文壇 (文春文庫 の 1-13)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167119133

作品紹介・あらすじ

三島由紀夫、吉行淳之介…。キラ星のごとき流行作家や名物編集者たちが夜な夜な酒に浸り、文学論を戦わせる。ときは1960年代、銀座や新宿の薄暗がりの文壇酒場に現われた新人流行作家・野坂昭如が、おそるべき記憶力で男たち女たちの生態を再現。自虐と自負と韜晦をこきまぜ、己を語る。泉鏡花文学賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • むかし『欣求穢土(ごんぐえど)』という題の何だかわからないのを読んだきりで、TVにたびたび登場していらして、いかにも軽薄(失礼!)な様子をみるにつけ、もう読むことはないだろう作家であったのに。

     ずらずらっと続く文章を興深く読んだ。ほんと最初は読みにくかった。この書き方はなんじゃろ。でも内容が半端じゃない。

     登場する1960年代の作家達の生態がおもしろい。吉行淳之介、三島由紀夫、舟橋聖一、丹羽文雄、丸谷才一、立原正秋、...私の知っている読んでる作家が続々と出てくる。 そして、名のある編集者という職業の人たちとのやりとりが臨場感あふれる。

     「色川武大」という作家が中央公論新人賞を受ける(1961年)パーティーから始まって、本人がTV脚本家から小説家になって直木賞を取り(1968年)、文壇という良くも悪くも切磋琢磨の世界を泳ぎ切る、ひと時代を描いているのである。

     まあ、芥川賞直木賞、最近は権威が落ちたような趨勢だけれど、作家さんの登竜門、めざしてすさまじいものがあるのだろう。この賞によって文壇が誕生したと作家はと言いたいのかも。

     いろいろとおべっかをつかって大御所作家に取り入るような、色めき酒びたり、その姿は何処の世界も変らない。でも、すごい記憶力。ちゃあんと文学史になっているではないの。

     一読者としてはその小説(文学、本)がおもしろくて夢中になって読み切れればそれでいい。賞は関係ないと思うような。

     文章の特徴にも慣れ「樋口一葉」か現代の「町田康」か、ああ「宇野千代」もこういう文章だったと思い出した。野坂昭如、思わぬ発見であった。

     この『文壇』の最後は三島由紀夫、自衛隊での割腹自殺を知り、丸谷才一が『たった一人の反乱』を書いた、で終わっているがそんなこともあんなこともニュースとしては、わたしには臨場感おお有りであったこと。

  • 息継ぎなしの文体で一気に文壇(=文壇バー)の歴史を駆け抜ける。三島自決の年で幕切れ。小説家・野坂の苦悩が生々しい。著名人がゴロゴロ登場するのでミーハー心も満たされます。

  • 昭和という文壇を書ききった作品。野坂氏の私小説だと思いながら読みました。いつか小説を書いて文壇という坩堝の中に入ってみたい。どろどろしてそうだけど。

  • 独特のリズムを持つ文体はむしろ音楽的。

  • 初めて読む野坂昭如
    読点で繋がる文のリズムになれると癖になる。

  • 小説なの? 嘘があるから? うーん

  • 未読

  • 野坂昭如の見た1960年代の文壇。憧れます。

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著者プロフィール

野坂昭如

一九三〇年(昭和五)神奈川県生まれ。親戚の養子となり神戸に育つ。四五年の空襲で養父を失い、のち、実家に引き取られる。旧制新潟高校から早稲田大学第一文学部仏文科に進むが、五七年中退。CMソング作詞家、放送作家などさまざまな職を経て、六三年「エロ事師たち」で作家デビュー。六八年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で直木賞を、九七年『同心円』で吉川英治文学賞を、二〇〇二年『文壇』およびそれに至る文業で泉鏡花文学賞を受賞。そのほか『骨餓身峠死人葛』『戦争童話集』『一九四五・夏・神戸』など多くの著書がある。二〇一〇年(平成二十七)死去。

「2020年 『「終戦日記」を読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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