較が含まれていて、洞察が深まった。

    ・ところで、「ロシア側の記録によれば…」というのは、司馬さんがまさかキリル文字から情報収集したということだろうか?
    (より想像しやすいのは、キリル文字の一次文献を日本語に書き下ろしたニ次文献が先にあって、それを司馬さんが参照したのだろうか)

    ・戦争は世界規模で動いていることを実感した。例えば、ロシアに侵されてきたユダヤ人が日本の財政を助けてくれたり、英国の漁船を誤って猛攻撃したバルチック艦隊が国際社会の批難を浴びたり。

  • ▼日露戦争開戦。司馬さんは戦争が好きだ。ちょっと言い方が雑だけれど、司馬さんは戦争の細部や人間臭さが好きであろう。司馬さんは人間の明るさとか賢さとか合理性とか機能性とか合目的性とかが好きだし、そういうリーダーに率いられる人間の集団について、汲めども尽きない興味を持っておられる。▼そういうわけで、機械好きの子供がラジオを解体して仕組みを発見して喜び、そしてまた組み立てるように、司馬さんなりに明治日本と日露戦争を解体して検証しておられる。そして、司馬さんのような意では多くの人が戦争が好きであろう。「ガンダム」だって「銀河英雄伝説」だって「大河ドラマ」だって同じくでしょう。戦争が好きなのは男子が多いと思われる。自分もその意では、好きである。

  • 薩摩長州ばかりが、大日本帝国の中枢にいたんだなあ〜って読みながら腹が立ってきてしまう。
    陸の長州、海の薩摩だって!!

  • 黄海海戦の緊迫感、遼陽会戦、沙河会戦での際どい戦い。バルチック艦隊のイギリス漁船攻撃。旅順攻略でのあまりに酷い乃木希典、伊佐知幸介の指揮による尋常ではない被害とそれを変えられなかった日本軍。色んなドラマが凝縮された4巻でした。

  • 日本史としてしか知り得ていなかった日露戦争。
    その結果と背景しか知らなかったが、そのプロセスにはここまでも凄惨な生々しい戦争が繰り広げられていたとは。また、その上に自分たちの生活があることをありありと感じさせられる。
    日本人として読むべき一冊。

  • バルチック艦隊が、日本艦隊を恐れるあまり英国の漁船を日本軍と見誤って襲撃してしまう事件はいたたまれない。
    一つの戦争には数えきれない事由、国家的事情や背景などが複雑に絡み合い、勝敗などと言う結果だけでは説明のつかないものなのであると痛感する。

  • 1巻から読んできたが、4巻が一番面白かった。

    海軍→黄海海鮮
    陸軍→遼陽、沙河、旅順要塞総攻撃


    ユダヤ人との繋がり、下瀬火薬、
    バルチック艦隊が英国漁船を誤って攻撃した話など、知らなかった事実を知れた。

    といっても、戦場は悲惨。


    食料や弾薬不足、合理性のない命令、失敗を学ばない総攻撃で何万人の兵が死んでいく。 
    司馬さんの乃木・伊地知への批判が続く。


    これだけ読むと、日露戦争で勝てたのは
    日本が強かったから、だけではなく

    ロシア側が日本をアジアの小国だとなめかかっていたこと、上に立つ者の性格や思慮の浅さや独特な官僚世界の秩序など、かなり運が良かった部分もあるのではないかと感じた。
    武力や勢力だけで真っ当にいくと、完全に負けていただろう。

    また東郷平八郎、大山巌などの総大将としての在り方は
    (部下の士気を高め、動揺を決して部下に見せてない、敗北心理を持たせない、など)
    なるほどと思うところがあった。









  • 大学2年または3年の時、同期から「読んだこともないの?」と言われてくやしくて読んだ。
    長くかかったことだけを覚えている。
    文庫本は実家にあるか、売却した。
    そして2009年のNHKドラマの数年前にまた入手して読んだ。
    秋山好古・真之、正岡子規について、初期など部分的に爽快感はあるが、とにかく二百三高地の長く暗い場面の印象が強い。
    読むのにとても時間がかかった。
    その後3回目を読んだ。
    バルチック艦隊の軌跡など勉強になる点はある。なお現職の同僚が、バルチック艦隊を見つけて通報した者の子孫であることを知った。
    いずれまた読んでみようと思う。(2021.9.7)
    ※売却済み

  • 日露戦争 中盤
    陸軍→遼陽、沙河、旅順要塞攻撃
    海軍→黄海海戦

    常にハラハラしながら読んでた。日露戦争って勝利した煌びやかな歴史のみ語られがちだが、そんなに簡単に言い表せるものでもない。
    また、組織統率者の重要性、部下に与える影響を教えられた一冊。

全286件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

司馬遼太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×