高丘親王航海記 (文春文庫)

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著者 : 澁澤龍彦
  • 文藝春秋 (1990年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167140021

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高丘親王航海記 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 9世紀,平城天皇の皇市である高丘親王は67歳の時にわずかな供回のみ連れて天竺への旅に出る.中国南部からインドシナ半島,ベンガル湾周囲を放浪するがスリランカには行き着けず絶命する.どこまでが史実でどこまでがお伽話かわからない不思議な航海記.

  • 徐々に親しみを覚える物語の隙間から、残酷でやさしい羽ばたきの音が聞こえる。神仏にも悪魔にも、人形にさえも似た女の、深い色をした目のけはいも感じさせられる。
    文章を書くものとしての感想を、蛇足ながら付け加えると、知識と物語の融合が独特かつ巧みで舌を巻くしかない。しかもそれでいて、嫌味も全くないのだから! 物語には惹きつけるけれど、しぜん、一定の距離をおくような書き方だと感じる。私は、ひとを真似る気はさらさらないが、真似しようとしても真似できないたぐいの作者であることは間違いない。

  • 時代小説風SFといいましょうか。確かに引き込まれる題材ではあるんですが、なんででしょうか、いまひとつ入れ込めないまま終わってしまいました。各所の評価とかを見ていると、自分の感性の問題なんでしょうね、きっと。ふと思いついたのは「アラビアの夜の~」。あれも自分と一般の評価が乖離してしまったけど、そもそもこういう系に対する感受性に乏しいんでしょうね。でも、今後も評判作には諦めず手を出していきます。

  • 時間も空間も夢も現実も自在に行きつ戻りつ、こんな幻想譚…、楽しいなぁ。
    美しくも死の象徴である真珠を飲んで親王が喉の病いを患ってしまう最終章は、本作を執筆していたのが筆者の咽頭癌末期であったことを知ると切ない。

  • 貞観七年(865年)正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へと向かう。その旅の合間に見る幻想的な夢の数々。
    澁澤龍彦だからこその濃密さを、さらりと描写されています。さっと書かれる一言や一場面の奥には膨大な知識が土台となり支えているのだろうとうかがい知れます。
    鳥の下半身をした女、犬の頭を持つ犬頭人、人をミイラにする花などが、夢と現の境を曖昧にし、生と死の境も曖昧にします。これが遺作となり病床で書かれたと聞き、より一層生死の混濁した色合いを深めるように感じられました。

  • 「みこ」と一緒に平安時代のアジアを旅している気分になれる不思議な物語。親王とお供の僧がとても魅力的。

  • 面白かったー!作品が幻想的かつ明るくて、その明るさの中には死も人生の一部分として好意的に捉えていくような感覚も魅力的だった。親王の薬子へのな思いを描いラブストーリーにも見えて、そこにエロスがあるところが好き!描き方も美しい!

  • #11年ぶりの再読、やあ、こんなに自由だったかな! P13で秋丸が『バジル氏〜』のルイ君で思い浮かんで以降、今回のビジュアルイメージは坂田靖子が担当。坂田と澁澤が相性良いなんて昔は思わなかったな。

    #P19「なにもかもがわたしたちの世界とは正反対」な天竺を象徴することばとしての、アンチポデス。大蟻食いと儒艮、秋丸と薬子、春丸とパタタ姫、またP67の左巻きの貝などの細部の描写や、あるいは全体の夢と現実の照応など。では高丘親王のアンチポデスとは、高橋克彦の解説にあるように、物語を合わせ鏡にした澁澤自身のことなのか、それともP204「わたしの死ぬところが天竺だ」とあるように、死そのもののことなのか。

    #P34「とても楽しかった。でも、ようやくそれがいえたのは死ぬときだった。おれはことばといっしょに死ぬよ」 P181「もっとも、ことばをおぼえたおかげで、わたしは地上で一度は死ぬという運命をまぬがれるわけにはいきませんでした」 それとも、死の足の裏にはことばが倒立しているのかな。まだまだわかりませんので、ではまた10年後に!

    (2009/11/22)

  • 貞観7年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ旅立つ。
    幼い頃に藤原薬子が添い寝で語った天竺の話。
    薬子の思い出と寄り添うように天竺へ旅をする。
    「そうれ、天竺まで飛んでゆけ。」
    夢か現か。
    異国の景色、むせ返るようなジャングルの熱、しんとした湖の舟。大蟻喰い、儒艮、蘭房の女、獏園、蜜人、卵生の娘、王妃の肉身像。

    夢のようで、でも天竺までの彼の地ならそんなことが起きても不自然でないように思うのは西遊記が頭にあるからかな。
    ほんわかとじっとりとミーコと一緒に旅をしてきた。
    親王の歳を感じさせない好奇心と行動力にニヤリとしつつ。親王の薬子への想いが甘酸っぱさとヒリヒリした闇を垣間見させて切ない。
    地図を見ながらミーコの旅したあとを追ってみたくなる。

