新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)

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著者 : 山崎朋子
  • 文藝春秋 (2008年1月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167147082

新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • からゆきさんという生き方があって、その記録・調査研究。
    すでに100年位前、大正・昭和初期頃までか。生きるためには自分の身体を売る必要があった女性達がいた。という。裕福になったであろう、現代の日本からは想像することは難しい。
    からゆきさんの生活を、3週間共に生活して、取材してまとめたものである。本書全体から感じられるのは、おサキさんのたくましさと、人柄の良さ。生活は貧困だが、人間としての底辺にはなっていない。
    研究論文として読めば、作者はなんと自分勝手なのだろうと感じてしまう。それが記録を作るためには必要なのだろう。調査は、戸籍等も調べているようで、今の情報保護とは随分違う。女性の視点から、生活者の立場からは、良い著作と思われる。もう証言を得ることは出来ないし、貴重である。
    日本を考える良い機会となった。

  • 古典とも言うべき女性史の作品。
    ともみさんから紹介を受けて読んだ。
    そして本当に読んでよかったと思っている。

    本作品に描かれていることは、私たちがほぼ知らないからゆきさんの人生である。
    からゆきさんとは、戦中に外国へ赴き、売春をしていた女性のこと。
    彼女たちは主に貧困のため、外国で性を売ることとなった。

    この作品はおサキさんと言う一人のからゆきさんを中心としている。おサキさんは、10才でボルネオに渡り、13歳から売春をしてきた。今は地元の天草で暮らすが、村人も寄り付かないような極貧の中で、自分に会いに来ない息子から来る生活保護以下のお金で生活をしている。しかし彼女は、人間として大きく広い心を持っており、さりげなく著者の研究の手伝いをしてくれている…

    この作品の意義は大きく分けて2つある。
    1:著者は典型的なフィールドワークの手法を用いて研究を行っており、それ(多分)余すとこなく正確に記述している。盗みを働く場面もあり、道徳的な議論は避けられないが、学術的な功績は多大であり、今でも評価されるべきものであろう。
    さらに、この作品を読めば、著者が研究を進める上でどのような考えを持ち、フィールドワークを行ったか追体験できる。今後フィールドワークする人の参考になるだろう。

    2:著者の指摘通り、性的に搾取されていた側の女性達は、男性研究者に心を開くことは簡単ではないだろう。ゆえに、女性の研究者が研究を行うこと自体に大きな意味がある。
    おサキさんにこれほど近づくことができたのは著者が女性であったことがおおきい。
    そして、その結果として得られた情報はかなり詳細で弱者の論理構造を知り、搾取された人が搾取されるに至った経緯がわかる。
    さらに、戦争により生まれる男女の差違の大きさと弊害を知ることができる。

    私たちは男女平等参画の世に生きているから、なかなか女性性、男性性というジェンダーを感じることがない。
    しかし、本来的に女性と男性のジェンダーには大きな差異がある。
    現代の強引なfeminismの運動は、初めから差異がないかのような論調で、女性の権利を強調している気がする。(私はほぼジェンダー論を知らないので、間違っていたら申し訳ない。)
    しかし、本当に女性の権利を守るなら、差異を認めた上でどのようにすべきかを議論して行く必要があると思う。

    この本自体も、様々な議論があり批判も色々あるらしいが、そのような議論が巻き起こることこそ、この作品意義が大きいことの証明である。

    とても有意義な作品なのに、ブクログ上でかなり登録者が少ないのは、今の社会の薄さを表しているようで、なんとも言えない気持ちになる。
    この本は古いが、普遍的な問を私たちに投げ掛けている。

  • 昔兵庫県三田(さんだ)市に、「サンダカン」といふパチンコ屋があつたと思ふのですが、記憶違ひかも知れない。何だか不謹慎だなと思つた記憶があります。
    なぜさう思つたのか。サンダカンはマレーシアの一都市なのですが、どうしてもそのイメエヂが強すぎる「からゆきさん」とセットで語られる事が多いからでせう。「アウシュビッツ」とか「チェルノブイリ」とか、負のイメエヂが定着してしまつた都市は不幸であります。

    山崎朋子さんは、女性史研究家として、エリート女性ではなく底辺女性の視点から「からゆきさん」の実態を探らんとします。「からゆきさん」の出身地は多くが九州の島原や天草だと言ひます。そこで山崎さんは天草を訪れ、出来れば元からゆきさんを密着取材したいと考へました。
    しかし天草に到着して、すぐに壁にぶつかります。何しろ「からゆきさん」は、地元にとつては名誉なことではなく、隠蔽したい黒歴史なのであります。山崎さんが「からゆきさん」といふ言葉を発しただけで島民は警戒感を持ち、口を噤むのでした。

