赤い月(上) (文春文庫 な 25-4)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167152086

感想・レビュー・書評

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  • 圧倒的なエネルギーを持った小説です。

  • 1945年8月の満州を舞台にソ連の侵攻により日本人たちが悲劇に巻き込まれる。真っ先に逃げ出した関東軍とその関係者への著者の記述は容赦がありません。そして『大地の子』を思い出させる感動の大叙事詩でした。著者の実母がモデルともいう森田波子は美咲、公平の2人の子供を守るために鬼になると決意しハルピンへの列車の旅が続く。波子が森田勇太郎と結婚に至った若い日の小樽の情景も魅力的ですし、満州での日本の上層階級の生活もエキゾティックで日本離れした感じがありました。『赤い月』という言葉は聖書の黙示録から取ったとのこと。満州の赤い夕陽も印象的ですが、終末的な描写に相応しいタイトルです。

  • 知人からの貸し出し。
    満州に渡った主人公は、夫と酒屋を立ち上げ、繁栄と凋落を味わう。どちらも戦争によるものだ。
    主人公の波子が必死に子どもたちを守り抜く姿は共感したい。が、男をたぶらかしてばかりで、家族が気の毒である。人間は欲を持ち、矛盾もするものだが、それにしても自分勝手すぎて不快になってくる。
    スパイのエレナ、保安官の氷室、大杉などの周りのキャラクターは良い。個性と芯があり、それぞれ好感が持てる。
    当時の満州を知る素材としてはいいかも。

  • 目次:エレナ、ハルビンへ、小樽、大地

  • 壮絶な人生にぐんぐん引き込まれます。

    満州時代の日本の横暴、そして時代の流れ。

    現代にあまりみることのない、時代の変遷にわくわくします。

  • 冒頭の、

    昭和二十年八月九日午後二時、牡丹江市警察署に一通の告発書がとどいた。

    という一文に占める漢字の割合にたじろぎもしたけれど。「10冊のつまらない本よりは1冊の赤い月だよ」という言葉は嘘じゃなかったっす。面白い。

    溥儀とか熱河とか国体護持とか五族協和とか、高校日本史選択者としては やっべーちくしょうなんだっけなこれ と非常にやきもきしながら読みましたが。やっぱり高校レベルの勉強は確実に生きてくるんだなー色んなカタチで。

    激動の満州に移住した人の話。ってか下巻読んでないから適当なことしか書けないけれども。なんつうか「もうキレイごとだけじゃ生きていけない年になりました笑」って誰かが言ってたのを思い出した。山崎まさよしだっけな?あと「清濁併せ呑む」って言葉も浮かんだ。この言葉を嫌いな人も結構いるみたいだけれど、良い面も悪い面も受け入れるっつうことでとてもポジティヴな意味にとれる。「真に優れた政治家は清濁併せ呑む人材」っつったのは誰だっけな。うちの親父かそのへんか。

    とにかくこういう希望も絶望も美しさも汚さも孕んだ小説は大好き。甘味も苦味もどちらかが欠けたら成立しないもんね。

  • 作詞家のなかにし礼さんが、細木数子さんのテレビに出演していました。

    お話を聞いていて、とても興味深く感じたので早速探しました。

    作詞家であるから、3分間の曲の中にたくさんのドラマを作り上げるだけあって、読んでいて飽きの来ないストーリー展開です。

    とても読みやすい文章だなぁと感じました。


    戦争についても、深く考えさせられるお話です。
    そして、なかにし礼さんの半自叙伝であると言うことも、衝撃的でした。


    とにかく、読み始めたらやめられなくて2日で読み終えました。

  • 夢と野望を胸に渡った満洲の地。広大な原野に立ちすくみ、馬賊の襲撃に怯えつつも、森田勇太郎は着実に地盤を固め、森田酒造を満洲一の造り酒屋にまで成長させていく。だが、「同じ着物は二度着ない」とまで言われた栄華も長くはなかった。夫・勇太郎の留守中、ソ連軍の侵攻と満人の暴動に遭い森田酒造は崩壊。妻・波子は二人の子供を抱え、明日の命すら知れぬ逃亡生活を余儀なくされる。夫との再会を信じ、ひたすら故国を目指す波子。しかしこれは、波子を呑み込む過酷な運命の始まりに過ぎなかった。母、満洲、極限状態。直木賞受賞第一作。

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著者プロフィール

1938年旧満州牡丹江市生まれ。立教大学文学部卒業。2000年『長崎ぶらぶら節』で直木賞を受賞。著書に『兄弟』『赤い月』『天皇と日本国憲法』『がんに生きる』『夜の歌』『わが人生に悔いなし』等。

「2020年 『作詩の技法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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