新装版 翔ぶが如く (2) (文春文庫) (文春文庫 し 1-95)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (378ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105952

作品紹介・あらすじ

西郷隆盛と大久保利通-ともに薩摩に生をうけ、維新の立役者となり、そして今や新政府の領袖である二人は、年来の友誼を捨て、征韓論をめぐり、鋭く対立した。西郷=征韓論派、大久保=反征韓論派の激突は、政府を崩壊させ、日本中を大混乱におとしいれた。事態の収拾を誤ることがあれば、この国は一気に滅ぶであろう…。

感想・レビュー・書評

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  • 征韓論成るや成らざるや。議論が沸騰する政界の描写に引き込まれていく。自分が現場にいて人物を目撃しているような立体的描写はスタイリッシュかつ精緻だ。虚々実々の駆け引きと対照的な西郷の態度。複雑怪奇なやりとりは、司馬遼太郎というフィルターを通すと知恵として現れる。やはり司馬作品は最高だ。

  • 【あらすじ】
    西郷隆盛と大久保利通―ともに薩摩に生をうけ、維新の立役者となり、そして今や新政府の領袖である二人は、年来の友誼を捨て、征韓論をめぐり、鋭く対立した。
    西郷=征韓論派、大久保=反征韓論派の激突は、政府を崩壊させ、日本中を大混乱におとしいれた。
    事態の収拾を誤ることがあれば、この国は一気に滅ぶであろう…。


    【内容まとめ】
    1.もはや西郷vs大久保の一騎打ち。誰も間に入れない。
    2.公卿はこの2人の前では無能
    3.明治初期の時代、薩摩隼人がヤバすぎる。能力が高すぎる


    【感想】
    この時代において、薩摩隼人の影響力の高さは半端がない。
    そしてその勇ましさはもはや野人。怖すぎる・・・

    そして、桐野利秋や島津久光のせいなど色んな説や理由があるだろうが、維新後の西郷隆盛の没落っぷりは見るに堪えないな・・・
    幕末のあの素晴らしさは一体ドコにいってしまったのか。
    大御所だからか、大久保以外は直接物を申せないところもキツイな。
    西郷は決してそうではないが、やはりトップになると周りの影響でこうも愚鈍になってしまうのだろう。

    自分がトップになることは中々ないと思うが、このようにならずに常に周りが見えないといけないと思った。


    【引用】
    p70
    西郷の金銭観に触れておくと、彼は若い頃に郡方の下っ端の書記をしていただけに算盤が達者で暗算も上手だった。
    京都での奔走当時も藩費を使った場合は必ず算盤を入れ、残金を明瞭にしておいた。
    しかし自分の俸給となると、全部散じてしまうというところがあったし、勘定もしなかった。


    p206
    この男は、天寿を全うするなどはまったく考えていない。
    幕末、ずいぶん人を斬ったかわりに俺もどこかで死ぬと覚悟していた。
    桐野は、「自分は死ぬべき時と場所に死ぬことができぬやつだ。」
    「西郷老人のみが自分に死所をみつけてくれる。」と言っていた。


    p212
    大久保について、触れる。
    要するに彼の道楽は、国家を改造するというその仕事以外になかったと言っていい。


    p217
    大久保は大地にしがみついても参議になぞなるまいと肚を決めていた。
    なって廟堂(びょうどう)に登った場合、西郷と血みどろの戦いになることが分かっていたし、島津久光の勢力を敵に回す事も明らかであった。しかも勝つ見込みは僅かしかない。
    たとえ勝っても、西郷配下の桐野らがクーデターを決行して自分を殺し、あくまでもその策を貫くだろうと思っていた。
    桜田門外の井伊直弼の二の舞ではないか。


    p248
    薩摩にあっては、侍が侍がましくなるには二つのことだけが必要だとされていた。
    死ぬべき時に死ぬ事と、敵に対しては人間としてのいたわりや優しさを持ちつつも、闘争に至ればこれをあくまでも倒す。
    たとえ無学であっても薩摩では少しも不名誉にはならない。
    爽やかな人格でないという事が、薩摩にあっては極端な不名誉なのである。

  • 新書よりは小説だけど、相変わらずほとんど解説。
    千絵の章は小説ぽかったけど、逆にどうした? と戸惑った。
    大政奉還や薩長同盟と比べて、征韓論にまったく魅力を感じないので、彼らの奔走(読書じたいも含む)が割に合わないのがツラい。
    一番手っ取り早い西郷暗殺案は、全く出なかったのだろうか。

  • ※2007or2008年購入
     2008.2.28読書開始
     2008.3.8読了
     2017.5.6売却@Book Off

  • 明治維新がかなり異常だったという

  • 第二巻は西郷の渡韓を阻止せんとする伊藤らの暗躍が描かれる。戦争の非現実性や、戦争によって貿易の利益を損なう列強の思惑もあり、征韓論支持派は不支持派に包囲されていく。長州や土佐の人間が現代人的な思考や行動をする一方、西郷など薩摩の人たちはかなり封建的というか、時代に取り残されてしまったかのような印象を受けた。海外視察組が外から日本を見て、世界の中で日本の針路を考えていたのに対し、征韓論派は世界情勢を把握する点で甘いところがあったのかもしれない。

  • 西郷隆盛の征韓論を軸に渦巻く人間模様が丁寧に描かれており、まるでその時代にいるかのような気持ちになる。

    ここからの展開が楽しみになる二巻であった。

  • 沸々と湧き上がる西郷の感情か臨場感持って入ってくる。ドラマティックになってきた。

  • 西郷は向島の小梅村でよく猟をしと。夜になると越後屋の別荘に泊まった238

  • 「尊王攘夷」のスローガンで始まった筈の倒幕運動から、明治維新が為ってみたら、幕末からの開国方針が何も変わっていないという、この歴史の流れが、長らく釈然としなかったのだが、これを読んで、漸く腑に落ちたというか――当時の士族達も釈然としなくて、だからあちこちで士族の反乱が起きて、最終的に西南戦争に至ったのね、と。しかし、旧支配層の武士は既得権益を取り上げられ、庶民は税金やら兵役やら負担が激増した、この明治維新という大改革が、よく破綻・瓦解しなかったものだという、新たな疑問が湧いてきた。

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著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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