片想い (文春文庫)

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著者 : 東野圭吾
  • 文藝春秋 (2004年8月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (624ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167110093

片想い (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 2004年発刊の文庫なので、もう10年以上前の作品ですが、
    ここのところのガリレオor加賀恭一郎ばかりではなく、
    こういう書き下ろしにも力が入っていた時期かな、
    と勝手に思っている頃の作品です。
    (この前くらいには秘密を上梓しています)

    おそらく2005年ごろに人からお借りして読んだような記憶があるのですが、
    ほぼ内容を忘れていたため今回買って読むことにした次第です。

    一応東野さんらしく、殺人事件が軸になっていて、
    そこを中心にストーリーが展開していくわけですが、
    やはりここも東野さんらしく、その登場人物たちの抱えている事情が
    殺人事件以上に物語を彩っています。

    主人公は元アメフト部のクオーターバック、
    その奥さんは当時の美人マネージャーです。
    そこへ当時一緒にマネージャーをやってた
    日浦美月という女性が男性になって姿を現した、
    というようなところから話が始まり、
    殺人事件に深く関わっている美月をどうにかして守ろうと、
    主人公たちが奔走していくことで物語が進んでいきます。

    途中で美月が抱える性同一性障害に関連して、
    色々な登場人物からジェンダーに対する意見・見解が出てきます。
    この物語で一番の肝は多分ここだったのかなと思いました。

    男とは何か?そして女とは何か?

    ただの性染色体のXXとXYの違いということではなく、
    心が男、心が女というのは一体なんなのか?

    そういう問いに対しての、
    現在の日本社会の許容性の低さへの警鐘や
    実際に自らの性へ違和感を持っている人たちの声を届けるため、
    この小説を書き上げたんじゃないかなと思いました。

    その中で男と女の関係を評して、ある人物が言います。
    「男と女ってのはメビウスの輪みたいなもの。
     普通は表はどこまで行っても表、裏はどこまで行っても裏だけど、
     このメビウスの輪は表だと思って進んでいたらいつの間にか裏にいる。
     そういう風に繋がっているのが男と女なんじゃないか」
    (かなり短くまとめてます)

    言いえて妙だな、と思いました。
    自分の中の男性性と女性性は否応無く存在しています。
    男だから男らしいことしかしないわけじゃない、考えないわけじゃない。
    でも、表面上は男らしさという社会が作ったレッテルに
    合わせて生きている部分はあるように思います。
    これ、それぞれは違和感なく同居してるんですよね。
    マーブル模様のように存在してるんです。

    だから男が男として存在しているのは
    その90~95%程度男っぽく出来ているから。
    女が女として存在しているのは
    その90~95%程度女っぽく出来ているから。
    ただそれだけのことなんですよね。
    そのバランスが偏ってなかったり、
    自らの身体の性とは違う方に偏ってしまったりする人が、
    性同一性障害となってしまうんだと思います。


    社会が作ったレッテルというものの多くは、
    こういう小説や映画、テレビなどから学んできたと思いますが、
    その小説からまたそれを考えさせられるというのは
    なかなかに面白い体験でした。

    単純に東野圭吾ファンでなくとも、
    こういうテーマに興味がある人ならおススメの一作です。

  • 以前一度読んだことがあった。
    内容は細かい点において忘れていたので、思っていた話と違った。
    再読もなかなかいいと思った。

    長いので、中盤は飛ばし読みのような感じだった。少し疲れた。

    残酷な描写は少ない。
    人は血液型では分類できないことを分かっているが、男女以外の分類はないように思ってる。といったようなシーンが心に残った。確かになぁという感じ。

    男性と女性って曖昧なものなんだなと思った。

  • 一年に一度行われる大学のアメフト部の同窓会。会のあとで10年ぶりに会った女子マネは男の姿になっていた。
    タイトルから想像していた恋愛ものではなくて、個人個人の持つジェンダーへの意識にまで話は広がる。
    個人的には、理沙子がとても好きになれなかった。サバサバしているようでいて、でもすごく女であるところとか、うるさいところとか。そして、美月の夫と子供はこれからどうなるのだろう。後半、美月が交換しようとしてるのは中尾だとばかり思ってたらぜんぜん違ってた。

