新装版 鬼平犯科帳 (13) (文春文庫) (文春文庫 い 4-64)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167142650

作品紹介・あらすじ

盗賊にも守るべきモラルがある。盗まれて難儀をする貧しいものに手を出さぬこと、人を殺傷せぬこと、盗みに入った先で女を手ごめにせぬこと。この三カ条を守らない盗賊を畜生盗(づと)めという。さて、本巻の「一本眉」では掟を守りぬく真の盗賊が、畜生盗めの一味を成敗する痛快譚。その他に、平蔵が盗賊のお頭に変身? お忍びの湯治先で一行が出会った事件「熱海みやげの宝物」と「殺しの波紋」「夜針の音松」「墨つぼの孫八」「春雪」の計六篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 鬼平犯科帳 (13)

    鬼平さんが身分や名を隠すときに使う、「木村忠右衛門」という名乗りは、恐らく“兎忠”こと木村忠吾さんをもじってますよね。本巻でも「熱海みやげの宝物」「墨つぼの孫八」で“木村忠右衛門”を名乗られていました。鬼平さんは、というか池波先生は“忠吾いじり”がお好きなようです。
    「殺しの波紋」では坂道を転がるように破滅へ進んでしまう、富田与力が哀しすぎました。鬼平さんは「(富田与力が転落した)そもそもの原因を知ることができぬやも・・」と仰せでしたが、思わず“忠吾さんでしょ”と言いたくなった私でした。(忠吾さんが悪いとまでは言わないけど、事の起こりの原因ではあるかと・・。)
    「一本眉」は、盗賊のモラルを守る派の本格盗賊の一味が“畜生盗め”をする一味を成敗する話。ここでも忠吾さんは、全然活躍していないのだけど、いい味だしていました。

  • 《一本眉》名作だなーと思う。ちょっと地味なとこなんかが……。

    似たような話はある。でも、面白いからすごい。

  • 守るべき三ヶ条を守らない盗賊を畜生盗めという。本巻の『一本眉』では掟を守り抜く真の盗賊が畜生盗めの一味を成敗する痛快譚。他に5編収録。
    新型コロナウイルスで自粛ムードの今日この頃、在宅ストレスの解消のひとつが『鬼平犯科帳』。鬼平の推理や采配に感心し、美味しそうな料理に脳内舌鼓を打つ。そして、存在感たっぷりの真の盗賊たち。その一人が『一本眉』である。

  • 熱海みやげの宝物
    殺しの波紋
    夜針の音松
    墨つぼの孫八
    春雪
    一本眉

    「熱海みやげの宝物」湯治で訪れた熱海にて嘗役・馬蕗の利平治に出会う。
    「一本眉」木村忠吾がなじみの店、治郎八にて一本眉の客に気に入られる。一本眉は清洲の甚五郎。目をつけた押し込み先に直前で別の盗賊が畜生ばたらきに入られる。
    盗賊が盗賊を懲らしめる一編。今回は鬼平も出る幕なしだった。

  • お隣に盗賊がいる世界なんだなあ。
    こういう物語でそれを言っちゃおしまいかもしれないけど、縁が深すぎるね。
    辰蔵さんが人を叱るときが来ようとは。

  • この巻では、急に大人びた辰蔵に少し戸惑いながらも頼もしくさえ思えた。「墨つぼの孫八」の結末は呆気なかったな。「一本眉」はいろいろと考えさせられる。本格派盗賊が畜生盗めの盗賊を<成敗>する様は、何ともすっきりしないものがある。そして、最後に盗めの当てを仄めかす清州の甚五郎の不敵な台詞。この後、何かがありそうな含みが……同心・忠吾は何だったのか? ただ一本眉の御仁に酒肴を奢ってもらい悦に入っていただけなのか、それとも利用されていたのか? これまでで自分にとって最も謎の多い話だった。

  • 鬼平犯科帳 13巻目。

    「熱海みやげの宝物」は、12巻目で、体調を崩した平蔵さんが、湯治で滞在をしていた熱海の話。
    体重も増えて、盗賊仲間に追われている馬蕗の利平治を江戸に連れて行く平蔵さん。
    平蔵さんが、元気になってよかった。。。と、一安心。
    「殺しの波紋」は、一つの嘘を隠すために、次の嘘を重ね、その嘘を隠すために、新たな嘘を重ねなければならない。というのを思い出した。
    実際は、嘘ではなく、犯罪なのだけど。
    「墨つぼの孫八」は、最期が残念でならない。。盗賊ながら、とても良いキャラの人だったので、悲しい。
    「一本眉」は、兎忠がよいキャラなのが、すごくよくわかる。盗賊からみても、癒しキャラなんだろうなー。

  • 『殺しの波紋』は、一つの罪を隠すため次々と罪を重ねていく話。止めようとしても止まらない。平蔵の言葉「人というものは、はじめから悪の道を知っているわけではない。何かの拍子で、小さな悪事を起してしまい、それを世間の目にふれさせぬため、また、つぎの悪事をする。そして、これを隠そうとして、さらに大きな悪の道へ踏み込んで行くものなのだ。」 はその通りで、誰しも共感出来るのではないでしょうか。
    『一本眉』は忠吾らしいというか、そののんびりさが盗賊にとっても癒し系なのかもしれません(笑)

  • 今回収録されている話は、
    「熱海みやげの宝物」、「殺しの波紋」、「夜針の音松」、「墨つぼの孫八」、「春雪」、「一本眉」の六篇。
    「殺しの波紋」では、与力 富田達五郎が登場する。またしても剣の達人が登場するが…何とも切ない。
    犯罪者を相手にする仕事をしているからか、何かの拍子に暗黒面に陥ってしまうことがあるのだろう。そのままズブズブと沈み込んでしまう恐ろしさを感じた。
    今回、最も楽しめた話は「一本眉」である。中村吉右衛門の『鬼平犯科帳』では、「墨つぼの孫八」と一緒にして脚本が練られている。どちらかというと、「墨つぼの孫八」に力点が置かれているように思われる。
    どうしても話の都合上、盗賊がたくさん登場するわけだから、いつかはこういう話も登場するだろうと思っていた。本来の盗めに誇りを持った盗人たちによる制裁。スッキリである。「清洲の甚五郎」、また登場してくれるだろうか。

  • 目が寂しくて、疲れた時に、何気なく読むには
    池波正太郎がいいなぁ。
    だけど、この男、物語を紡ぐには、
    優れた能力を持っているネェ。
    私は、図鑑人間でしかない。

    熱海みやげの宝物
    熱海に湯治する平蔵。連れの彦十が、利平治にあう。
    利平治は、仲間割れした盗賊に狙われていた。
    平蔵は、利平治を見込んで、助けることに。

    殺しの波紋
    与力 富田達五郎は、剣術の名手で、活躍めざしい。
    ところが、挙動が少しおかしいと平蔵が勘ばたらきする。
    達五郎は、マイナスのスパイラルに。

    夜針の音松
    松永弥四郎は、変な癖があった。
    それは、おきねという女に教えられたことだが、
    妻の節に、嫌われてしまった。
    おきねは、音松とつるんでいた。

    墨つぼの孫八
    元大工の孫八は、押し込みをしようとする。
    おまさと会い、五郎蔵と勤めをしようとするが、
    平蔵も加わった。変な強盗団である。

    春雪一本眉
    清洲の甚五郎は、眉毛が一本だった。
    盗みをしようとおきぬを引き込みにしておいたが、
    べつの盗賊に、盗まれてしまい。人は皆殺しに、
    おきぬだけが、命からがら逃げたのだった。
    それで、一本眉は。思わぬことを。

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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