新装版 坂の上の雲 (4) (文春文庫) (文春文庫 し 1-79)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105792

作品紹介・あらすじ

明治三十七年二月、日露は戦端を開いた。豊富な兵力を持つ大国に挑んだ、戦費もろくに調達できぬ小国…。少将秋山好古の属する第二軍は遼東半島に上陸した直後から、苦戦の連続であった。また連合艦隊の参謀・少佐真之も堅い砲台群でよろわれた旅順港に潜む敵艦隊に苦慮を重ねる。緒戦から予断を許さない状況が現出した。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争禍において無能な上司の下に配属されることほど悔やまれる事はないとわかる。また派閥に基づく人事も碌でもない。令和の今となってもその悪しき習慣はある。残念すぎる。

    無能無策な上に頑迷で、多くの日本兵を殺すことになった乃木という人間の描写が耐えられなかった。が、どうにか読み切った。次号に期待。

  • ・3巻の終わり方からして、本巻のメインになると思った東郷平八郎が全然出てこない。

    ・その代わり、本巻のメインとなっているのは旅順の乃木軍、とりわけ参謀長伊地知幸介の無能さと頑迷さ。何度焦ったく思ったかわからない。とてももどかしく、やるせない。
    cf. 「事実、旅順攻略の乃木軍の様子がこれ以上悪化すれば、日本の陸海軍作戦は総崩れになり、日本国そのものがほろびるであろう。日本の存亡のかぎが、もっとも愚劣でもっとも頑迷な二人の頭脳ににぎられているというのが、この状況下での実情であった。」(p. 405)

    ・日本が経験した対外戦争4つのうち3つは知らないけれど、少なくとも日露戦争においては日本の存亡がかかっていた。
    戦争や平和関連の本だと、教育上の目的から、戦争の悲惨さを伝えたり「二度と戦争はしたくない」という感想を導き出すような、「使われた側の兵士」や市民の目線で書かれた話が多いと思う。だが、このような「戦争を考えて動かしていた側」の止むに止まれぬ事情を知るのもとても重要なことだと実感した。私は平和を追求したいし戦争はしたくないが、なぜ戦争をせねばならなかったのか、するしかないという状況になったのかを知らずに、今後どう戦争を防ぐというのか、平和を追求するのか、今までの自分の無知を知った。

    ・人物が多くて久々の登場シーンで記憶が朧げになってしまっているのが惜しかった。
    時系列や人物(活躍や性格など)や地名のまとめをしたら、膨大な量になりそうだがとても楽しそうだ。

    ・本巻は今までの4巻の中で最も切羽詰まっていて、先が気になってどんどん読み進めた。
    日本をギリギリのところで守ってくれた明治の先人に大変感謝している。
    私は自主的にロシア語を勉強しているけれど、先人の奮闘がなければ今頃ロシア語を強制されて日本語を話していなかったかもしれないと思う。

    ・ところどころで日露の比較、農耕と遊牧の比較、薩長と閥外の比較、陸軍と海軍の比較、そして明治(日露戦争)と昭和(太平洋戦争)の比較が含まれていて、洞察が深まった。

    ・ところで、「ロシア側の記録によれば…」というのは、司馬さんがまさかキリル文字から情報収集したということだろうか?
    (より想像しやすいのは、キリル文字の一次文献を日本語に書き下ろしたニ次文献が先にあって、それを司馬さんが参照したのだろうか)

    ・戦争は世界規模で動いていることを実感した。例えば、ロシアに侵されてきたユダヤ人が日本の財政を助けてくれたり、英国の漁船を誤って猛攻撃したバルチック艦隊が国際社会の批難を浴びたり。

  • ▼日露戦争開戦。司馬さんは戦争が好きだ。ちょっと言い方が雑だけれど、司馬さんは戦争の細部や人間臭さが好きであろう。司馬さんは人間の明るさとか賢さとか合理性とか機能性とか合目的性とかが好きだし、そういうリーダーに率いられる人間の集団について、汲めども尽きない興味を持っておられる。▼そういうわけで、機械好きの子供がラジオを解体して仕組みを発見して喜び、そしてまた組み立てるように、司馬さんなりに明治日本と日露戦争を解体して検証しておられる。そして、司馬さんのような意では多くの人が戦争が好きであろう。「ガンダム」だって「銀河英雄伝説」だって「大河ドラマ」だって同じくでしょう。戦争が好きなのは男子が多いと思われる。自分もその意では、好きである。

  • 薩摩長州ばかりが、大日本帝国の中枢にいたんだなあ〜って読みながら腹が立ってきてしまう。
    陸の長州、海の薩摩だって!!

