高丘親王航海記 (文春文庫)

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著者 : 澁澤龍彦
  • 文藝春秋 (1990年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167140021

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高丘親王航海記 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 再読。随分と久方ぶりなので細かいエピソードを失念していたせいか、初読のような瑞々しい感覚で物語を味わうことができた。まるで玉手箱のよう。禁を犯して蓋を開けると澁澤龍彦の生涯を賭けた(彼の見た夢の)コレクションが蜃気楼の如く浮かんでは空気中に拡散し私はうっとり恍惚となる。最後に残った一粒の真珠が彼の生きてきた証だ。それを最後の最後、渾身の力で残してくれた。迫りくる死を意識し見つめ乗り越え、一流の美学とユーモアで装飾しながらこの怪傑作を書き切り死に尽きた。その生き様に憧れる。死に際まで彼はかっこよかった。

  • 貞観7年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ旅立つ。
    幼い頃に藤原薬子が添い寝で語った天竺の話。
    薬子の思い出と寄り添うように天竺へ旅をする。
    「そうれ、天竺まで飛んでゆけ。」
    夢か現か。
    異国の景色、むせ返るようなジャングルの熱、しんとした湖の舟。大蟻喰い、儒艮、蘭房の女、獏園、蜜人、卵生の娘、王妃の肉身像。

    夢のようで、でも天竺までの彼の地ならそんなことが起きても不自然でないように思うのは西遊記が頭にあるからかな。
    ほんわかとじっとりとミーコと一緒に旅をしてきた。
    親王の歳を感じさせない好奇心と行動力にニヤリとしつつ。親王の薬子への想いが甘酸っぱさとヒリヒリした闇を垣間見させて切ない。
    地図を見ながらミーコの旅したあとを追ってみたくなる。

    「一生に一度しか夢を見ず、夢というものの効能も知らずに死んでゆく人間が、この国にはざらにいるのじゃ。おまえは天竺へ達することを一生の念願としているそうだが、そんなに夢を見ることに堪能ならば、どうしてまた天竺なんぞへ足を運ぶ必要があろう。天竺は夜ごとの夢で見ていれば十分ではないか。」

  • 22年ぶりの再読。あれ?こんなマイルドだったけ?「パタリロ!」と世界観が重なる。珍動物とか、エロ風味とか、奇想天外な感じが。て、パタリヤパタタ姫のせい?実はパタリロのほうが、先に発表されてるのは驚きの事実。

  • 天竺へ向かう高丘親王らが波瀾万丈の旅の途上で目にしたのは、人語を操る儒艮や、えもいわれぬ香気を放つ糞をひる獏や、怪しい真珠や、砂地を離れて空を飛ぶ舟。飄々とした口調で蘊蓄を垂れる、めくるめく幻想の世界へようこそ。

    率直な感想は3.5、とはいえこの手の小説はレアなので加算0.5、総計星4と言ったところ。澁澤龍彦の文体が、個人的にそこまでぐりぐりと壺に入らないせいかもしれない。

  • 実在した高丘親王の話を元に作り上げた物語.高丘親王が天竺を目指して弟子たちとともに旅に出る.道中の不思議な,夢とも幻とも言えるような出来事の話.この本には面白いか,面白くないか,といった評価基準はあまり適していないと思う.適しているのは気持ちいいか,気持ちよくないか,という基準である.そしてこの本はものすごく気持ちのいい本である.両手両足が伸ばせるお風呂があったとする.仰向けに寝っ転がってもおぼれないような深さのお風呂.そこでぬるめのお湯につかりながら,仰向けになってぼーっと上を向いている感じの心地よさ.そういう心地よさの本.最後に書かれた高橋克彦の解説は実にくだらないが,ただ「これは大人の小説だと思う.できるならば,四十になり,五十になって読み返して欲しい.その時期ごとに別の思いが生ずるはずである.」という部分には賛成できる.きっとその通りだと思う.

  •  言わずと知れた澁澤龍彦による幻想文学の名作であります。
     実は宇月原晴明の「安徳天皇漂海記」を読みかけていて、そのあとがきで触れられていたので再読したもの。
     平安時代に高丘親王が天竺に向かおうとした逸話をベースにしているものの、決して歴史小説ではなく、珍妙な生き物などが次々と登場する幻想譚となっています。
     天竺を目指して進む親王は、同時に夢と現実のはざまを旅していく。人語を解すジュゴン、鳥女を閉じ込めた後宮など、ある意味バカバカしくも、しかし非常に美しい世界観に魅了されます。
     澁澤龍彦氏はガンによる死を前にしてこの小説を書き上げたとか。美をもって死を迎え入れる姿勢に、遺作として単純に心打たれます。
     初めて読んだときはそれを知らなかったため、衝撃的なラストは氏の芸術至上主義とニルヴァーナ願望を表出したものと考えてたんですけど。

  • 時間も空間も夢も現実も自在に行きつ戻りつ、こんな幻想譚…、楽しいなぁ。
    美しくも死の象徴である真珠を飲んで親王が喉の病いを患ってしまう最終章は、本作を執筆していたのが筆者の咽頭癌末期であったことを知ると切ない。

  • 幼少期、父平城帝の愛人・薬子に寝物語で聞かされた天竺のことが忘れられず70歳に至って天竺を目指す高丘親王のお話。

    不思議な感触の小説である。
    天竺を目指しあらゆる島々を巡り、そのたび親王は夢とうつつの淡いを行き来する。
    一見ファンタジーのようだけれど、親王の行動や奇態な夢に強烈な「男の性」を感じるというか……男の腋の下の臭いをかぐようなリアリティがおもしろいのだ。

    それぞれの女の役割というのを考えてみても、なんだかおかしいというか割り切れない。
    薬子は親王の母代わりのようであり愛人のようでもあり、そこに実の父平城帝に対するエディプスコンプレックスも感ぜられる。けどそういう事は意外と瑣末なことであるかもしれず、親王が抱く薬子の思い出はどこか「やわらかい」。

    秋丸・春丸もどういうものだろう。
    「蘭房」において、口惜しそうにしながらも親王を欄房に見送る秋丸の姿に僕はどこかくすぐったい気持ちになる。

    解説にあったが40歳くらいになって読むとまた違った感慨が湧いてきそうである。

  • 河口慧海の『チベット旅行記』を読んでいたらふいにこの本のことを思い出して再読。澁澤さん好みのモチーフ、アイテム、変な動物満載で、小説なのだけれどいつものエッセイを読むのと同じ感覚で読んでしまう。アナクロニズムを多用するだけでなく登場人物自らそう言ってしまうのもご愛嬌。何度読んでもどうしても親王(みこ)と澁澤さん自身の姿が重なります。

  • 澁澤氏の遺作となった作品。『うつろ舟』を読んで彼の世界にハマった身として、とても面白く読んだ。人面鳥身の女、犬頭人、獏、諸々の奇怪な生き物と出会いながら、高丘親王を育てた藤原薬子の転生を軸に繰り広げられる冒険譚。読み物として楽しいし、一気に読んでしまった。

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高丘親王航海記 (文春文庫)の作品紹介

貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは…。遺作となった読売文学賞受賞作。

高丘親王航海記 (文春文庫)のハードカバー

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