新装版 鬼平犯科帳 (4) (文春文庫) (文春文庫 い 4-55)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167142568

作品紹介・あらすじ

はっと、平蔵が舟の中へ身を伏せた。荒屋敷の潜門がしずかに開き浪人風の男があらわれ、あたりに目をくばっている。(これほどの奴がいたのか…)平蔵の全身をするどい緊張がつらぬいた。凄絶な鬼平の剣技を描く「血闘」をはじめ「霧の七郎」「五年目の客」「密通」「あばたの新助」「おみね徳次郎」など八篇。

感想・レビュー・書評

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  • 冴えない浪人だった。
    小男で醜男、だが滅法強かった。
    長谷川平蔵の息子の辰蔵が出会った浪人に持ち込まれた殺しの依頼は…。
     /霧の七郎

    客の金を持ち出し逃げた女。
    五年後、別の生活をしている女の前に現れた男の狙いは…
     /五年目の客

    平蔵の妻の叔父から持ち込まれた秘密の依頼。
    屋敷の男が金を持ち出し逃げ出したという。
    屋敷を見張る平蔵の部下たち。
     …という捜査物かと思ったら、一人の女を巡って三人の男の本性があらわになるというお話でした。
     /密通

    平蔵の女密偵おまさが捕えられた。
    荒屋敷を見張る平蔵。
    出てきた男、身のこなしに寸分の隙がない、相当の手練れどもだ。
    おまさを救うため一人忍び込む平蔵。

    この時代に寄る辺ない女が生きることの厳しさ、そして強靭さ。
    …しかしやっぱり”そうなる”よなあ…orz
     /血闘

    平蔵の同心、佐々木新助は地味でよき家庭人だった。
    だった、のだ。茶屋の女に骨抜きにされるまでは。
    女は盗賊の一味。弱みを握られた新助は盗賊たちの手先となるしかなくなり…。
     /あばたの新助

    男と女の情愛駆け引き。
    だが彼らはそれぞれ別の盗賊の一味だった。
    相手の何を知るか、どこまで執着するか、そして相手を殺せるか…。
    彼らの動きを捕えた平蔵の捕縛劇も絡みあう人間模様。
     /おみね徳次郎

    平蔵の朋友左馬之助は盗賊一味の隠し宿を見つける。
    新たな波に押し流されそうになる老いた盗賊の張り通そうとした意地。
     /敵

    江戸の闇に蠢く辻斬り、無残に殺され遺棄される夜鷹の死体。
    夜鷹殺しと捜査はおざなりになる。
    しかし平蔵は動く。夜鷹の命だからと言って軽んじて良いものではない…
     /夜鷹殺し
    19世紀末あたりに倫敦あたりであった事件が元かな?

  • 1~4の中で一番おもしろかった!
    読めば読むほど、平蔵さんに惚れる。
    そして、盗賊の美学みたいなものにロマンを感じる。
    全部の話、おもしろかったなぁ。

    本編とは関係ないのだけど…
    私が読んだものが、1986年の版だったからか、解説を書いている方が奥様に対してだけれど、
    「女には「鬼平犯科帳」の真髄は理解不可能である。女なんぞに何がわかるか。」
    と書いていて、少しイラっとした。
    でも、時代が時代だった!!と思い直す。
    そんな昔の日本もしみじみと感じる本でした。

  • 鬼平犯科帳 (4)

    諸事情により、4巻未読のまま、8巻まで読んでいたのですが、ようやく4巻を読めました。

    密偵のおまさ、大滝の五郎蔵、舟形の宗平はこの巻から登場だったのですね。
    特に、おまさの鬼平さんへの尽くしっぷりは、ある意味壮絶なものがあります。
    鬼平さん率いる火付盗賊改方の検挙率(?)がずば抜けているのも、彼らのような有能で忠実な密偵達の活躍が大きいのだな・・。と思います。

  • 『夜鷹殺し』色を売る女〔夜鷹〕殺しが続くなか、町奉行所はこの事件をおもく取りあつかう気配がありません。そのことに対して平蔵は夜鷹も人ではないかと憤ります。彼女らの生きるためのいじらしさ、大切な相手に対する一生懸命さを知る平蔵は事件の糾明に乗り出します。これには囮作戦を手伝った彦十やおまさとともに平蔵の男気に惚れてしまいますよ。
    それとは別に『密通』のラストで久栄をからかう二人の仲の良さにヤキモチを焼きたくなりましたよ。平蔵の愛らしさにキュンです。

  • ず〜っと同じような内容だから、途中から飽きるんじゃないかしら?
    と思っていたけれど、まったくそんなことなく
    安定して楽しめる♪
    さらに“おまさ”や“五郎蔵”のような新しい登場人物も出て来て
    これからまたまたおもしろそう(^v^)☆

  • 我らがミューズ、おまさが登場の巻。

    【霧の七郎】見かけによらない凄い剣士が出る
    【五年目の客】勘違い女に気づかぬ男
    【密通】久栄さんの伯父ってサイテーね
    【血闘】おまさ登場、大ピンチ
    【あばたの新助】悪い女にひっかかる部下
    【おみね徳次郎】二兎を追う者、一兎は得られた
    【敵】五郎蔵、嵌められる
    【夜鷹殺し】江戸の切り裂きジャック

  • 血闘。平蔵の密偵となり働くおまさ。
    平蔵が酒に溺れていたとき、昔かたぎの盗っ人の忠助と意気投合。そのときの少女おまさは、平蔵の為ならばと一身をかけていろいろな情報を平蔵にもたらす。
    そこまでするのか、というおまさと、密偵のため、命をかけて救出する平蔵。二人の信頼性がよくわかる大好きな一節。

  • 霧の七郎
    五年目の客
    密通
    血闘
    あばたの新助
    おみね徳次郎

    夜鷹殺し

    「敵」大滝の五郎蔵と舟形の宗平が火盗改方の密偵に。
    「夜鷹殺し」自分の身を省みないおまさが切ない。

  • おまささんはそれでいいのか。余りにもつらすぎないか。
    助けられるまでに5回も凌辱されて、それでも平蔵さんが来てくれたことを心から喜んで。
    心から尽くすおまささん。その命さえ投げ出す覚悟で。
    つらすぎないか。彼女にとってそれが幸せなのだろうけれど。

  • 鬼の平蔵に対する盗賊達の復讐の連鎖がこの物語の底流を流れているのだが、読者を飽きさせることのない筆致が凄いと思う。「密通」で妻方の伯父に対して仕掛けた場面での最後の一言がふるっている。「あばたの新助」の末期は哀れであった。「夜鷹殺し」の下手人である旗本を斬って捨てる平蔵。本巻解説にもあるとおり、人の世は白と黒に二分できるものではない。最下層の夜鷹であっても人の命に変りはないと思う平蔵。そして、恐らく平蔵が斬らねば、この犯罪は止まらなかったし、最悪御咎めなしとなったかも知れない。そんな含みのある結末であった。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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