  • 黄海海戦の緊迫感、遼陽会戦、沙河会戦での際どい戦い。バルチック艦隊のイギリス漁船攻撃。旅順攻略でのあまりに酷い乃木希典、伊佐知幸介の指揮による尋常ではない被害とそれを変えられなかった日本軍。色んなドラマが凝縮された4巻でした。

  • 日本史としてしか知り得ていなかった日露戦争。
    その結果と背景しか知らなかったが、そのプロセスにはここまでも凄惨な生々しい戦争が繰り広げられていたとは。また、その上に自分たちの生活があることをありありと感じさせられる。
    日本人として読むべき一冊。

  • バルチック艦隊が、日本艦隊を恐れるあまり英国の漁船を日本軍と見誤って襲撃してしまう事件はいたたまれない。
    一つの戦争には数えきれない事由、国家的事情や背景などが複雑に絡み合い、勝敗などと言う結果だけでは説明のつかないものなのであると痛感する。

  • 1巻から読んできたが、4巻が一番面白かった。

    海軍→黄海海鮮
    陸軍→遼陽、沙河、旅順要塞総攻撃


    ユダヤ人との繋がり、下瀬火薬、
    バルチック艦隊が英国漁船を誤って攻撃した話など、知らなかった事実を知れた。

    といっても、戦場は悲惨。


    食料や弾薬不足、合理性のない命令、失敗を学ばない総攻撃で何万人の兵が死んでいく。 
    司馬さんの乃木・伊地知への批判が続く。


    これだけ読むと、日露戦争で勝てたのは
    日本が強かったから、だけではなく

    ロシア側が日本をアジアの小国だとなめかかっていたこと、上に立つ者の性格や思慮の浅さや独特な官僚世界の秩序など、かなり運が良かった部分もあるのではないかと感じた。
    武力や勢力だけで真っ当にいくと、完全に負けていただろう。

    また東郷平八郎、大山巌などの総大将としての在り方は
    (部下の士気を高め、動揺を決して部下に見せてない、敗北心理を持たせない、など)
    なるほどと思うところがあった。









  • 大学2年または3年の時、同期から「読んだこともないの?」と言われてくやしくて読んだ。
    長くかかったことだけを覚えている。
    文庫本は実家にあるか、売却した。
    そして2009年のNHKドラマの数年前にまた入手して読んだ。
    秋山好古・真之、正岡子規について、初期など部分的に爽快感はあるが、とにかく二百三高地の長く暗い場面の印象が強い。
    読むのにとても時間がかかった。
    その後3回目を読んだ。
    バルチック艦隊の軌跡など勉強になる点はある。なお現職の同僚が、バルチック艦隊を見つけて通報した者の子孫であることを知った。
    いずれまた読んでみようと思う。(2021.9.7)
    ※売却済み

  • 日露戦争 中盤
    陸軍→遼陽、沙河、旅順要塞攻撃
    海軍→黄海海戦

    常にハラハラしながら読んでた。日露戦争って勝利した煌びやかな歴史のみ語られがちだが、そんなに簡単に言い表せるものでもない。
    また、組織統率者の重要性、部下に与える影響を教えられた一冊。

  • 海軍による黄海での一大決戦から始まり、陸軍の遼陽・沙河・旅順大戦までが記されている。教科書ではほんの数行で説明されてしまう日露戦争の、悲劇的で薄氷を踏む戦いがありありと描かれており、怒り・悲しみと言ったあらゆる感情が胸の内から湧き上がってきた。

