新装版 翔ぶが如く (5) (文春文庫) (文春文庫 し 1-98)

著者 :
  • 文藝春秋
3.73
  • (99)
  • (135)
  • (181)
  • (13)
  • (2)
本棚登録 : 1308
感想 : 68
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167105983

作品紹介・あらすじ

征台の気運が高まる明治七年、大久保利通は政府内の反対を押し切り清国へ渡る。実権を握る李鴻章を故意に無視して北京へ入った大久保は、五十日に及ぶ滞在の末、ついに平和的解決の糸口をつかむ。一方西郷従道率いる三千人の征台部隊は清との戦闘開始を待ち望んでいた。大久保の処置は兵士達の失望と不満を生む。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 【感想】
    西郷や反乱分子達への義理だて、ストレスのハケぐちの為とも思われる征台論を行なわざるを得なかったのか?
    溜まりつつある大久保への不満は、彼にとっても辛い毎日だったに違いない。
    ただ、、、読んでいる自分からすると、この靴の上から足を掻くようなこの物語の進捗に歯がゆい気持ちでいっぱいだな!笑
    早いとこ、大久保vs西郷でドンチャンし始めないかと思ってしまう。。。


    【あらすじ】
    征台の気運が高まる明治七年、大久保利通は政府内の反対を押し切り清国へ渡る。
    実権を握る李鴻章を故意に無視して北京へ入った大久保は、五十日に及ぶ滞在の末、ついに平和的解決の糸口をつかむ。
    一方、西郷従道率いる三千人の征台部隊は清との戦闘開始を待ち望んでいた。
    大久保の処置は兵士達の失望と不満を生む。


    【引用】
    大久保の北京における作戦の骨子は、英国公使に対しては儀礼のみであしらい、実は堀を設けて他人行儀でいる。
    一方英国以外の各国公使に対してはできるだけ好み(よしみ)を厚くし、彼らの応援を得ようとするところにあった。
    英国公使ウェードにとっては、これほど嫌な相手はなかったに違いない。


    p129
    大久保はもう一度、この談判を浮上させなければならない。
    彼は若い頃から、何度か万策尽きたところへ自分が追い込まれるという体験を重ねてきた。
    その時は、息を潜めて沈黙するか、それとも破れかぶれの一手に出れば自分の取り巻く状況の一角が崩れ、何とか道が通ずるということを知るようになった。


    p145
    ・征台論に対する大久保について
    客観的にみれば大久保の粘着力を非凡とみるべきだが、しかし戦争によって外交の新局面を拓こうという西郷たち好戦派からみれば、大久保のこの態度は国辱的な生温さであるといえる。

  • 台湾出兵で、大久保の好感度が急上昇。
    自分で蒔いた種とはいえ、まさか自ら北京に乗り込んで刈り取ってくるとは思いもしなかった。
    李鴻章を完全に無視した強硬姿勢と、米仏独露に近づくことでイギリスを焦らせる駆け引きには、恐れ入った。
    最終的にあの北京政府を折れさせ、償金まで出させるんだから、呆気を通り越して失笑。

  • 征台の交渉にいよいよ大久保が臨む。下交渉は不調を極め、英米からは非難される。濃き出したばかりの明治政府が数々の不備が明らかになるなか、談判を成功に導く大久保の才幹が光る。明治八年、日本は近代国家としての体をなしていない。藩閥に風穴を開けたいもの、民権運動で政府に相対するもの。どうしようもないほどの衝動は共感できる部分がかなりあった。人間っていまも昔も変わらないと思えた。時代の変化の中で登場人物たちの考え方も大きく変わっていく。そんなダイナミズム溢れた巻であった。

  • 前半は日清間の外交交渉が主に描かれる。5巻は大久保メインで西郷はほとんど登場しない。清国のプライドの高さは今も昔も同じ。西郷の征韓論をつぶした大久保が奇しくも同様の外征策にうってでることになる。後半はルソーに感化された壮士たちが、新聞社や学校を根城にして反政府組織になっていく過程が描かれていく。江戸幕府を倒して、とりあえず作ってみました的な太政官政府の不安定さ、少しの刺激でくずれてしまうような危なげな感じがよく描かれていると思った。新しい国を作るというのはこんな感じなのか。

