新装版 雲ながれゆく (文春文庫) (文春文庫 い 4-84)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167142858

感想・レビュー・書評

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  • 今手にしている文春文庫は、1986年第1刷、2002年第31刷。
    けっこう読み継がれていたみたいです。
    今は、わかりませんが。

    22頁によると、この作品の時代背景は、1783年(天明3年)位。

  • 若くして夫を亡くし子もないため、老舗の銘菓店を夫の弟夫婦にゆずり、彼らを指導し盛り立てようよとする未亡人お歌。しかしこの弟が箸にも棒にもかからないダメな奴。お歌の実家は名立たる料理屋で、後を継いでいる兄は、お歌に戻ってきて店を切り盛りしてほしいと切に願っている。
    そんな中、お歌は雨宿りをしていた小屋に居合わせた源吾という年齢不詳で得体のしれない男にわけのわからぬ間に犯されて陶酔してしまう。怒りと同時にだんだんと源吾にひかれていくお歌。実は、この源吾は武芸、体術の達人で、お歌が巻き込まれる苦難を助けることに。ハラハラする展開に次々とページを繰ってしまう。
    本作を読みながら、「旅路」という作品を思い出した。「旅路」ではかたき討ちの旅に出る未亡人の危機を救う謎のスーパー老人が出てくるのだが、本作の源吾と被る。池波正太郎が己が願望を彼らに投影しているのではと思ってしまう。

  • 完本 池波正太郎大成23にて読了

    若くして後家になってしまった、笹屋の女将、お歌。
    主への義理を果たすため、番頭や職人たちと店を盛り立てていこうと店に残って頑張る彼女に、義弟夫婦との諍いや実家からの干渉、敵討ちを成そうとしている若者の世話など次々と問題が降りかかる。
    そんな彼女と雷雨の日にであった源吾。物凄い剣客らしいけれど、謎ばかりの奇妙な男。

    女は、環境で、恋で、母となることでどんどん変わっていく。
    男は変わらない。変われないのかもしれない。

  • 池波作品は『脚本』の様なドラマ仕立てで小気味良く読みやすい。面白くて次々と読み継いでいくと、毎日の生活を送っている様な感覚になる。どうなるか判らない不安や心配、恐怖、喜び、悲しみが湧いてくる。そして何かを伝えられた様な読後感が残る。

    池波正太郎さんは『寿命が有る:人の命』よりも大切な事として『何世代にも渡る人の営みを次世代へ繋ぐ事』と言われていたと読んだ事がある。

    そうか、僕達が生きている理由は、日々の生活を送りながら、後進に繋ぎ、かつ社会をより良くする努力をする事なのか。
    と、考えながら本作品の主人公『お歌』やその周りの人達の風景をイメージし、読了しました。

  •  池波正太郎さんの作品には女性を主人公にした名作もかなりありますね。長編小説「雲ながれゆく」(2006.2、文庫)もその一つ。笹屋の若後家お歌が土砂降りの日、雨宿りした小屋で剣の達人馬杉健吾に手籠めにされたシーンから始まる物語。二人のそれからの人生、読み応えがあります。さて、私はと言いますと、1986.1刊行の単行本で既に読了していましたw。

  • なでもかんでも大団円が名作とは限らない。
    余韻から読者にあれこれ想像させるのも、素晴らしい結末だと思う。
    こんな終わり方も好きだ。

  • 冒頭を読んだときの感想は、「ええ!? これからどう展開していくの?」という不安感。

    それは、私が女だからなのでしょうか……。

    女の目線からいえば、到底に受け入れられる状況ではないものの、そこは時代小説、そこは池波正太郎氏。
    その後の話の展開にも引き込まれて、一気に読み進めたくなる作品でした。

    筆さばきに脱帽するとともに、お歌の人柄も本当に良いし、これが江戸時代の女の姿だったのだろうなあ、と感心してしまいました。

  • 強く強く引き込まれて、まさに一気読み!!

