新装版 坂の上の雲 (7) (文春文庫) (文春文庫 し 1-82)

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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105822

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  • 奉天会戦で薄氷を踏むかの如き勝利を得た日本であるが、それは日本軍の善戦もさることながら、露軍側、特にクロパトキンの稚拙な戦術眼、官僚的保身によるものであった。

    バルチック艦隊はベトナム沖で第三艦隊との合流のため漂泊を続け、これまでと同様、船員の士気と体力を奪っていた。一方、日本側ではバルチック艦隊の航路が太平洋側からまわるのか、対馬海峡を通るのかの議論で秋山真之と第絵本営は右往左往するも、東郷平八郎は対馬で一点張りをしていた。この一貫した態度が、東郷の以後の名声をより高めたと言われているらしい。そして、哨戒艦信濃より有名な「我敵艦見ユ」との通信が入る。いよいよ、日本海海戦というところで本巻は終わる。

  • 指揮官の能力不足は救えないが、追い込まれたときの判断能力低下もある。

  • 日露戦争の地上戦はいよいよ大詰めの奉天会戦。戦力で圧倒するロシア軍だが、総指揮官クロパトキンは石橋を叩いても叩いても渡らない臆病な男。彼は日本軍の戦力を過剰に見積もり、無意味な退却を指示するだけだった。一方、海上のバルチック艦隊長ロジェストヴェンスキーは情報を独占し、周囲の意見も聴かないし、軍事会議も開かない。自分は死なないという根拠なき自身が彼を増長させる。

    日本が日露戦争を勝利できたのは、このロシア陸海軍のトップ2人の無能さと、上司からの命令は絶対とするロシア官僚制度のおかげだ。

    それはともかく、ついに舞台は日本海海戦へ。バルチック艦隊がやってくるのは対馬海峡か、太平洋周りか。日本軍、政府の意見が交錯する中、日本の連合艦隊司令官、東郷平八郎はズバリ言う。「それは、対馬海峡よ」。

    ロジェストヴェンスキーと同じく根拠なき自信なのだが、あまりに説得力があるのは2人の器の違いなのか、作者の表現力なのか、読者には結果がわかっているせいなのか。次巻ではこの両国の艦隊長の違いが勝敗を決定づけるんだろう。

  • 奉天会戦と講和の画策、バルチック艦隊との戦いまでが描かれています。
    大将には大将の器が必要だと感じる内容でした。
    クロパトキンは敵の実情を正確に捉えることができず、ありもしない幻想により不安で押しつぶされました。
    ロジェストヴェンスキーは己の才能を過信しているという点で大将の器でないことは明らかです。
    秋山真之でさえもバルチック艦隊の進路について、己の選択が戦況を著しく変えてしまう緊張に押し潰され、正しい選択ができなくなっていました。

    東郷のような大将になるには、相手(敵)の立場になって考えることが最も必要だと感じました。

  • だいぶ終わりに近付いてきましたが
    なかなか日本の完全勝利というものが無く
    全てが薄氷の上での勝利で特に今回の奉天会戦については
    ロシア軍がわざと負けたのではないかというほど
    日本にとって明るい展開がありませんでした。

    おそらくこの物語のクライマックスと思われる日本海会戦は
    圧倒的な勝利として大団円を迎えるのだとは思うのですが
    この巻の終盤はそこへ向けての布石が段々と描かれてきて
    次巻以降への期待を高めてくれました。

  • 奉天での会戦からバルチック艦隊が日本海ち差し掛かるまでの7巻。クロパトキンの愚策により日本か辛勝する描写は克明で説得力がある。数々の幸運が今日の日本を救ったのであり、そうでなければロシアに取り込まれたであろうことを考えると感謝の念にかられる。
    バルチック艦隊のロジェストウェンスキーがいよいよ到来し期待が高まる最終巻。

  • 陸戦もいよいよ大詰めに。
    日本軍の強さではなく、ロシア軍の、しかもたった1人の将校の精神的弱さによって薄氷を踏む勝利があったとは知りませんでした。
    これから始まる海戦も同じような雰囲気を感じます。

  • 2017/08/01

  • 2017.04.22読了。

  • 奉天会戦~日本海海戦直前

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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