若きサムライのために (文春文庫)

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著者 : 三島由紀夫
  • 文藝春秋 (1996年11月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167124038

若きサムライのために (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  •  エッセイと対談集からなる作品。対談では猪木正道、福田赳夫、福田恆存の各々との対談を収録している。2012年11月現在、我々は領土問題、米軍基地問題など、昭和40年代に書かれたこの本と同様の問題を解決出来ずに持ち越したままである。そういった現在における政治の要素も、この本を読んでいる時に自然と思い浮かべてしまうのではないのだろうか。
     この中に書かれている左翼、右翼と現在の左翼、右翼では訴えていることが入れ替わっている部分があり、面白い。自己啓発本のような扱いを受けかねないところもあるが、当時の思想の一つを知ることが出来る史料として読んでも面白いかもしれない。

  • あくまで個人の中限定の話であるが道徳の教科書…いや、参考書かな。参考書にしたい本。
    「お茶漬けナショナリズム」を境にして、後半の対談などは不道徳教育講座よりずっと難しく、一度読んだ程度ではインプットしきれない情報量が沢山あるが、本書を一度読めば、三島先生の伝えたいところの根本的な部分、「精神と文化」~「文武両道」~「武力とは何の為のものであるか」そういう、「文化」と「武力」の二つの異なったものを精神に修めてゆくことの大切さを知ることができると思う。
    「若きサムライのための精神講話」では不道徳教育講座のようにひっくり返されるような驚きはそこまで無い物の、わかりやすく噛み砕いて、そこのへんの所を教えてくれます。

    「若きサムライ」である我々若い読者からすれば、三島先生は知った初めから「切腹した作家」です。
    本書を読んでいると、「何故切腹してしまったのか?」という部分がなんとなくわかってくるような気がしてきます。そういう、三島先生の精神に触れる本です。
    命より大切な、しかし肉体と肉体による行動無くしては証明されない(文字では表現にしかならず、証明にはならない)「精神」が、現在も「切腹した作家」という鮮烈な6文字で我々の頭に浮かび上がっています。

  • 面白かった。
    『若きサムライの精神講話』にも後半の対談集にも、三島由紀夫が当時懸念した問題に言及している。そのまま顧みなかったから今の日本があるんだろうか、と思う点が少なからずあった。にしても、何度か思ったことだけれど「失われた美徳は二度と取り戻せないのか」という命題は、悲しいが確かなことなのかもしれない。

    一番心に残ったものは、解説の「三島自害後に生まれた人間にとって、何よりもまず『切腹した作家』と知る」だ。読んだ人も読まないままの人も、『右の人』という認識は続く。ただ、たまにいる「思想から結果が先に出ており、思考過程と論理は後付けで支離滅裂」な人とは別である。あの時代、理知的な右である三島由紀夫という人から見て、そう考える十分な理由、雰囲気というものがあったのだろう。そして、いくつかは悲しい現実となった。親が子を殺し子が親を殺すという現状は異常であるが、腹立たしいことに現実だ。
    強い感情に見合う高い知恵が、そのバランスが、狂おしいほど羨ましい。そして、おそらく感情が勝っていただけに死なずにはいられなかった、人の熱に期待せずにいられなかった心が、ただただ悲しい。けれど、その生に勝手に眩しさを感じる凡人の心を、許してほしいと思う。

  • ひざをたたく、目からうろこ。
    そんな連続でした。ものすごく、面白い。

    あとがきにもあるように、私の世代だと三島は「切腹した作家」であり、政治的な色のとても強いイメージを持っている人が多いと思いますし、私がまさにそれでした。
    確かに、政治、特に安保・戦争への言及が多いです。

    しかし、そんな色を抜きにしても、「こんな思想が私の生まれる20年前からあったのか」と驚きの連続。

    「老人は人間による情報の蓄積に意味のあった農業の時代では重宝され敬われた。今の老人はテレビを見てばかりで、若者に勝る知識は芸能人に関すること程度。そのうち、情報化が新興すればその手段に取り残され、老人が無用の長物であることが露呈するであろう。逆に、若さを敬う時代がくるかもしれない」(引用ではない、以下同じ)
    なんて書いたり。

