新装版 考えるヒント (文春文庫) (文春文庫 こ 1-8)

著者 :
  • 文藝春秋
3.49
  • (72)
  • (125)
  • (221)
  • (20)
  • (13)
本棚登録 : 2307
感想 : 142
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167107123

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • この本は、「知の巨人」と呼ばれた小林秀雄さんの本ですが、著者の本は初めて読みました。
    この本は、私には難しく、なかなか読み進まないので、苦労しました(泣)
    もっと著者の考え方や時代背景を知った上で読んだほうがよかったと思いました。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • アラサーにして初めて知る、小林秀雄の魅力。一言でいえば「かっこいい」「しびれる」。
    これは中高生の生真面目な時期に読めば劇薬だったはずだ。
    ほっとするような、口惜しいような。
    中上も大江も太宰も安吾もドストも詩も絵も音楽も、とにかくあらゆる芸術の、見方が変わる。おおげさすぎるか。見方が加わる。
    とにかく知識に立脚して、その上で「シンプルに」。「生きる」にもつながりそうだ。

    前半、「考えるヒント」。
    ・「歴史」。変り者という言葉→フロイトの自伝→歴史意識への言及。このアクロバット。
    ・「言葉」。本居宣長。生活され経験される言葉にしか興味がなかった。言葉の、形を似せるか意を似せるか。感情をととのえて歌が生まれる。
    ・「ヒットラーと悪魔」。スタヴローギン。

    後半、「四季」。このエッセイも、冴え冴えとしている。
    ・「さくら」。本居宣長の歌について、やまとごころがうんたらかんたらではなく、「桜はいい花だ、実にいい花だと私は思う」と解釈。
    ・「人形」「花見」。これはもはや小説だ。それも極上の、やさしい情感の込められた。

  • 学生時代、小林秀雄という批評家は権威の象徴であった。その格調高く示唆に富んだ文体に陶酔もしたが反発もした。結論の出ないまま関係が途絶して数十年。最近、彼の文章が大学入試に初めて登場した、というニュースを聞いて読み返した。頭の中で何かがまた回りだした、そういう印象だった。そして彼の文章が自分の血や肉になっていることを再認識。再評価されるべき。

  • 小林秀雄の思考のスタイルは、徹底的に「私」(近代的自我ではない)や、「人」、「情」にこだわるところだと思う。社会や政治の蒙昧な一挙一動に注意を払うのでなく、個人、言葉、歴史のほんとうの姿を掴んで離さぬ小林の姿勢を見て、身につまされる思いがする。ただ、ドゥルーズのような「概念の創造としての哲学」や、寺山修司の「行為としての詩」が好きな私は反発を覚えることもあるのですが。

  • 模試で小林秀雄が出題されるたび、周りからはため息がもれる。いまの高校生もそれは変わらないんじゃないだろうか。もちろん私も同じだった。そんななかで、ある日、私はテスト用紙の上で「お月見」という話に心を奪われた。情緒豊かで穏やかな心をもつ日本人をみつめた優しい文章。忘れることができなかった。人、物、世界、もののあはれへの愛しいまでのまなざし。何かに疲れたとき、私はこの本を読む。いつもどこかに優しいまなざしを見つけられる。

  • 文章は優しいのに内容は難解なところがある。知の巨人は手強い。

  • 「読者は自らそれと知らずに考えはじめている」と裏表紙にある通り、思考の呼び水となる本。問いかけ・問題意識が優れているのだと思う。人間の熱い精神を重視している。内容は結構難しい。それより自分の中で思考が勝手に進んでいくのに興奮した。

    歴史・政治・古典についてその中で生きている人の心・魂が直接伝わってくるような生きた言葉を重視しているようだ。

  • 短いエッセイ集。『モォツァルト・無常ということ』に比べれば言葉遣いが平易であった。収録作品の「平家物語」を読むために手に取ったが、その他「四季」より「お月見」「花見」、「ネヴァ河」が好きだった。全然詳細を覚えていないドストエフスキーたち、久しぶりに読み返そうかな…その前にシェイクスピア読み返したいんだよな…など読書欲も刺激された。

    「平家物語」
    "「今でも、「平家」は折に触れて読むが、「源氏」となるとどうも億劫である。…私は自分の好みを言うので、説を成そうと思うのではないが、「平家」の語る無常観というよく言われる言い方を好まない。「平家」の人々は、みな力いっぱい生きては死ぬ行動人等であって、昔から「平家」に聞き入る人々の感動も、その疑うべくもない鮮やかな姿が、肉声に乗って伝って来るところにあったであろうと考えている」"(p.131)