    司馬の偏見も入ってるとは思うが、それにしても乃木・伊知地コンビは酷い。

  • 司馬遼太郎さんの本で一番好きな本。
    日本人であることに誇りが持てる。

  • 司馬遼太郎による、乃木希典への酷評が続く。
    一人の人間からの意見しかわからないが、これを読む限り相当やばい。

  • 最高。冗長な部分は確かにあれど、日本人必読の書。

  • 日露戦争開戦。

    日本・ロシア双方に将軍の器のない人物が指揮を執ってしまい多数の死者を出していく。

    戦記なのに少しおかしみを感じてしまうのは不謹慎か。

  • この巻では日本、ロシア双方の馬鹿さ加減が分かる。ただまったく笑えない、リアルな人間像を描いている。

  • ユダヤ人と乃木希典を中心に描かれている。

    ユダヤ人は迫害された歴史から、迫害にあがらうべく、敵の敵を応援することで自らを守ろうとする。

    乃木希典は、優秀な参謀に恵まれないと、全て敗北することを教えてくれる。今の自分の仕事でも思うが、人材配置こそが勝ち戦のための重要なファクターだと思う。

    農牧民族の日本には、自然の摂理に従うことを生業としていたことから有能無能がないため、狩猟民族に劣るし、考え方も違うというのはそうだなあと思う。

    一小国のロシアが強いのは、軍を持っているからというのはなるほど。軍なくして、強国にはなれない。

  • どうも長い。勧める人は多いけど。全体で2冊ぐらいになりそうな。

  • 近代戦争を初めて経験する日本は、あらゆる面で後手後手に回ってしまう。
    中でも物資不足は、深刻だった。
    初めての近代戦争に臨むにあたって見通しが甘かった。
    お金が無い中での開戦。
    正に綱渡りの戦争であった。
    そして、度々、議論がある司馬遼太郎による『乃木希典愚将説』
    名将か愚将かは、各個人それぞれに考え方があると思う。
    だから、司馬遼太郎が乃木希典は愚将だと思うならそれはそれで、いいのではないだろうか。

  • 日露戦争の描写がえぐくなっていく。。。だよね、そう描かないといけないんだよねと。戦争は、悲惨で、とても騎馬戦のようなもんじゃない、体が木っ端みじんになって死んだり、腕や足がもげたり、体が縦に割れて死ぬ、大量の人間が死ぬ世界。それぞれに、親が必ずいて、人によっては、子もいただろうに・・・
    戦艦対戦艦じゃない、大砲の数や火薬の強さでもない、悲惨さ。見ようとしなければ、見なくていい部分が戦争にはあるんだなということがわかる。

    そして、旅順攻略において指揮をとった乃木とその参謀に対して、相当の紙幅を使って、これでもかと痛罵している。

    色々な立ち位置、見方ができると思うが、指揮系統の混乱、現場から離れた所で指揮、戦術的な検討の不備、相手に予測された定期的な攻撃、多数の死者、戦争の悲惨さへの筆者の怒りが巻末に向けて増していっていることを感じた。

    乃木については、wikiなどで調べると違う側面がある事も分かる。多数の死者を出した事への悔恨もあったようだが、自死によって幕を閉じた人生は、否定したい。





  •  旅順攻撃が中心となる4巻

     印象的なのは旅順攻撃の際の日本軍のグダグダっぷり。

     旅順の要塞に無策の正面突破を繰り返し、多くの兵士たちを犬死にさせながらも、攻撃方法や作戦を一向に変えようとしない、大将の乃木とその参謀、伊地知の頑迷さ、無策っぷりに呆れかえりました。

     そして彼らの更迭案を何度も出しながらそれを実行できない大本営にも読んでいてイライラ。こういう上層部のグダグダや無理解で被害を被るのは現場の人間、この場合は兵士たちなのですが……。太平洋戦争の際もそうですが、いつの時代も日本軍は兵士たちを駒としてしか見ていなかったのかもしれないなあ、と思いました。

     ロシア軍も日本海軍に恐れをなして、イギリスの漁船を間違って攻撃してしまうという、とんでもない失態をしてしまう場面が描かれます。

     戦争という極度の責任や恐怖がのしかかる局面になると、その人の本当の姿が表れてくると思います。そしてそれが大将だとか将軍だとか、責任のある立場になるとなおさらそうです。