  • いやいや凄い本。今から18年も前に性同一性障害というテーマを扱った東野圭吾の慧眼。最近でこそ、LGBTという言葉が聞かれるようになったが、当時はそういう趣味くらいの扱いではなかったかと思う。半陰陽なんて、これを読んで初めて知った。意外なストーリー展開、随所にある伏線など本当に凄い。もの悲しいラストは胸を締め付けられる。容疑者Xの献身と並ぶ名作だと思う。

  •  まずこれが1999年に書かれた小説だということに驚く。今でこそ一般に認知されているとはいえ、17年前に性同一性障害に正面から斬りこんだ著者の思いきりというか目的意識がすごい。今さらながらこの多作家の懐の深さよ。起こる事件自体は単純なのだが、その背景の人間関係というか人間そのものが複雑なのと、それがガチガチの秘密主義に守られているのでなかなか先が見通せない。意外な人物の関与が浮かび上がってからは一気呵成に終末のカタストロフへとなだれ込み、悲しくはあるがこうなるしかなかったのだと納得させて終わる。片想いとは誰の誰への想いだろうか。いくつもの片想いがあるようでいて、実はそれは両想いの二側面に過ぎないのではとも思う。それはもちろん互いに思いあうアメフト部の仲間たちの絆のことでもあるが、それだけに留まらず物語的には端役に過ぎない猫目の野末真希子や金童の嵯峨正道の凛とした心遣いにもあらわれている。それがこの作品を今読んでもホットな話題というだけでなく奥行きのある人間のドラマに仕上げている。

  • トランスジェンダーを題材に、男女の友情を描く。

    生物学的に見たら、男女は当然、別々の存在だと思う。科学の発達はこの限りではないかもしれないですが。
    男女をひとつの人格として見たときに、その境界線は難しいと思う。それをうまく表したメビウスリングの表現は見事に納得させられました。
    男らしさとか、女らしさって、一言では表せないものだなと思いました。料理をするのは、女みたいなことを言うひともいたけど、今は料理をする男の方がもてたり。結局、時代と共に変わって行くものなのかなと思いました。

    何の偏見もない世界は理想だと思う、まぁ、理想が話されている間は、なにも解決しないのでしょうね。行動するって大切。

  • 何度も読む機会はあったのに読まないまま、ふとバンコクの紀伊國屋で購入。裏表紙のあらすじでは分からなかったけど、タイで生活している今、このタイという国で手に取って読んだというこのタイミングに言い様のない縁を感じた。自分の好きな人が自分を好きになってくれるというのは奇跡なんだろうな。

  • 重いね…性について新しい概念を得ることができたと思う

  • 3分の1くらいまでは、読んでいてとにかく胸糞が悪く感じられた。「殺人を犯したので自首をする」と言っている性同一性障害者の美月に対して、「刑務所では戸籍上の性別でしか扱われないから、性同一性障害を持つあなたは辛い思いをする」という理由で自首を思い留まらせるという主人公たちの行動も、そういった理由で自首を思い留まらせたにも関わらず「警察の目を誤魔化すため、女性の姿になれ」と声高に主張する理沙子の押し付けがましさにも。
    作中で描かれている「男とは」「女とは」という描写に関しても、ガチガチに凝り固まった一昔前の男女観としか感じられず、「今更何を」としか思えなかったし(注:この点に関しては、この作品が書かれたのが10年以上前とまさに一昔前であることを考慮する必要があるだろうが)。
    とにかく、魅力的だったり興味を掻き立てられる点が何一つとしてなく、読んでいて気分が悪くなるだけだったので読むのを止めようかと何度も思ったほど。

  • かなり長編だが、ページ数を感じさせないほど、一気に読めてしまう。タイトルの「片思い」は、本の性格を非常によく表している。決して、単純な恋愛小説ではない。ジェンダー問題、男女の社会的な地位や立場、性同一性障害、深く考えさせられるテーマに切り込みながらも、決してミステリーの要素を欠かない素晴らしい作品。複雑な問題をこれほど多く絡めても尚、最後の最後までハラハラさせられる新鮮さを持った、このような作品が書ける作者に脱帽です。個人的には文句無しの5つ星だと思う。

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