新装版 坂の上の雲 (8) (文春文庫) (文春文庫 し 1-83)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105839

作品紹介・あらすじ

本日天気晴朗ナレドモ浪高シ-明治三十八年五月二十七日早朝、日本海の濛気の中にロシア帝国の威信をかけたバルチック大艦隊がついにその姿を現わした。国家の命運を背負って戦艦三笠を先頭に迎撃に向かう連合艦隊。大海戦の火蓋が今切られようとしている。感動の完結篇。巻末に「あとがき集」他を収む。

感想・レビュー・書評

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  • 明治を描く一大叙事詩にして不朽の名作。ドラマ化も原作に忠実になされています。日露戦争をめぐる秋山兄弟と正岡子規の青春群像としての側面もあります。「竜馬がゆく」とともに若い頃に出会えて本当によかったと思える作品です。
    下らない身の上話になりますが、家系図によると、私の先祖が装甲巡洋艦の日進に乗艦していたそうです。本作の訓練の様子やロシア艦隊との激戦の最中にいたと思うと想像が膨らみます。とにかく司馬遼太郎が調べに調べ尽くして描いているので臨場感がまるで違います。
    戦艦の形から何型のロシア艦かを見分けたり、波の荒い日本海で弾薬を節約しながら訓練したりする場面にこんなことしてたんだと感慨もしきりです。
    同じ艦に若き日の山本五十六も乗っており、どっかで会ってるのかなとか東郷平八郎や秋山真之を遠目から見てたのかなとか、楽しみながら読めました。
    自分のルーツをたどると何かしら歴史上の出来事にブッキングしておりそこが歴史ずきになった一因でもあります。
    確かにその時代を生きた人々の足音が聞こえてくるようでした。

  • 日露戦争は日本の勝利と知っていたが、この本を読む事によって多くの両国の犠牲があった上でのことだと再認識させられる。

    最後の章の、真之が子規庵に行った場面は海上での戦いとのコントラストを強く感じた。他愛ない日常も、戦争のもとでの日々も同じ人間の生活の一部なんだと思った。

  • ▼エンタメと考えれば、この小説は(日露戦争は)いろいろあっても最後が日本海海戦で圧勝して終わるので、溜飲が下げられて素晴らしい。その、苦しい辛い中で最後スッキリというヤクザ映画的な語り口がこれまた上手い。海戦でも、まずは三笠が被弾しまくる描写も延々とやる。その次にロシア側の(日本軍と比べ物にならない)被弾を描く。そういう順番構成とか。上手い。

    ▼一つ勘違いしていたことがあって。ポーツマスの和平のあとで、日比谷焼き討ち事件がある。つまり民衆が「より戦争を、戦果を」と暴動を起こした。その戦慄の描写があって。そして、日本海海戦の完勝、その成果であるポーツマス条約。だがその中から昭和の戦争と完敗に向けた胎動が始まっている…というドロドロした思いが湧き上がって終わる。・・・と思っていたら、間違っていて、全然その描写は無かった。恐らく、同じ司馬遼太郎さんの「明治という国家」か、「昭和という国家」か、あるいは吉村昭さんの「ポーツマスの旗」か、どれかと記憶が混同していました。

    ▼今、個人的な興味関心で、「第一次世界大戦とは」というテーマに向けた読書の旅を続けていて、実は「明治日本と帝国主義先行国家とのせめぎあい」を畫いた坂の上の雲は、このテーマの流れとしてもとても良かった。

  • 東郷平八郎、秋山真之の日本海軍対ロジェストウェンスキー率いるバルチック艦隊の闘い。ここでロシアを殲滅しないと敗戦確定のため、考えに考えを重ねた七段構えの海軍戦術で、ロシアを迎え撃つ。
    対馬を通るか、太平洋を回るか。。戦術家達は気が滅入る中、最後には運の良いリーダー・東郷の判断を信じて対馬で待ち伏せ。キターーー!!ロシアキマシタヨーー!!

