新装版 翔ぶが如く (5) (文春文庫) (文春文庫 し 1-98)
- 文藝春秋 (2002年4月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167105983
作品紹介・あらすじ
征台の気運が高まる明治七年、大久保利通は政府内の反対を押し切り清国へ渡る。実権を握る李鴻章を故意に無視して北京へ入った大久保は、五十日に及ぶ滞在の末、ついに平和的解決の糸口をつかむ。一方西郷従道率いる三千人の征台部隊は清との戦闘開始を待ち望んでいた。大久保の処置は兵士達の失望と不満を生む。
感想・レビュー・書評
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【感想】
西郷や反乱分子達への義理だて、ストレスのハケぐちの為とも思われる征台論を行なわざるを得なかったのか?
溜まりつつある大久保への不満は、彼にとっても辛い毎日だったに違いない。
ただ、、、読んでいる自分からすると、この靴の上から足を掻くようなこの物語の進捗に歯がゆい気持ちでいっぱいだな!笑
早いとこ、大久保vs西郷でドンチャンし始めないかと思ってしまう。。。
【あらすじ】
征台の気運が高まる明治七年、大久保利通は政府内の反対を押し切り清国へ渡る。
実権を握る李鴻章を故意に無視して北京へ入った大久保は、五十日に及ぶ滞在の末、ついに平和的解決の糸口をつかむ。
一方、西郷従道率いる三千人の征台部隊は清との戦闘開始を待ち望んでいた。
大久保の処置は兵士達の失望と不満を生む。
【引用】
大久保の北京における作戦の骨子は、英国公使に対しては儀礼のみであしらい、実は堀を設けて他人行儀でいる。
一方英国以外の各国公使に対してはできるだけ好み(よしみ)を厚くし、彼らの応援を得ようとするところにあった。
英国公使ウェードにとっては、これほど嫌な相手はなかったに違いない。
p129
大久保はもう一度、この談判を浮上させなければならない。
彼は若い頃から、何度か万策尽きたところへ自分が追い込まれるという体験を重ねてきた。
その時は、息を潜めて沈黙するか、それとも破れかぶれの一手に出れば自分の取り巻く状況の一角が崩れ、何とか道が通ずるということを知るようになった。
p145
・征台論に対する大久保について
客観的にみれば大久保の粘着力を非凡とみるべきだが、しかし戦争によって外交の新局面を拓こうという西郷たち好戦派からみれば、大久保のこの態度は国辱的な生温さであるといえる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
台湾出兵で、大久保の好感度が急上昇。
自分で蒔いた種とはいえ、まさか自ら北京に乗り込んで刈り取ってくるとは思いもしなかった。
李鴻章を完全に無視した強硬姿勢と、米仏独露に近づくことでイギリスを焦らせる駆け引きには、恐れ入った。
最終的にあの北京政府を折れさせ、償金まで出させるんだから、呆気を通り越して失笑。 -
征台の交渉にいよいよ大久保が臨む。下交渉は不調を極め、英米からは非難される。濃き出したばかりの明治政府が数々の不備が明らかになるなか、談判を成功に導く大久保の才幹が光る。明治八年、日本は近代国家としての体をなしていない。藩閥に風穴を開けたいもの、民権運動で政府に相対するもの。どうしようもないほどの衝動は共感できる部分がかなりあった。人間っていまも昔も変わらないと思えた。時代の変化の中で登場人物たちの考え方も大きく変わっていく。そんなダイナミズム溢れた巻であった。
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前半は日清間の外交交渉が主に描かれる。5巻は大久保メインで西郷はほとんど登場しない。清国のプライドの高さは今も昔も同じ。西郷の征韓論をつぶした大久保が奇しくも同様の外征策にうってでることになる。後半はルソーに感化された壮士たちが、新聞社や学校を根城にして反政府組織になっていく過程が描かれていく。江戸幕府を倒して、とりあえず作ってみました的な太政官政府の不安定さ、少しの刺激でくずれてしまうような危なげな感じがよく描かれていると思った。新しい国を作るというのはこんな感じなのか。
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※2008.6.5購入
2008.6.12読書開始
2008.7.13読了
2017.5.6売却@Book Off -
大久保の交渉力、というか気合いというか力技ですね。
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大久保利通が北京に談判に行くところから宮崎八郎が評論新聞社に入社するまでの第5巻。相変わらず進行が遅く娯楽読み物というより歴史教科書といった体です。
前半の大久保外交は交渉力が凄いですね。ことを優位にすすめるには多弁にならず我慢する駆け引きも大事なのかな。胆力がかなり必要で常人には出来かねるでしょうけど。
宮崎八郎の話は余談かと思って読み進めるとルソーの民役論と中江兆民に繋がるのでもはや新展開の様相で、西郷隆盛は出番なし。
専制政治、共和制政治、元老院、三権分立と、終盤は政治の勉強モードとなりしんどく感じられたが、読後感は知的好奇心を満たして悪くないです。 -
在野の不平分子を考慮した事実上大義のない征台を実施する。
しかし撤兵するためには、この征台を義のあったものと清国側に認めさせ、しかも派兵のための賠償金を清国側から出させるという力技をもってして外交に臨んだ大久保は、ある程度満足のいくかたちで終結させた。力技を建前上だけでも成功裡に導いた執拗さと周到さは見事といってよいだろう。
この明治がはじまって十年と経たない頃は、果たして維新の本来の目的は何だったのだろうかとも思わせられる時代だ。
国家が大きく動こうとするとき、大きく進歩しようとするときの舵取りは後の時代になってみないと正解は分からないのかも知れない。いや、もしかすると後の時代になっても分からないのかも知れない。