- Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167105846
感想・レビュー・書評
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今回は、「神道」「鉄」「宋学(儒教)」について、連続して突っ込んだ内容が綴られる。なるほどとうなずけるとこと、そういうことなのかと気づかされる。中国・朝鮮が儒教の中の朱子学により形骸化された思想に陥り近代化に遅れ、朱子学には中途半端だった日本が近代化に成功するという対比は、このシリーズの中での通奏低音となっているようだ。
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この巻では、神道について、もしくはそのほか日本における宗教について丁寧に描かれている。
自分の身の周りにある、お寺と神社の違いなど、何となく日常で疑問に思っていたことや、生活習慣の中に溶けていた様々なことがらを、朧げながら時系列に沿って体系的に理解することができた。 -
この巻では、「神道」、「鉄」について多くが書かれている。
古のこの国の人々は、自分たちが生きていく、また生活していく上で「自分たちを生かしてくれるもの」、即ち、大地や空、山や川、海などの自然こそが最も尊い存在である事実を感じ、奉って来たのだろう。
神道は、その思想を興した者を崇めるわけでなく、また本尊といった物なども無い。
自分たちを生かしてくれる自然、そして、その自然が実らせる豊かさこそ、唯一崇高なものだということなのだろうか。
そして、「鉄」であるが、「鉄」が出現したこと、精錬技術の向上が、生活と文化、農や工などの労働に対しても、大きな進歩の一役を担ったことは言うまでもない。 -
色々な…自然だったりタイミングだったり…それはもう一言では言い表せない事柄がつなぎ合わさって、歴史がある。
教科書の歴史ってのは、ものすっごく薄切り状態なんだけれど、興味を持つきっかけになればいいと思う。あとは自分次第でどんどん本を読んでいったり、大学を目指してみたり。
この年齢まで読んでいなかったこと、この年齢でようやく読んだこと、何かあるのだと思っている。 -
著者の文藝春秋連載エッセーの第5巻。1994~1995。
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神道、鉄、宋学など、日本人の精神の土台形成に大きな影響を与えた事柄に対する司馬の解説。指摘の通り、神道には教義もなく、元々は社殿もない。山や岩、古木などが自然と畏敬の対象となり、清められてきた。だから、何々をしなければならないなどという教義はないという。これはすんなり理解できる。お天道様はいつも見ている、お天道様はありがたいという精神性は、いろいろなものに通ずると思う。
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神道や宋学についてまとめて書いてある。なので思想というものについて考えさせられた。
宋学は宋の時代漢民族が自分は文明人(華)で、北方の異民族(蛮)に圧倒されて屈折した気分を何とか晴らしたいと考えだされた考えだったようだ。ものの考え方としては悪くはないだろう。どうせ考えるのなら気分が良くなるように考えたらいいと思うからだ。しかし、実態に合わない考え方をすると虚しい空論になる。頭の中だけが満足して生活は苦しくなる一方だから、当然滅びる。
思想というものは気分から始まるのかもしれない。生きづらいと感じている気分をどうにかこうにか「いやこれでいいじゃないか!」にひっくり返すためになされる大変な営為なのではなかろうか。しかも、現実認識がなければその殻の中に閉じこもり窒息して滅びるであろう。時に暴発して大犯罪を犯すものも出るかもしれない。だから危険思想というものもある。
気分を言葉にし、それを抽象化して概念を創造し、精緻に組み立てて体系化する。ご苦労なことである。こんなことができるとしたらその人は余程のエネルギーをその身のうちに蔵していなければなるまい。まず凡人には無理である。まぁ、万が一そんな心血を注いだ思想が完成したとして、その思想がその当人以外に当てはまるかどうか、役に立つのかどうかはわからない。たまたま多くの人が同じ苦しみを抱えていて、その思想によって気分が晴れる場合にのみ流行するのであろう。
そして、流行した思想は往々にして権力者に利用される。多くの民の脳に刷り込まれ、しかも、都合のいいように若干の修正が施されて有効な支配の道具となる。いやいや権力者ばかりではない。革命にも利用されるのだから、気をつけないと誰のものかもわからない考えで凡人は操られる結果になることが多い。気をつけよう。
鉄についてもまとめて書かれていた。もののけ姫を思い出して興味深かった。
Mahalo -
神道の話。教義も偶像もない。宗教というよりかは、文化なのか。だからこそ、神道は、こと挙げぬこそ相応しいのだろう。
朱子学という型を大事にする空論は、やがて、太平洋戦争にも。
朝鮮の日本への見方。夷としてみているのだろう。
昭和は、やはり突然変異だったのだろう。なぜ、合理主義を失ったのか?
日露戦争で勝利し、反省しなかったからか。 -
巻末の「人間の魅力」が小気味いい。