    勝負、ここ一番というときは、最終的には運だって。ほんとね。人事を尽くして天命を待とう。なかなか尽くしきれないんだけどね。もっとできたんじゃないかなぁ、と思ってしまううちは、まだダメだ。

    戦争の良し悪しは別として、この時代の軍人たちは格好良い。文明開化後、あっという間に近代化した時代。皆勉強熱心で情熱的、無駄な装飾は好まず真実を求める。言語ってそれを使う民族の特徴がにじみ出ているものだと思う。司馬さんの引用文を見ると、曖昧で断定を避ける今の時代に比べて、明治時代の文章はまだ少し漢文調が残っていて、すっきり男性的。恐らく民族性にも似たような傾向があったんだろうな。すっかり巻角さえないような羊になってしまった私は、明治時代の人々の力強さをとても尊敬した。甘えんぼダメね。

    休み休み、長い時間をかけて読んできたけど、とうとう終わってしまった。今月中に多磨霊園だ。

  • 【全八巻の感想】
    日露戦争史を通して国家とは、民族とは、日本人とは何かを深く掘り下げ追及している。
    この戦勝こそが以降の日本軍を迷走させ、日本国を窮地に追い込んだ。
    明治維新以降、西欧の帝国主義を模倣し、「国家」という概念を急速に醸成せざるを得なかった事情が我が国の精神と肉体とのあいだに巨大な齟齬を産んでしまったということが描かれている。
    この作品は事実を小説化する限界と言っていいだろう。日本人に、また日本という国に関わるすべての人々にこの作品を強く勧めたいと思った。

  • 歴史に残る大海戦。敵前回頭という大胆な作戦。訓練不足や不適切と思われるロジェストウェンスキー提督の指揮の数々。手に汗握る最終巻でした。

  • 旅順が肝でした。
    戦争的にも作戦的にも、読み進めるモチベーション的にも(苦笑)

    曠野戦の陰惨さに、ページを繰る手がどうしても止まってしまい、とうとう中断まで(しかも長め)。
    それを乗り越えての読了なので、感慨もひとしおです。

    曠野に比べて海の上の爽やかなことといったら!

    バルチック艦隊のターンを心待ちにするほどでした。
    ふつうにロジェストウェンスキー提督のファンになりましたし。

    日本海海戦を迎えたときは感無量なのと同時に、寂しさもない交ぜでした。
    ああ、長かった物語が終わる…と。

    後半はロ提督を楽しみに読みましたが、前半は子規。
    彼と真之の交友シーンはすべてよかったです。

    この本のおかげで、今まで敬遠していた近代史に目覚めました。
    「翔ぶが如く」も近いうちに読みたい。

  • 侵略をもくろむ「悪の帝国」との戦いという正義を胸にいだき、外国との戦いの中で、一般の日本人が自分が国家の国民であるとの強い自覚をいだいた日露戦争の時代。信じられないような貧窮と、負ければ国が滅ぶというのっぴきならない事態でありながらも、自らの行動に一転の曇りも感じない、すがすがしくこれほど迷いがない理想を人々が生きることができた時代、そんな歴史の中の特異な一時代を鮮やかに切り取って読ませてくれた。日露戦争の30年後、太平洋戦争という大いなる錯誤を犯すことになったわれわれ日本人の教訓を、この物語で描かれる「不思議な勝ち」から学ぶこともできるが、私は本作から端的に味わったことは、その時に持てる力のすべてを一点に注力し数々の難局へ立ち向かった人々の姿だ。仕事でへばりそうになった時、「やれることをやるしかないではないか」という彼らの姿にどれほど勇気を与えられたことかわからない。彼らの勇気と強さの源泉こそが「迷いなく理想を生きる」という、そこにあったのだと思うのだ。

  • ノンフィクションに限りなく近い。プロットよりも作者の歴史観や人物評がめっぽう面白い。物語後半の戦争シーンになると、具体的情景がイメージできず辛い。

  • 坂の上の雲の最終巻。

    完全勝利と言って良いバルチック艦隊との戦いを描く。
    しかし、その勝利は日本軍の強さのみではなく、突き詰めるとロシアの政体自体の問題でさえあった。

    これらをわかりやすく、かつスピーディーに描き切っており、読了後の満腹感がすごい。

    なぜか勝利したものの、手放しに喜べない戦争の切なさも感じた。
    歴史好きの方にはぜひ読んでいただきたい一冊。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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