    「一生に一度しか夢を見ず、夢というものの効能も知らずに死んでゆく人間が、この国にはざらにいるのじゃ。おまえは天竺へ達することを一生の念願としているそうだが、そんなに夢を見ることに堪能ならば、どうしてまた天竺なんぞへ足を運ぶ必要があろう。天竺は夜ごとの夢で見ていれば十分ではないか。」

  • 渋澤氏が亡くなって随分とたつ。この所、色々とあり古い本ばかり読み漁っているが、「眠り姫」よりもこの話が好きである。氏の最晩年の作品であり、癌と闘いながら書き綴っていた軌跡が、物語の背景に雪洞の灯のように薄く儚くさしている。

  • 幼少期、父平城帝の愛人・薬子に寝物語で聞かされた天竺のことが忘れられず70歳に至って天竺を目指す高丘親王のお話。

    不思議な感触の小説である。
    天竺を目指しあらゆる島々を巡り、そのたび親王は夢とうつつの淡いを行き来する。
    一見ファンタジーのようだけれど、親王の行動や奇態な夢に強烈な「男の性」を感じるというか……男の腋の下の臭いをかぐようなリアリティがおもしろいのだ。

    それぞれの女の役割というのを考えてみても、なんだかおかしいというか割り切れない。
    薬子は親王の母代わりのようであり愛人のようでもあり、そこに実の父平城帝に対するエディプスコンプレックスも感ぜられる。けどそういう事は意外と瑣末なことであるかもしれず、親王が抱く薬子の思い出はどこか「やわらかい」。

    秋丸・春丸もどういうものだろう。
    「蘭房」において、口惜しそうにしながらも親王を欄房に見送る秋丸の姿に僕はどこかくすぐったい気持ちになる。

    解説にあったが40歳くらいになって読むとまた違った感慨が湧いてきそうである。

  • 【本の内容】
    貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。

    幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。

    鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは…。

    遺作となった読売文学賞受賞作。

    [ 目次 ]


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    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 幻想的で面白い話だった。ほとんど夢の話だけど、なんだかより気持ちは感じることが出来た気がする。

  • 再読。随分と久方ぶりなので細かいエピソードを失念していたせいか、初読のような瑞々しい感覚で物語を味わうことができた。まるで玉手箱のよう。禁を犯して蓋を開けると澁澤龍彦の生涯を賭けた(彼の見た夢の)コレクションが蜃気楼の如く浮かんでは空気中に拡散し私はうっとり恍惚となる。最後に残った一粒の真珠が彼の生きてきた証だ。それを最後の最後、渾身の力で残してくれた。迫りくる死を意識し見つめ乗り越え、一流の美学とユーモアで装飾しながらこの怪傑作を書き切り死に尽きた。その生き様に憧れる。死に際まで彼はかっこよかった。

  • きらめくもやに包まれた極彩色の世界。手に取ったのはマンドリン合奏曲がきっかけ。もっと人生経験を積んでからまた読みたい。

  • とても美しい。読み終えるのが惜しくて大事にすこしずつ読んでいった。きっと何度も読み返すに違いない。大切な本になった。

  • 人の言葉を話す儒艮とか変な生き物が可愛い。
    澁澤龍彦が死の床で書いたと思うと、高丘親王の最期と重なってなんとも言えない気持ちになる。

  • 8/18 読了。
    再読。

  • 『高岳親王航海記』素晴らしい物語だった。
    高岳親王がお供の安展、円覚、秋丸、そして春丸を従えて天竺を目指す物語。
    飄々としたみこと、その旅の道中で出合う様々な妖しいものたちの不思議な魅力に惹かれる。
    半分はみこの夢の物語なのだが、読んでいると夢と現実との境が分からなくなり、いつしかその幻想的な世界に引きずり込まれている。
    そして、おかしみのある幻想的な夢物語の根底に流れている死のにおいに気付くとき、いきものの儚い宿命に涙するのである。
    みこの魂は、天竺へ辿りつけただろうか?

    P.S.みこ、みーこ、ミーコという呼び名には個人的に強い親近感を覚えた(笑)。

  • 澁澤氏の遺作となった作品。『うつろ舟』を読んで彼の世界にハマった身として、とても面白く読んだ。人面鳥身の女、犬頭人、獏、諸々の奇怪な生き物と出会いながら、高丘親王を育てた藤原薬子の転生を軸に繰り広げられる冒険譚。読み物として楽しいし、一気に読んでしまった。

  • 道具立ても雰囲気も興味深い。それを語り手の声が損なっているのが非常に残念。作者の澁澤に感情移入できる人なら喜ぶのだろうけど。

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高丘親王航海記 (文春文庫)の作品紹介

貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父平城帝の寵姫藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。鳥の下半身をした女、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは…。遺作となった読売文学賞受賞作。

高丘親王航海記 (文春文庫)のハードカバー

高丘親王航海記 (文春文庫)のKindle版

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