    「女性は伝統を破壊することで権利向上を目指したが、その行為は伝統に縛られているがゆえに受身的であり、創造性がない。そこが女性の欠点である」
    「今の社会は努力を奨励しながら、年代にふさわしい努力をする環境が与えられていない。無理の利く若者に忍耐を、衰え始めた中年に背負いきれない重荷を載せる」
    「学生運動で大学を占拠するようなやつは、そのまま閉じ込めて、中でどうなっていくのか望遠レンズで覗いて新聞にその様子をレポートすればいい」

    とにかく読んでいて「ほほぅ!」の連続です。
    ぜひ。

  • それなりに面白く、読みやすいが、三島にしては軽薄な印象を受けた。大衆受けを狙ってわざとやってるとしか思えない。エッセイ集なら「不道徳」の方が遥かに面白い。
    後半の対談にいたっては「小説家が政治について語り出すとろくなことにならない」という私の持論を地でいくようなもの。
    これなら三島の小説を読んだ方がよほどいい。小説を読みましょう。

  •  三島由紀夫が見る日本人達を記したもの。
    対談までの部分は、著者自身の考えが書いてあるのだが、非常に気になった(=もっと読み込みたい)部分があったので記しておく。

     ・非常事態と平常の事態とを貫く行動倫理を見る事が現代のサムライが勇者か
      否かを見る区別手段。
     ・日本人の中には、日本的な肉体を侮蔑する精神主義とアメリカから輸入された
      浅はかな肉体主義が広がっている。
     ・女性の羞恥心が失われた以上に男性の羞恥心が失われた。

     ここには一部しか記せていないが、今でも普通に通用するであろう考察が非常に多く並ぶ。一読をお勧めする。

  • 半世紀近くも前に上梓されたにも関わらず、21世紀の現代社会の歪みを目にしながら筆を執っているかのように新鮮さがある。

    学生運動に関しては、先鋭化され、暴力が蔓延している分だけ見えやすいしわかり易い。ここを斬るのはそう難しくはないと思う。
    だが、特定国からの経済やスパイ行為による這いよる間接侵略に打つ手が無い日本のもどかしい現状を、この時代から正鵠を射て論じていたことにはただただ感服するばかり。

    漸く時代が三島に追いついてきたというべきか。

    とはいえ、過激思想であることは事実。当時、三島の言うとおりに日本の舵取りが進んでいたら、今頃は間違いなくテロとの戦いに巻き込まれていただろう。
    9条バリアなどはまやかしだが、事実としてそれがあるおかげで戦後70年、日本の軍隊は誰も殺めていない。そこはまた尊重するし誇りにも思うべき。

    まあ大事なのは今を生きる我々が責任を持って考えること。作中にもあった、現実肯定主義ならぬ現実理想主義というイデオロギーには全面的に賛成したい。

  • 現在読んでも色褪せない、三島節。

  • 2005年 読了

  • 結局、彼も大河の中の個なんだなぁ、という印象を受けた。しかし、日本近現代の流れの中の強い楔にはなってるんだろうなぁ。
    自分の若い後輩たちは、きっと三島由紀夫については名前しか知らないのだろうし、この先も知ろうとしないだろう。そんなことも併せて考えていたら、大変彼には失礼で不本意かもしれないが、悲しいとか切ないとか可哀想とさえ思った。

    楔によってできた流れの変化もしばらくすれば、わからない変わらない流れになるのだもの。

    という感想。

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若きサムライのために (文春文庫)の作品紹介

男の生活と肉体は、危機に向って絶えず振りしぼられた弓のように緊張していなければならない-。平和ボケと現状肯定に寝そべる世相を蔑し、ニセ文化人の「お茶漬ナショナリズム」を罵り、死を賭す覚悟なき学生運動に揺れる学園を「動物園」と皮肉る、挑発と警世の書。死の一年前に刊行された、次代への遺言。

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