    途方に暮れる山崎さんでしたが、偶々食事をしに入つた店で「おサキさん」なる老婆と出会ひ、話をする内に「彼女は元からゆきさんに相違ない」といふ確信を得ます。目的を隠したまま、おサキさんの家を訪問することに成功しますが、その家は凄まじい状態でした。
    「荒壁はところどころ崩れ落ち、襖と障子はあらかた骨ばかりになっている」「座敷の畳はほぼ完全に腐りきっているとみえ、すすめられるままにわたしが上がると、たんぼの土を踏んだときのように足が沈み、はだしの足裏にはじっとりとした湿り気が残るばかりか、観念して座ったわたしの膝へ、しばらくすると何匹もの百足が這い上がって来るので、気味悪さのあまり瞳を凝らしてよく見ると、何とその畳が、百足どもの恰好の巣になっていたのである」

    しかし山崎さんは取材の為に、おサキさんの家に住み込むのであります。おサキさんは目的を告げられぬのに、不審の念を表に出さず、山崎さんを全面的に受け入れるのでした。そして次第に、ぽつりぽつりと体験を語り始めます......
    おサキさんの家での居候生活は三週間に及び、その間におフミさんやおシモさん、女衒の太郎造どん、女傑の木下クニに関する聞き取りにも成功します。著者としては完全に満足のいく結果ではなかつたかも知れませんが。

    そして東京へ帰る前日、山崎さんはおサキさんに別れを告げるのですが......この時のおサキさんの態度が素晴らしい! 極貧の家に生れ、僅か九歳で外国へ売られていつたおサキさんはまともな教育を受けてゐる訳もなく、完全な文盲なのですが、どんな偉人にも負けぬ程の「人格者」でした。ここではちよつと泣いてしまつたよ。

    本書には、表題作『サンダカン八番娼館』の続篇といふか姉妹篇の『サンダカンの墓』も収録されてゐます。熊井啓監督による映画「サンダカン八番娼館 望郷」では、上記二冊を原作としてゐますので、まことに親切な編集と申せませう。田中絹代さんも高橋洋子さんも栗原小巻さんも皆良かつた。

    最後に「東南アジアと日本」と題する一文があります。御維新以来、富国強兵を目指した日本が、東南アジアに於いてしてきた、いはば暗黒の歴史について触れられてゐます。最近の風潮では、拒否反応を示す人が多いだらうなあと考へます。日本が外国でしてきたとされるさまざまな事は、全て捏造であるなどと、相当に社会的立場の高い人たちまでが述べたりしてゐますからな。異を唱へる人は「反日」と呼ばれ排斥される。本書もきつと現代の焚書坑儒の対象になりさうで、いささか不安な日々なのです。
    あ、また余計な事を書いてしまつた。

    ぢやあまた、今夜はこれにてご無礼します。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-726.html

  • 熊井啓監督の映画作品でも知られる『サンダカン八番娼館(山本朋子)』を読んだ。
    多くの方は知っているのかもしれないが、ぼくは中国や東南アジアに連れて行かれた日本人娼婦(からゆきさん)について、殆ど知らなかったので新鮮な驚きを感じた。

  • プロローグの文は癖があって読みづらさがあったが、本編は興味深い。旅行記のようで。

  • 良かった、読みたかった本の一つ

  • 海外に身を売られた「からゆきさん」であった老婆から聞いた話をまとめたもの。
    もちろん取材であることは隠して・・・よくまとめたものだ。

  •  おサキさんのまっとうさが尊い。
     ……しかし、なんつーか、あの時代、からゆきさんとして、外国で春をひさいで日本に送金したお金に課税され、国が潤っていたというのだから……。

  • [ 内容 ]
    “からゆきさん”―戦前の日本で十歳に満たない少女たちが海外に身を売られ、南方の娼館で働かされていた。
    そうした女性たちの過酷な生活と無惨な境涯を、天草で出会ったおサキさんから詳細に聞き取り綴った、底辺女性史の名著新装版。
    東南アジアに散った女性たちの足跡をたどるルポルタージュ『サンダカンの墓』も収録。

    [ 目次 ]
    サンダカン八番娼館(底辺女性史へのプロローグ;偶然の邂逅―天草への最初の旅;二度めの旅へのためらい;おサキさんとの生活 ほか)
    サンダカンの墓(サンダカンの墓;シンガポール花街の跡;平田ユキ女のこと;小川芙美の行方 ほか)

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

  • 図書館 借

    おサキさんの人柄温かさが、すごく伝わってくる。
    私は著者の行動が好きになれないケド、ムカデの巣で眠る情熱や母と子の関係になれたのは凄いし尊いことだと思う。
    人の縁の力もはかりしれないものがあるな、とも。

    100年以上前の話だけど、そんなに遠くもない現実。
    強く生きてきた人に同情するのは失礼な気もするけど、悲惨な死を遂げた人がたくさんいる環境は苛酷で、…表紙の少女達の写真が悲しい。

    原因は、日本人が悪いのか、男が酷いのか、金がない、弱い立場のせいなのかな?

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新装版 サンダカン八番娼館 (文春文庫)の作品紹介

"からゆきさん"-戦前の日本で十歳に満たない少女たちが海外に身を売られ、南方の娼館で働かされていた。そうした女性たちの過酷な生活と無惨な境涯を、天草で出会ったおサキさんから詳細に聞き取り綴った、底辺女性史の名著新装版。東南アジアに散った女性たちの足跡をたどるルポルタージュ『サンダカンの墓』も収録。

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