    なにより主人公「お歌」が、とても魅力的。
    心身ともに強くて、機転がきいて、かしこくて、
    何より情にあつく、人のためにくるくると
    よく働く。
    そんな逞しいお歌さんが、心の中であらがいながら
    眼光に不思議な力をもつ、強い男、馬杉源吾に
    惹かれていく様子は、娘のようで、艶っぽくて。
    ハラハラしたり、胸ときめかせたりしながら
    読むのを止めることができなかった。

    人のために、そして、やってくる状況に臆せず
    心尽くして立ち向かえば、全てうまくゆく、
    というわけでもないけれど、
    心が春のようなあたたかで、嬉しい時がくる。

    そんな希望が読後に湧いてくるすばらしい小説だった。

  • ”男”を描くことが多い池波氏だが、どっこい女を書いてもイイ女を表現し、男と女の生き様を素晴らしく演出する。この作品の主人公、お歌は夫に先立たれ菓子舗を切り回しているが夏の或る日雨宿りの小屋で正体不明の男に・・・・。それからの展開が面白い。

  • 2013/04/28完讀

    (6.5/10)

    お歌是菓子屋笹屋的女主人,丈夫過世且膝下無子,下一代主人、先夫之弟福太郎懷疑お歌要把店據為己有,お歌憤而離開笹屋回到娘家料亭大村。但笹屋的生意漸漸走下坡,在奉公人強力的要求下,お歌只好答應回去在幫忙一年,但其兄平四郎對她相當不諒解,甚至和他斷絕關係。

    お歌不但必須掌管店內,還受到其他親戚誤會她想奪取這家店;同時她又受武士関口之託,藏匿欲為父報仇的三沢又太郎,焦頭爛額。某天,福太郎居然找流氓謀取お歌性命,而武士馬杉源吾正好救了她一命。お歌因而對他有了好感,也開啟了一段小小的戀情,後來お歌的無私的心終於讓親戚們和陷入險境身受重傷的福太郎理解,而由於お歌告訴馬杉報仇的事,馬杉也協助三沢最終為父報仇,得以回歸故里。馬杉就此離開,但お歌生下了他的孩子。福太郎找到了適合他的職業也就是印判師,再度將店託付給お歌。

    久違再讀池波順暢舒適的文體,十分快意。池波常常描隨著環境與命運的變化,堅強地活下去的女性,お歌也是這樣一個角色。這本小說好像是側寫女性的觀察手記,當女人會怎麼樣說謊?當女人遇到環境變化會怎麼樣?當女人戀愛會怎麼樣…這個側寫觀察實在非常有趣。

    --

    「男らしさと女らしさとか言う前にね、男も女も共通して大事なことがあるんだよ。『人の身になって考える』ということがね。。。。これがなかなか、口で言うのはやさしいが、できないことなんだけどね。」

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著者プロフィール

大正十二(一九二三)年一月二十五日、東京市浅草区聖天町生まれ。昭和十(一九三五)年、下谷区西町小学校卒業、株式仲買店勤務。昭和十四年より三年ほど証券取引所にあった剣道場へ通い、初段を得る。旋盤機械工を経て昭和十九年、横須賀海兵団入団。敗戦の翌年、東京都職員として下谷区役所の衛生課に勤務。昭和二十三年、長谷川伸門下に入る。昭和二十五年、片岡豊子と結婚。昭和二十六年、戯曲「鈍牛」を発表し上演。新国劇の脚本と演出を担当する一方、小説も執筆。昭和三十年、転勤先の目黒税務事務所で都庁職員を辞し、作家業に専念。昭和三十五年、『錯乱』で直木三十五賞受賞。『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』の三大シリーズや『真田太平記』等、数々の小説で人気を博す一方、食や映画、旅に関する著作物も多く上梓した。受賞歴はほか吉川英治文学賞、大谷竹次郎賞、菊池寛賞等。平成二(一九九〇)年五月三日、入院していた東京都千代田区神田和泉町の三井記念病院で死去。小社では同じく単行本未収録のエッセイ集『一升桝の度量』(二〇一一)と初期戯曲集『銀座並木通り』(二〇一三)を刊行している。

「2022年 『人生の滋味 池波正太郎かく語りき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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