     乃木・伊地知やイギリス漁船を攻撃してしまったロジェストヴェンスキー提督は、そうした状況の中で周囲の状況が見えなくなったり、冷静な判断が出来なくなった人間の姿だと思います。その姿は愚かと言ってしまえばそうなのですが、そうした状況下で冷静な判断が出来なくなってしまう人の哀しさ、というものも少し感じてしまいました。

     また日露戦争を続ける上での海外からの資金援助に苦労する日本軍の上層部や、人種問題から日本に援助するユダヤ人の存在など日本が対外的にいろいろ動いている姿も印象的でした。

     そして資金援助を得るために戦争の結果を海外にアピールしたり、人種問題の存在を実際に肌で感じたりと、日本が海外に出ていく中で新たな価値観にぶつかっていく姿も読んでいて面白かったです。

     こういうのは教科書では全然教えてくれないところなので、こういう裏側的なところが読めるのが歴史小説のいいところだよなあ、と改めて思いました。

  • 3巻と比較して、戦況に大きな変化がなかったためか、人間味のある話題が少なかったためかわかりませんが、極端に読むスピードが遅くなりました。6日かかりました。

  • 司令官 乃木希典は尊敬する人物だったのに日露戦争でこんなにも無能だったと初めて知った。
    参謀長 伊地知幸介はさらに輪をかけた人物。

    無能であることをわかりながら交代させない大本営は無責任。
    人命の尊厳さを無視している愚かな人々。

    絶対服従するしかない兵士にとって上層部がどんな方針をたてるかがいかに大事か。

    陸軍は太平洋戦争でも同じ過ちを犯した。
    学習していない。

  • 4作目。
    主に日露戦争の話。
    非常に興味深く、いかに激戦であったかが伝わってきた。
    続きが早く読みたい。

  • いよいよ本格的に日露戦争に突入。最初から最後まで戦場でのおはなし。司馬さんの視点は比較的マクロ的かつ上から(将校)のものであるため下士官を単なるコマとしてしか扱ってないように少しかんじた。実際そうでもしなければ耐えきれないほどの内容であるとは思う。コマとして描いているだけでも十分に悲惨さは伝わってきた。
    今回は陸軍についての記述が特に多いのだが、陸軍編成や地形を知らない自分にとって読むのは今までよりかなり骨が折れた。
    また、例の司馬史観の一つといわれる乃木さんに関する批判的な記述が大半を今回は占めていた。実際によんでみると乃木司令官に対してはフォローをたびたび行っているがその参謀長伊地知に対してはいっさいのフォローがなく批判的であった。彼ら二人が主だって行っていた旅順攻めに対する戦闘の記述が最も激しく悲惨さが感じ取られた。
    そしてその中においても下士官達は逆らう事なく命令に従った(100%死ぬ事がわかっていても)明治軍人たちの心というものが今からすれば異様なものにしか感じ取る事ができなかった。
    その中でロシアを含めたリーダーの葛藤というものも描かれていた。
    命と士気が天秤にかけられていたのが印象的だった。

  • 日露戦、黄海海戦、旅順の攻防など。著者の旅順戦に対する参謀伊地知へのこれでもかという批判はややくどいという感を持つ。

  • 日露開戦初期、両国の総司令官および各級司令官を丁寧に対比している章。

  • 黄海、遼陽、沙阿、そして旅順。激戦に次ぐ激戦。物資が枯渇する中生命をふりしぼって多くの兵士が大陸に倒れていく。どんどん辛くなってきました第4巻。それにしても旅順の乃木隊には苛立つ。平和時であれば無能は罪悪にはならないが、戦時や緊急の場では罪悪であり害悪であることが強く感じられます。今現在の無能な政府を思い返さずにはいられません。すぐれた小説は多くを学ばせてくれるものです。

  • 国の明暗を決めるトップの決断の重さと、その決断に従って任務を全うする兵隊の勇敢さ。一方では自分の立場ばかり気にする官僚。自分は前者のような志高い人間になりたい。

  • ひたすら日露戦争のお話。
    日本の陸軍の旧態依然さにところどころイラッとしてしまうし、
    秋山兄弟はあまり出てこないし・・・
    考えさせられはするけれど楽しんで読んではいなかったと思う。
    戦争はいやだな。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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