  • ※2008.6.5購入
     2008.6.12読書開始
     2008.7.13読了
     2017.5.6売却@Book Off

  • 長編小説もようやく折り返し。

    台湾出兵の事後交渉のため大久保利通が直々に清国に繰り出す。強引ながらうまく落としどころへ持っていく手腕はさすが。特に琉球を日本領と認めさせたところが凄い。これがなかったら、今の沖縄県は中国になっていたのかも。

    終盤では宮崎八郎も動きだし、いよいよ西南戦争に向かっていく気配。

  • 大久保の交渉力、というか気合いというか力技ですね。

  • 大久保利通が北京に談判に行くところから宮崎八郎が評論新聞社に入社するまでの第5巻。相変わらず進行が遅く娯楽読み物というより歴史教科書といった体です。
    前半の大久保外交は交渉力が凄いですね。ことを優位にすすめるには多弁にならず我慢する駆け引きも大事なのかな。胆力がかなり必要で常人には出来かねるでしょうけど。
    宮崎八郎の話は余談かと思って読み進めるとルソーの民役論と中江兆民に繋がるのでもはや新展開の様相で、西郷隆盛は出番なし。
    専制政治、共和制政治、元老院、三権分立と、終盤は政治の勉強モードとなりしんどく感じられたが、読後感は知的好奇心を満たして悪くないです。

  • 一部のノリの良い下級武士出身者がフィーリングで運営していた明治政府がいかにテキトーであったかがわかる本。

    一例を挙げると、各地に贅を尽くした高そうなお庭を作りまくった長州の山縣有朋さんは、やっぱり汚職しまくってるし、権力主義の成りあがりだったっぽい。

    この巻は、西郷隆盛さんが征韓論で下野したあとに不平士族を慰安すべく台湾に乗り出した顛末記でした。

    なので、西郷さんは全然出てきません。
    メインは大久保利通さんの巻でした。

    西郷隆盛さんの征韓論は潰したくせに、その弟の従道さんをトップに台湾に押し入る(名目は遭難した琉球人が台湾の高砂族に殺されたことに対する報復)だなんて、支離滅裂な政権運営がよくわかる巻だったよ。

    日本は対外的には国際常識を知らない粗暴なガキの国だと思われ、対内的には不平士族の不満が今回の征台論の顛末でますます膨れ上がり、まさに「内憂外患幕末よりヒドいんじゃない?」状態になっていました。

    まぁ、司馬史観に関してはいろいろ言う人もいるけれど、資料を精査したうえでの一説と考えれば良いと思います。

    九州に石高の大きい大名が多いのは薩摩島津を押さえるためで、特に隣国の熊本はそのために54万石だったとか(それでなければ熊本城もなし?)

    世界の紛争種まき国家のイギリスが、征韓論に関しても自分たちの利権がある清に手を出されたくないので協力するよとススメてきたとか…。

    いろいろお勉強になるなぁ!

  • 在野の不平分子を考慮した事実上大義のない征台を実施する。
    しかし撤兵するためには、この征台を義のあったものと清国側に認めさせ、しかも派兵のための賠償金を清国側から出させるという力技をもってして外交に臨んだ大久保は、ある程度満足のいくかたちで終結させた。力技を建前上だけでも成功裡に導いた執拗さと周到さは見事といってよいだろう。
    この明治がはじまって十年と経たない頃は、果たして維新の本来の目的は何だったのだろうかとも思わせられる時代だ。
    国家が大きく動こうとするとき、大きく進歩しようとするときの舵取りは後の時代になってみないと正解は分からないのかも知れない。いや、もしかすると後の時代になっても分からないのかも知れない。

全68件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

司馬遼太郎(1923-1996)小説家。作家。評論家。大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を次々に発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞受賞。ほかの受賞作も多数。1993(平成5)年に文化勲章受章。“司馬史観”とよばれ独自の歴史の見方が大きな影響を及ぼした。『街道をゆく』の連載半ばで急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

「2020年 『シベリア記 遙かなる旅の原点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

司馬遼太郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
司馬遼太郎
司馬 遼太郎
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×