秘密 (文春文庫 ひ 13-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110062

感想・レビュー・書評

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  • 読後、何となく開いた手のひらを、じっ…と見つめてしまった。

    (持っているものと、
    私のものだ、と信じていたけれど。)

    その手の中には何も無かった。


    妻と娘を乗せたバスが崖から転落。
    奇跡的に娘は助かったが、妻は死んだ。

    「行ってきまーす♪」
    笑顔で出かけて行った彼女達は
    数日後には
    「ただいまぁ~♪」と、
    元気に帰ってくるはずだったのに。

    何て不確かな明日。
    握りしめていた、と信じていたモノは
    いとも容易くするり、と抜けて無くなってしまう…。

    元々、無いものだったのだろうか?
    仏教でいう『本来無一物』と言う言葉が示すように。

    が、
    東野さんは『死』から再び妻を取り戻してくれた。
    それも、娘の肉体に。

    (…ファンタジー?)
    現実を突きつけられて絶望している身に、
    寓話の類は浸透しにくいかな…と、一瞬感じた警戒心であったが、それも
    あっという間に消滅してしまった。

    妻の魂が宿った娘と共に生きる、父親の複雑かつ深い心情には、ほんと涙が溢れて止まらなかった。

    『死』なんかには絶対わからない。
    この手の中には元々何も無い、
    何一つ、自分のものじゃない、なんて嘘。

    妻も夫も子供も家族も、そりゃ自分の体でさえ
    自分のものでは無い…かも知れないけれど、

    大事な人達への愛だけは
    この手の中から溢れ出す。

    手のひらのなかに温かさが戻った気がして、
    もう一度、硬くぎゅっと握り締めてみた。

  • 「秘密」の意味を知った時、無性に泣けてきた。
    妻と娘の関係、そして夫と父親。

    この関係の複雑な思いがたまらなかった。

  • 初めての東野圭吾さんの作品。

    鳥肌が立ちました。
    すごく切なくって、何度も何度も大事なポイントを読み返しては、ハッとさせられた。
    タイトルに迫る「秘密」の謎が解けた時は言葉にならなかった。秀作ですねー。

  • 切ない。ラストが切ない

    事故で妻を亡くし、娘が一命をとりとめるものの、その身体には妻の意識が宿る。そんな娘の身体をもった妻と主人公の秘密の物語。いわゆる、SFものでよくある設定で、前半はちょっとコミカルで面白い話でもありますが、徐々につらく、切ない話になっていきます。
    娘と見るのか、妻と見るのか、娘が成長していくにつれ、主人公、平介のこころのゆれ、その場、その場での心情がリアルに伝わってきます。

    その辺が秘密と思いきや、ラストが秘密
    とてもつらい秘密だなと。

    本書の中で
    「自分が愛する者にとって、幸せな道を選ぶ」
    といった言葉がずしーーーんと心に残ります。

    うーん、やっぱり、東野圭吾は重く、考えさせられる作品なのですねぇ。

  • 最後の最後で「秘密」の本当の意味がわかった。
    ファンタジー要素が強いかと思ったけど、それぞれの複雑な心情が描かれていてリアルだった。

  • 平介のこと途中共感できなさすぎてちょっと引いたし怖かった。

    最後は複雑。

    でも良かった。

  • ラストの本当の「秘密」はマジか、、という気持ちになれて面白かったけど
    平介に全然共感できなくて微妙だった。

  • うん、ありえない話だけど
    身体と心の葛藤をそれぞれの面から表してる
    「秘密」というのがなんだったのか。

  • 娘とは結婚して添い遂げることも出来ないし、外から見て不自然な関係性を続けることもできないし、でも最愛の妻の隣にいたいしで、その間に揺れるお父さんの葛藤が伝わってくる。大切にしたい人が幸せになる選択を取る、みたいな言葉があったような気がするけど、素敵な言葉だなあって思いました。決断に迷った時に、自分だけじゃなくて、大切にしたい人への影響を考えて判断するのも、ありよりのありだなー。

  • 電車の中で泣きながら読んだ。
    直子の覚悟、平介の苦悩の中での成長がよい

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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