    まず源氏は読むのが億劫という小林秀雄に「それな~」と同意してしまったが、「平家」の語る無常観に関しては、いやそういう要素もあるし、それは何も登場人物らの生の躍動を否定するものではないと思う。無常の中だからこそ彼らの精一杯の生きざまが余計にまぶしく見える。が、小林秀雄の言いたいところが「無常観の一人歩き」ともいうべき状態を危惧しているのだとすると、そこは全力同意で、「諸行無常」ではあるが、だから生に必ずしも積極的ではない場面や価値観かというと、そうではないというところまでがセットだと思う。『平家物語』を読んだ人には、読めばそりゃわかるとなるが、言葉だけが先走るのは確かに怖さがある。

    p.131続き
    "「平家」は、曖昧な感動を知らぬとは言うまい。だが、どんな種類の述懐も、行きついて、空しくなる所は一つだ。無常な人間と常住の自然とのはっきりした出会いに行きつく。…これは「平家」によって守られた整然たる秩序だったとさえ言えよう。また其処に、日本人なら誰も身体で知っていた、深い安堵があると言えよう。…「平家」の命の長さの秘密は、その辺りにあるのではあるまいか"
    ここも注釈が必要な気がするなあ…笑
    「常住な自然」に行きつくことはもう少し説明が欲しいが、日本人にとって?、自然が秩序としてそこに在ることが平家で描かれていることは、確かに安心要素なのだけど、そここそが「平家」が語り継がれてきたゆえんであると置くところが、小林秀雄なのだなあ。

  • 収録内容は以下の通り。

    考えるヒント
     常識(昭和34年6月 発表)
     プラトンの「国家」(昭和34年7月 発表)
     井伏君の「貸間あり」(昭和34年8月 発表)
     読者(昭和34年9月 発表)
     漫画(昭和34年10月 発表)
     良心(昭和34年11月 発表)
     歴史(昭和34年12月 発表)
     言葉(昭和35年2月 発表)
     役者(昭和35年3月 発表)
     ヒットラーと悪魔(昭和35年5月 発表)
     平家物語(昭和35年7月 発表)
     プルターク英雄伝(昭和35年11月 発表)
     福沢諭吉(昭和37年6月 発表)
    四季
     人形(昭和37年10月6日 発表)
     樅の木(昭和37年10月13日 発表)
     天の橋立(昭和37年10月20日 発表)
     お月見(昭和37年10月27日 発表)
     季(昭和37年11月3日 発表)
     踊り(昭和38年4月21日 発表)
     スランプ(昭和38年4月14日 発表)
     さくら(昭和38年4月27日 発表)
     批評(昭和39年1月3日 発表)
     見物人(昭和38年11月3日、10日 発表)
     青年と老年(昭和38年1月5日 発表)
     花見(昭和39年7月 発表)
    ネヴァ河(昭和38年11月30日-12月5日 発表)
    ソヴェットの旅(昭和38年11月26日 講演)
    江藤淳: 解説

    「考えるヒント」から「プラトンの『国家』」、「良心」、「ヒットラーと悪魔」、「プルターク英雄伝」、「四季」から「お月見」、「季」、「青年と老年」と「ソヴェットの旅」が特に印象に残った。

  • 本書を読むのはこれで実は2度目である。1度目は高校時代、友人から貸してもらった。友人はそのころ中二病というか、世間をやたらと穿って見ており、周りから少々浮いていた。彼はやたらと社会問題を語り、一方で社会の出来事について語るということが今までなかった自分にとってはそれが新鮮で仲良くなった。

    そんな彼が貸してくれた本書は、正直なところ何を言ってるのか分からない。それが第一印象だった。というより今も読んでて何を伝えたいのか、とらえどころがない。

    各章の冒頭は具体的な事例から始まり、そこまでは理解しながら読み進めることができる。しかしその事例から抽出された概念が語りだされると、徐々に分からなくなってくる。頭の中でも、少しずつ理解ができなくなるのが感覚的にわかる。それが時々おかしくなる。

    というわけで内容についてはまだ記す資格はないが、もっと現代評論の基礎知識というか、前提をもっと知ろうと思った。本書が分かるようになったら、教養人としての一つの課題をクリアできる気がする。

著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小林秀雄の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヘルマン ヘッセ
村上 春樹
フランツ・カフカ
三島由紀夫
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×